あみだくじに必勝法なんてあるの？

頭の体操の時間です😆

こんな記事がダイヤモンド・オンラインに載っていました。

統計リテラシーのない者がカモられる時代がやってきた統計学の解説書ながら42万部超えの異例のロングセラーとなっている『統計学が最強の学問である』。そのメッセージと知見の重要性は、統計学に支えられるAIが広く使われるようになった今、さらに増しています。そしてこのたび、ついに同書をベースにした『マンガ統計学が最強の学問である』が発売されることになりました。その発刊を記念し、『統計学が最強の学問である』の本文を公…

diamond.jp

「統計リテラシーのない者がカモられる時代がやってきた」と題したこの記事、東大医学部を出た研究者の方が書かれたものですが、おかしなところがありますので、ちょっと間違い探しのつもりで、お時間のある方は是非読んでみて下さい。とても良い頭の体操になります。

短い記事ですのですぐに読み終わりますし、お忙しい方は「あみだくじの必勝法」とのサブタイトルが付けられた項目のみでも構いません。なんなら、この下に核心部分を抜粋していますので、リンク先に飛んでいただかず、このまま読み進めていただいても構いません。

読んでみた方、いかがでしたでしょうか？

「あれ、なんだかおかしいぞ」と違和感を覚えた方、「この著者の統計リテラシーは大丈夫か？」との感想を持たれた方は、ちゃんとした統計リテラシーのある方ですので、安心していただいて良いかと思います。

逆に、何の違和感もなく読み終えてしまった方は、統計リテラシーにやや不安のある方の可能性がありますので、今後、カモられないように注意が必要かもしれません……

原著を読んでいませんので、もしかしたら原著にはちゃんと不備を補う内容が書かれているのかもしれません。でも、切り出されたこの記事のみを読む人も多数いる以上、この記事を公開してしまうのはちょっといただけないなと思ってしまいます。

では、この記事のどこがおかしいのでしょうか？

まず、記事に書かれたあみだくじのルールを抜粋します。

「私を含む参加者4名の倍の数である8本の縦線を引き、私が残りの参加者に見えないよう左から4番めの縦棒の下に星印をつけ、残り3人の友人には逆に私に見えないように4本ずつ横の線を引いてもらうといったルールで行なった。参加者はジャンケンで勝った順番に①～⑧の縦棒の中からまず1か所ずつを選び、ひと通り選び終わった後はその逆順で選ぶ。そして★印に当たった者がコンビニへと全員の使い走りに行くことになるのである。」

そして、このあみだくじについて、以下のように述べています。

「試しにこのルールで1000回繰り返したとして、縦棒ごとの当たる回数をシミュレーションしてみると図表2のような結果になる。

(出典: ダイヤモンド・オンライン)

一番当たる確率が高いのは当たりの真上である④で1000回中210回、つまり21.0％の確率で当たる。次いでその右隣では19.4％の確率で当たることになる。一方、最も低い右端では3.3％の確率でしかない。

　実際にこうしたルールであみだくじをやったところ、友人たちのクセなのか、人間心理の傾向なのか、両端の縦棒を先に選ばれたことはほとんどなかった。

　つまり、一見4分の1すなわち25％ずつの確率で公正に決めようとしていると思わせつつ、両端を選び続ける私がコンビニに行く確率は11.4％（＝（81+33）÷1000）ほどしかない。一方で、なぜか中心付近の縦棒を直感的に選ぶ傾向にあった友人が④⑤の選択肢を選ぶと40.4％（＝（210+194）÷1000）もの確率で当たることになる。」

さてさて、こちらのあみだくじのルール、一見公平に見えますが、実は極めて不公平なルールとなっています。

どこに問題があるか、お分かりになりますでしょうか。

一番問題なのは、「私が残りの参加者に見えないよう左から4番めの縦棒の下に星印をつけ」の部分。つまり、自分だけが星印の位置を知っているというところです。参加者の間に、情報の非対称性が生じてしまっているのです。

上表の棒グラフでも分かる通り、あみだくじは最初に選んだ場所付近に着地する確率の方が、遠くに離れる確率よりも高くなります(経験則的にもなんとなく分かると思いますが、1次元ランダムウォークの考え方で論理的にも説明できます)。

ですので、星印の位置を知っている人は、そこから離れた場所を選択すれば勝てる確率は高まります。

ランダムウォーク - Wikipedia

ja.m.wikipedia.org