《結婚式》
リビアに来てすぐ一番驚いたのはウェディングだ。真夜中に始まるのだお祝いが。
スタートが早い日でも夜20時から始まる。夜23時を過ぎても鳴り響く打楽器と笛系の音楽。
結婚式はおよそ4日間ほど続くらしい。たいてい家でパーティを開き、祝杯をするので近所の人も巻き添えでお祝いするそうだ。これが結構頻繁に行われていた。
そして本番は深夜0時を過ぎてから始まるようで夜中までお祭りの音が鳴り響く。
夏は特に暑いこの国。18時から街が活気づき夜中まで営業しているお店がほとんどなので、本当に夜が中心の国なんだなとつくづく感じる。
昼間は暑くて何もする気にならないということだろうか。
《お葬式》
会社で一緒のスマヤのお父様が亡くなった時のこと。彼女はユーゴスラビア出身で、お父さんがリビア人だとういう。
その日、会社が終わって、数人の女の子達と一緒に彼女の自宅を訪問した。
スマヤとご家族にお悔やみを言い一人一人互いの頬にキスをするように抱き合う。
お茶が出され、
「わざわざ来てくれたことに感謝する」と
いつも明るい彼女とは違う大人びた表情で立派に立ち振る舞っていた。
しばらくみんなで共に過ごす。大切な家族を失った人への労わりの気持ちだ。
ちらほら会社の女の子達が泣いている。心から当人の気持ちを察しての涙。
早くに父を亡くしているザラの目からポタポタと涙が落ちている。
しっかり者でいつも大人びた顔をしているザラが、その日見せた、等身大の20歳過ぎのあどけない少女のような姿に私の胸もギュッと苦しくなる。
ザラはお父さんが無くなった時のことを思い出しているようだった。そんなザラをやさしく慰める姉のナディア。
お父さんを無くしたスマヤとは、まだ働き始めて1ヶ月ほどの付き合いだった。
もし私だったら、日本で長い付き合いの友人ではなく会社の同僚の為にここまで親身になれるだろうか。
リビアでは家族のつながりをとても大事にしている。家族と共に過ごすことが一番大事な時間でもある。
伝統的な生き方が残っているからこその習慣だ。女の子は仕事が終わって帰ったら、大抵お母さんの手伝いをする。もちろん友人と出かけたりもするだろう。でも基本は家族と過ごす。
私も中学生くらいの時はそういう生活をしていたと思うが、成人して働き出したらそういう時間はどんどん少なくなるのが当然だ。家族がリビアの人達の生活の中心なのだ。
この街自体、娯楽も少ないし、外へいくより中へという感じなのだ。
お葬式は大抵正午に上げられ皆仕事もあるから、夜友人やお客が家族を見舞うらしい。
会社の上司やカミルはもちろんのこと、たくさんの人がやってきた。お葬式でも男女は別々に訪問し儀式に参加する。女性は来客のもてなしなど忙しく動いていたが、だれもが大切な人を亡くした家族の気持ちに寄り添い、慰めあい助け合っている姿がとても印象的だった。