悲しい事故がありました。
岐阜大病院(岐阜市)は11日、
心臓手術を受けた70代の男性患者が
病室で致死性の不整脈を起こした際、
容体悪化を知らせるアラームが
鳴っていたのに対応が遅れ、
男性が死亡する事案があった
と発表した。
病院によると、男性は昨年6月に
急性心筋梗塞で入院、手術を受けた。
同10月に検査したところ
同じ疾患が見つかったため
手術を受け、一般病棟に入院した。
男性が病室に到着した時には
会話ができる状態だったものの、
間もなく容体が悪化。
午後5時台、
同じ階のスタッフステーションで
心電図モニターのアラームが鳴ったが
誰も処置しなかった。
約24分後、
男性が心停止しているのを
看護師が見つけ、
蘇生を施したが翌日死亡した。
当時は夜勤時間帯で、
夜勤の看護師4人は別の病室で作業し、
アラームに気付かなかった。
ステーションには
日勤の看護師約10人がいたが、
誰かが処置していると思い込む
などして対応しなかったという。
病院は4月に
医療事故調査委員会を設置。
6月に出た報告書では、
早期に救命処置をとっていれば
救命率が上昇した可能性はあった
との見解を示した。
吉田和弘院長は
「診療体制を改善し、
医療の質向上に取り組む」と述べ、
謝罪した。
再発防止策として、
ステーション外でも
アラームを把握できる
携帯端末を導入したという。
私は、医療介護業界向けの
コミュニケーション研修講師
をしています。
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コミュニケーションを学んで
人間関係を改善し
安心安全ポジティブな職場環境をつくる。
そのうえで
正しく意見を出し合い
正しく業務改善を行うことで、
離職の三大理由
《キツイ・不安・人間関係が悪い》
を解決する。
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これが、私の行っている
のびやか職場創生プログラムです。
私は、元・臨床検査技師です。
私が医療業界を
ドロップアウトしたのも
ある医療ミスがきっかけでした。
検査に至るまでの過程で
血液の試験管が
入れ替わってしまい
二人の血液型を取り違えて
報告してしまった。
幸い、大事には至らず
医療面での影響はありませんでした。
でも、その起こしたミスと
その責任の大きさから、
怖くて検査業務が
できなくなってしまったのです。
当時の私は、事故の原因は
『私の確認ミスです』
としか言えませんでした。
その後、子育ての葛藤から
コミュニケーションを学ぶようになり
「あの事故はコミュニケーションで
防げるミスだった」
と気づいたのは、
10年以上経ったあとでした。
今回の岐阜大病院の医療事故の
最大の原因は、ここです。
夜勤の看護師4人は別の病室で作業し、
アラームに気付かなかった。
ステーションには日勤の看護師
約10人がいたが、
誰かが処置していると思い込む
などして対応しなかった
10人もいたのに、
だれも動けなかった。
アラームが鳴っていることに
気が付かなかったわけではない。
動かなかったわけでもない。
動けなかった。
誰かが処置をしているのならば
アラームは止まっているでしょう。
アラームに気づく
アラームを止める
処置へ向かう
通常、この手順が踏まれます。
「アラームが止められていない
=処置がされていない」
ということに気づく
余裕がなかったのです。
そして、
アラームが聞こえていながらも
それを自分のこととして捉える
余裕がなかったのです。
自分で
処置に向かわなくてもいい。
せめて
声をかけられるくらいの
気持ちの余裕があれば
確実に防げた事故でした。
それに対して、
病院が行った対策は
再発防止策として、
ステーション外でもアラームを
把握できる携帯端末を導入した
違う。そこじゃない。
病院側は
「ステーション外にいた
夜勤帯の看護師さんたちに
アラームが聞こえなかったこと」
が原因と考えたのでしょう。
このミスの根本的な原因に
だれか気が付いたのか。
気が付いたとして
その声をあげられたのか。
辞めていく人材が多い職場、
ミスが多い職場では、
初めに《業務内容の改善》から
着手しがちです。
しかし、
正しい業務改善が行われるには
“安心・安全・ポジティブな場”
が必要なのです。
自由に意見が言いづらい、
また意見が否定されるような
不安で危険でネガティブな場では、
正しい改善案はでてきません。
また、改善のために作った
新たなルールが
守られるとは限りません。
まずは、
安心安全ポジティブな職場
を作ることが必要です。
そのためには、
正しいコミュニケーションを学ぶ
必要があります。
コミュニケーションを学び
安心安全ポジティブな職場をつくり
チーム全体で業務改善をする。
この手順が必要です。
その先に、
従業員満足度が上がり
のびのびと強みを活かして
仕事をすることで
《従業員幸福度》が上がり
それが患者さまや利用者さまの
満足につながるのです。
私は、
ミスの不安におびえる
医療従事者を減らしたい。
医療の現場は
もっとあたたかくあるべきなのです。