2006年ドラフト総決算
1.怪物たちの登場
2005年夏の高校野球選手権大会、決勝のマウンドで駒大苫小牧の田中将大投手が雄叫びを上げた。自己最速の150kmをマークした高めの速球で空振り三振を奪い、駒大苫小牧の夏連覇を決めた瞬間、そして、2006年のドラフトの超目玉となった瞬間だった。
名古屋北リトル時、横浜スタジアムで行われた全国大会で特大アーチを架け、中日とのファン感謝デーでは福留投手からスタンドに放り込む。そして入学した愛工大名電で1年秋から4番に座り、2年春のセンバツでは甲子園で2本塁打を放ちチームを優勝に導いた。勝負強く力強い。打撃の怪物は高校入学時にはドラフト1位が約束されていた。
関西学生リーグでは二人の左腕投手の投げ合いが続いていた。近大の大隣投手と立命館の金刃投手。
大隣投手は2005年春のリーグで関大の岩田(現阪神)と延長11回の死闘を演じ、3連戦を連投しチームに勝ち点を与えると、5勝を上げてリーグ戦を制覇した。続く大学選手権の2回戦(札幌大戦)で1試合19奪三振をマーク、チームを決勝に導いた。33イニングを投げ自責点は0。150kmの速球を投げる左腕は一躍注目の的となった。
金刃投手は高校時にもドラフト候補に名前が挙がっていた。1年時に勝利を挙げるもののまだまだ体が細く、力もまだまだ足りない印象があった。そして2005年春、頭角を現した大隣投手が大学選手権で鮮烈デビューをすると発奮し、2005年秋のリーグで伝説となる投げ合いを見せるのだった。
10月9日南港中央球場、近大vs立命館大の試合は大隣―金刃の先発で10時に開始、両チームとも投手を打ちあぐね、延長13回既定により0-0の引き分けとなった。
そして2日後の10月11日、再び大隣―金刃の先発、9回までにお互いに2点を奪ったものの譲らずに再び延長13回を投げ合った。結果は近大・中東選手のタイムリーで近大のサヨナラ勝利だった。しかしこの2試合の投げ合いが関西に大隣、金刃を全国に知らしめ、多くのプロ野球チームが注目する選手となった。
2.2006年ドラフト戦線開始
11月18日、2005年大学社会人ドラフトが終わると、早くも2006年ドラフトの注目選手の名前がスポーツ新聞に掲載される。
◇阪神、大隣投手、堂上選手を狙う 11月18日
◇中日、堂上選手を狙う! 11月19日
◇ソフトバンク、大隣、金刃投手を両獲り! 11月24日
◇日本ハム、駒大苫小牧・田中投手に専任スカウト設置 11月24日
◇近畿大から王監督へラブコール! 11月25日
◇日本ハム、田中投手に背番号18を用意!
◇ヤクルト、金刃投手獲りへ名乗り! 12月12日
◇中日、堂上渡してたまるか!
その他、大学選手権で優勝し安定感抜群の青学大・高市投手、PL学園の桑田2世・前田投手、インタコンチネンタル杯で活躍した日産自動車・高崎投手、和製ランディジョンソンと呼ばれ高校時じも注目された東京ガス・木村投手なども注目された。
毎年注目を集める、ドラフト候補選手の初練習の動きは次の通り。
◇早稲田大・宮本、大谷始動! 読売スカウトがあいさつ! 1月5日
◇阪神、堂上選手の練習始めに一番乗り! 1月6日
◇東京ガス・木村投手に横浜、読売スカウト
◇日産自動車・高崎投手に4球団のスカウトマーク
◇青学大の初練習に4球団のスカウト
◇近大・大隣投手、始動! 5球団8人のスカウト集結
◇北の怪物、駒大苫小牧・田中投手にソフトバンク、阪神、読売が挨拶
そして年始に開かれる各球団のスカウト会議の結果候補に挙がったのは次の通り。
| 横浜 |
楽天 |
広島 |
オリックス |
読売 |
千葉ロッテ |
ヤクルト |
福岡ソフトバンク |
阪神 |
西武 |
中日 |
日本ハム |
高崎
高市
木村
大崎 |
田中
高市 |
前田 |
金刃
大引
前田 |
大隣
田中
堂上
木村 |
前田
田中 |
金刃 |
大隣
金刃
田中 |
大隣
堂上 |
木村 |
堂上 |
田中 |
3.春の変動!
毎年春には大きな動きがある。一つは駒大苫小牧が不祥事よるセンバツ出場辞退。これにより田中投手のいる駒大苫小牧は対外試合が夏の予選まで禁止された。
そして1月30日、スポーツ紙各紙に掲載された大物の動向。
「近大・大隣、ソフトバンク入り有力!」
読売、阪神などが狙っていた大隣投手が早くもソフトバンク入りの方針が決まった。これを受けて各球団の動きは活発となる。
◇横浜、日産自動車・高崎投手獲り! 4月10日
◇阪神、早稲田大・宮本投手を上位候補にリストアップ
◇ヤクルト、青学大・高市投手を狙う
◇読売、日本ハム、東北学院・岸投手を狙う。
◇東北楽天、東北学院大・岸投手を希望枠に
◇横浜スカウト会議、高崎、高市投手の獲得を目指す!
新たに登場した投手として151kmをマークした東北学院大の岸投手は西口2世と呼ばれる綺麗なフォームとキレの良いスライダーが魅力の新星。
高校野球では140kmを超える速球でセンバツの高岡商業戦で17三振を奪い完投、そして優勝した横浜高校を相手に5イニングで8三振を奪う好投を見せた八重山商工・大嶺投手。
同じくセンバツで真岡工業戦で16三振を奪い、続く愛知啓成戦で9奪三振で完封、秋田商戦でも9奪三振で完投、チームをベスト4に導いたPL学園・前田投手。
また、早稲田実業vs関西戦で延長15回7-7の引き分け、231球を一人で投げぬき、翌日の再試合でも3回から9回までを投げチームを勝利に導いた夏にハンカチ王子として注目を集めた斉藤佑樹投手がいた。
岸投手は大隣投手が決まったあとの希望枠の目玉として、大嶺投手は地元福岡ソフトバンクが指名を決定、前田投手には広島やオリックスが注目した。
| 横浜 |
楽天 |
広島 |
オリックス |
読売 |
千葉ロッテ |
ヤクルト |
福岡ソフトバンク |
阪神 |
西武 |
中日 |
日本ハム |
高崎
高市
木村 |
田中
岸 |
前田 |
大引
前田
捕手 |
岸
田中
堂上 |
前田
田中 |
金刃 |
大隣
金刃
田中 |
小嶋
堂上 |
岸 |
堂上 |
田中
岸 |
4.夏の成就
夏には各球団の狙いも定められ、候補者はプロ入りの夢をかなえるため、次々と活躍を見せる。
夏の甲子園はハンカチ王子・斉藤佑樹投手が大ブレーク。147kmの速球と抜群の安定感で一躍高校生ドラフトの入札候補となる。また大嶺投手も149kmをマークし評価を上げた。
そして埼玉に最後の怪物が登場する。鷲宮・増渕竜義。149kmの速球で埼玉県予選を勝ち進んだが決勝で甲子園の夢は断たれた。しかしその活躍は多くのプロ球団に特A評価を受けた。
夏の選手権後、早稲田実業・斉藤投手は早稲田大学への進学を表明、高校生ドラフトは田中、堂上、前田、大嶺、増渕のBIG5に絞られていく。
大学社会人戦線は引き続き東北学院大・岸投手の争奪戦が続いているなか、日産自動車・高崎投手の横浜入りがほぼ決定した。
9月25日に高校生ドラフトが開催され、中日:堂上、田中:東北楽天、増渕:東京ヤクルト、広島:前田、そして福岡ソフトバンク単独指名と思われていた大嶺投手に千葉ロッテも指名し抽選の結果交渉権を獲得。大嶺投手は一時交渉拒否を訴えるなど波乱が起きたが、最後にはプロへの夢を笑顔でかなえた。
5.最後の波乱
高校生ドラフトも終わり、残る大学社会人の希望枠争いにも終止符が打たれる。
争奪の中心となっていた東北学院大・岸投手が西武入りを表明した。それに伴い、読売はヤクルトが狙っていた金刃投手に方向転換し見事獲得、ヤクルトは青学大・高市投手の獲得に向かう。日本ハムは早稲田大・宮本投手に、そして東北楽天は希望枠を決めることができないままドラフトへ向かうことになる。
| 横浜 |
楽天 |
広島 |
オリックス |
読売 |
千葉ロッテ |
ヤクルト |
福岡ソフトバンク |
阪神 |
西武 |
中日 |
日本ハム |
| 高崎 |
決まらず |
宮崎 |
小松 |
金刃 |
― |
高市 |
大隣 |
小嶋 |
岸 |
田中 |
宮本 |
ドラフト前に一番注目をされたのは各球団の3順目指名だった。残っている候補では、和製ランディジョンソンと言われる東京ガス・木村投手、法政大で東京6大学の歴代4位の記録となる121安打をマークした大引選手、無名大学ながら150kmを超える投球でチームを一部に挙げた日本福祉大・浅尾投手、秋に頭角を現した日大の長野外野手、クレバーなリードを見せる國學院大・嶋捕手、強肩と安定した守備の白鴎大・高谷捕手、社会人で150kmを超えるストッパーとして活躍するトヨタ自動車・上野投手、日本代表としても活躍したシダックスの左腕・森福投手、。
木村投手と上野投手は千葉ロッテを志望し、浅尾投手は中日を希望、長野選手は読売を希望、森福投手と高谷捕手はソフトバンクを志望した。
大引選手と嶋捕手は12球団OKの姿勢を見せたなか、木村投手にはウエーバー1番目に指名する横浜が指名を予定し、上野投手には広島、横浜が、浅尾投手にはヤクルト、西武などが指名の姿勢を見せた。また高谷捕手にはオリックスやヤクルトが指名を狙ったが、ソフトバンク希望の情報により指名回避、シダックス森福投手には楽天が1位指名も狙い、多くの球団が3位指名を画策した。嶋捕手には当初オリックス3順目が予想されていたがその前に指名する東北楽天が指名を決定、大引選手には阪神、千葉ロッテ、ヤクルト、そして当初から大引選手を見ていたオリックスが最後までリストアップし、日々指名予想が変わる非常に不安定な状況で当日を迎えることとなった。
11月21日のドラフトで東北楽天は東洋大・永井投手を1位で指名し、注目の3位、横浜の指名は木村雄太投手の指名だった。引き続き、楽天が嶋捕手を、広島が上野投手を、オリックスが大引選手を指名、千葉ロッテは広島が狙っていた神戸選手を指名、ソフトバンクは希望通り高谷捕手を、中日も希望通り浅尾投手を指名した。そして日本ハムが長野選手を4順目で指名した。
ドラフト後の候補者の記者会見などで、日大・長野選手は涙を流し、東京ガス・木村投手は横浜大矢監督の挨拶を拒否する形となった。
2回目となった暫定である高校生・大学社会人の分離ドラフト。評価と課題を残し来年は新制度でのドラフトとなる。
6.最後に
そして今年1年間注目し話題にさせていただいた候補者の選手にお礼をしたいと思います。選手の活躍と夢への挑戦に、見ている私達も期待と希望を持つことができました。
本当にありがとうございました。そして毎年続けている言葉を今年も書きます。
ドラフトに指名され、プロ野球に入る選手の皆様! おめでとうございます!
皆さんがプロで活躍し、プロ野球を夢見ていた皆さんの夢を、将来のプロ野球選手に与えてくれることを期待しています!
今年は不作と言われながらも各球団、社会人選手を中心に多くの選手を指名しました。これで社会人チームは新しく選手を補強し、新旧の世代交代が行われることでしょう。そして同じチームでプレーしていた選手がプロで活躍する姿を見て、自分も夢をかなえることができる、とプロを目指すことになるでしょう。この社会人野球の活性化は来年、再来年以降に社会人からのスター選手の誕生を予感させます。
2007年には清原、松井、松坂と並ぶ怪物が登場します。大阪桐蔭・中田翔。そしてこの中田選手を倒そうと各地で怪物が名乗りを上げ、既に活躍を見せています。
来年の今頃はどうなっているのでしょう、そしてドラフト制度は!?
大きな期待を持ち、2006年のドラフト情報は終わらせたいと思います。
本当に1年間ありがとうございました。