『本物』について
「伊勢の赤福」で知られる、株式会社赤福。
赤福は、昭和十九年の太平洋戦争末期から、昭和二十六年までの七年間、店を閉じていた。
昭和十九年、菓子の原材料である小豆・砂糖等は、材料統制や食料不足の中で粗悪なものしか手に入らなくなった。
本来の品質を守れない状況の中、一七〇七年からの伝統と信頼を守るべく、当時の社長は伊勢内宮への参道にある店舗を閉める決断をした。
そして終戦。
次第に原材料の品質も回復しだすが、二年経ち三年経っても当主は再開の指示をしない。
そのうちに、赤福本店の周囲に、類似商品を持つ競合店が十七店ほど店を開く状態になった。
このままでは、再開しても商売の回復は難しいと考えた番頭達が当主の所へ、店を再開させてほしい、そう談判へ出かけるこ とになったという。
ところが当主は、頑として許さなかった。
戦前と全く同じ水準に回復するまで赤福を作ってはならないと。
そして、焦る番頭達にこう告げたと言う。
「見ていてごらん。
赤福が本物の材料で最高の商品を作ったら、お客様はすぐ戻るから。
お客様はね、こちらから裏切らない限り、店から去ることはないんだよ」
ようやく、昭和二十六年、原材料の回復をみて当主は商売再開の指示を出したという。
食糧不足の戦後。
甘い物なら飛ぶように売れた時代。
例え少々劣悪な材料で商品を出しても、お客様は殺到したに違いない。
まして、赤福には一七〇七年からのブランドがある。
その閉鎖期間中の逸失利益は大変なもの。
しかし、当主は一時の利益に走らず、歴史 伝統を一寸たりとも裏切ることのない選択肢を選んだ。
まさに、良心を曲げなかった。
その結果は、即現れたという。
驚いたのは、番頭さん達。
七年のうちに、競合十七店のうち二店を 除いて潰れるか、赤福が吸収するかして、消えてしまった。
現在、赤福の年間売り上げは、百億円を超える。
この驚くべき売り上げは、積み上げられたお客様からの信頼の表れに他ならない。
顧客を一寸たりとも裏切る所がなければ、顧客の方から離れることはない。
長期的視野を持つというのは「自分達の信頼価値を積み上げる意思決定に徹する」ということに違いない。
そしてこのことは、21世紀型リーダーの第一の資質でもある。
ともすれば、目先の利益、あるいは企業利益のためという大義名分に流されそうになる。
よりマクロに善悪を判断することが、将来の自分自身、そして組織の利益、未来へと つながる本質的利益。
長期的視野を持ち、信頗を積み上げるべく、よりマクロに善悪判断ができるリーダーこそ、「本物のリーダー」。
本物リーダーの集合体が、間違いなく本物企業。
21世紀は、間違いなく本物企業の時代。
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