――――プロローグ――――
昼と深夜――、首都高は全く別の顔を見せる。
昼間は一般人のクルマを忙しくアチコチへと運ぶ首都高。
しかし、一般車が居なくなる深夜ともなれば、首都高はサーキットと化す。
サーキットと化した深夜の首都高を走り続け、クルマに情熱を掛ける首都高の走り屋たち。
常時、200km/h over。とんでもないハイスピードで流れていく背景は、周りからは狂っているとしか見えないだろう。
だが、この場所ではこう言う行為でしか‘自分’を表せない。
そして、今夜も首都高では数多のエキゾーストノートが飛び交い始める。
サーキットと化した深夜の首都高は、新たなる伝説が生まれる舞台となる―――。
※本作品は、実在する場所をモデルとしていますが、
本作品の架空空間であり、完全なるフィクションです。
また、人物・地名など共に、ほぼ架空の物で、実在のものとは、一切関係はありません。
実車では、本作品と同様の操作を真似しないで下さい。
公道では法廷速度や交通ルールを守り、安全運転を行って下さい。
SPEED SHOP
「ふぅ、コレで良しっと……。」
工具を持っていた手を止め、ケンは34Rのボンネットを閉める。
彼は、閉店後のショップ内にある専用のガレージで、愛車を弄っていた。
「12時半か……。」
デスクに置いてあるデジタル時計を見て、ケンは呟く。
「さってと…。オレの34Rは終わったから……、次はデモ車の34Rの調整か。」
大きな欠伸をして、ケンはパイプ椅子に座り、デスクに置いてあるPCを起動させる。
「うーん…、ソレらしい情報は無いな……。」
ケンはSPEED SHOPのHP内にある掲示板を見ながら呟く。
ココ何日か、彼はとあるクルマの情報を追っている。
「いくらナラシとは言え、ウチのデモ車がインプ相手に湾岸で置いてかれたってのも、イヤな話だしナ。」
先日、SPEED SHOPのデモカーである赤色のBNR34 GT-Rが、湾岸で青いインプレッサに置いて行かれてしまった。
その時に乗っていたのは社員で、クルマの方もナラシ中だったが、自分のショップのGT-Rがインプ相手に遅れると言うのも、ケンにとっては嫌な話なのである。
それに、SPEED SHOPの34Rがインプに撃墜されたと、首都高ランナーの間ではウワサに成り掛けている。
「ハンパなウワサは、立つ前に潰して置かないと。」
ケンはPCの電源を落とし、愛車の34Rに乗り込む。
セルを回し、RB26DETT改RB28DETT E/gに火を点す。
ゆっくりと34Rを発車させてクルマをガレージから出して、ガレージ内の電気を切ると同時に電動シャッターを閉める。
再び34Rに乗り込んだケンは、ショップの横にある自宅へと向かった。
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――AM0:45 首都高 C1内回り
ヴォアァァァァ――ッ!ッパン!ヴオォアァァアアァァ――ッ!!
「ったく……、今日は俺1人かヨ…。」
C1内回りを流している白いSW20 GT-Sの車内で、カズが小さく呟いた。
しかし流していると言う物の、他の走り屋のクルマをドンドン抜き去っている。
周りから見れば、殆ど全開走行に近いスピードである。
「けど、C1でツルんでくれるヤツが少なくなって来たなァ……。速くなり過ぎンのも困ったモンだな…、ハハハ。」
軽口を叩きながら走っていると、カズは‘ソレ’に気づいた。
…、――ッ、右の合流車線から速いのが来るッ。車種は――ッ!?
羽田線ルートから、C1に合流してくるクルマ。
カズのSW20をターゲットにしたと言わんばかりの速度で、SW20の真後ろに張り付く。
「青いGDB‐中期型インプレッサ…?まさか…、ケンさんが言ってたインプか!?」
カズは声を上げる。その瞬間、インプがSW20に向かってパッシングを行う。
「OKー、ガッカリさせる様な走りはスンなよッ!」
カズはシフトを一つ落とし、SW20はフル加速状態に入った。
「あのSW20…、SPEED SHOPのクルマかな…。」
インプレッサのドライバー、上田 友也(うえだ ともや)が呟く。
SW20のサイドのウィンドウに張ってある、SPEED SHOPのURLステッカーと、
Rバンに張っているSPEED SHOPのステッカーを見て、友也はSW20を追う事にした。
そして、C1合流と共にSW20に向かってパッシング。
SW20がバトルの了承をし、フル加速する。
「バトルスタート!」
SW20 GT-S(今村 和也)
~V,S~
GDB‐中期型インプレッサ(上田 友也)
バトルBGM「Feel the Passion(湾岸ミッドナイト MAXIMUMTUNE2)」
バトルコース「首都高 C1内回り」
シュパァ―――ッ!
マフラーから青白いアフターファイアを吐き出し、前を走るSW20は猛然とダッシュする。
「ッ!」
友也はSW20の加速を見て驚く。
リアタイヤから白煙を上げ、路面にブラックマークを残してゆく。
友也も負けじとアクセルを踏み込み、SW20に食らい付く。
「へぇ、良くヤルじゃねぇか。ちょっとは歯ごたえ有るヤツだな!」
軽口を叩きながら、カズは3速へとシフトアップ。
600psものパワーを持つSPEED SHOP製3S‐GTE改ツインターボE/gが、白い車体を引っ張っていく。
「おっとっと…。」
緩い右コーナーを軽くテールスライドを起こしながら、SW20は立ち上がる。
「くっ…!」
友也はSW20に喰らい付くので精一杯だった。
せわしくステアリングをこじり、SW20から離されない様にする。
「この前の34Rは軽々と抜けたのに…、このSW20は別格だ……。」
友也が呟いている内に、2台は銀座エリアへと突入していく。
「ッ…!」
橋桁シケイン前のS字コーナーでSW20のリアタイヤがブレイク。
失速したSW20の横を、インプが悠々とオーバーテイク。
「良し…ッ。」
1つ目の橋桁をクリアし、2つ目の橋桁に差し掛かる。
左右のレーン共にオールクリア。
インプは右、SW20は左のレーンを通過する。
銀座エリアを抜け、インプが前のまま長いストレートを抜けて、江戸橋JCTを右に折れる。
「チッ…、新環状線ルートで来たか…!」
Rの大きな右コーナーを抜け、2台は新環状線ルートへと合流する。
カズはシフトを4速へチェンジ。インプとテール・トゥ・ノーズ状態になる。
そして、SW20は左のコース、インプは右のコースを取る。
すると、インプからブローオフバルブの音が聞こえてくる。
インプのとったコースには一般車が居た。再合流時には、SW20が前に居た。
「うっしゃぁ!」
「くっ…!」
SW20が前のまま、9号下り線を走りきって、高速ステージの湾岸線に合流する。
「今日は一般車が多いな…。ちょっと無理してみるか…。」
友也は小さく呟き、シフトを4速へとチェンジ。
そして、センターコンソールに埋められた青いスイッチを押す。
「くぅ……ッ!」
友也の体がシートに押し付けられる程の加速G。友也はスクランブルブーストを発動した。
直ぐに5速へとシフトアップし、SW20を一気に抜き去っていく。
「チィッ!スクランブルブーストか! 」
カズもシフトを5速へと入れるが、インプのテールは離れていく。
しかし、綺麗に一般車の間をスラロームして、SW20のラインから一般車が消えてオールクリアとなる。
「仕方…無いよな。」
カズは小さく呟いて、センターコンソールに手を伸ばす。
「その武器を持ってるのは…、お前だけじゃナイんだぜ?」
そして、カズもセンターコンソールに埋められたスイッチを押す。
「ぬぅ…!」
スクランブルブーストを発動したSW20は、リアタイヤから白煙を吐き出し急加速。
消えかけたインプのテールに張り付き返す。
「な…!?」
バックミラーを覗き込んだ友也が驚きの声を上げる。
そして、友也が視線を再び前に戻した瞬間、トラックが車線をイキナリ変更してきた。
「クソッ!」
ブレーキを床まで一気に踏み込み、ステアを右に切る。
バランスを崩した車体がフラフラと移動し、SW20の進路を妨害する。
「チィッ!」
カズも一気にフルブレーキング。SW20のバランスが崩れ、一気にトラクションを失う。
ステアを思いきり右に切り、その後にカウンターを当てる。
「ッ!ッ!」
テールスライドを起こしながらも、SW20は前へと進んで行き、体勢を立て直す。
そのままシフトを3速まで落としてフル加速し、インプのテールへと張り付く。
「な…!(あの姿勢から立て直した…!?)」
友也は後ろで起きた出来事に思わずスロットルを抜いてしまう。
その横を悠々とSW20がオーバーテイク。
「しまった…!」
再び友也はアクセルを踏み込み、SW20のテールへ。
すると、SW20がウィンカーを出して、台場線へと進路を変更する。
そのままレインボーブリッジを通り抜け、C1内回りへと合流する。
「コレで振り出しか…!」
SW20が前のまま、2台は深夜のC1内回りを駆け抜けていく。
続く