2009 東京インターナショナルオーディオショウ | オーディオの楽しみ

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今年もこの季節になった。私が行ったのは、10月3日土曜日の午後だ。

今年は盛況だったのではないかと思う。比較的若い人も多かったように感じた。また女性も増えた。もちろん多いとまでは言えないが、5、6年前は女性はいるだけで驚きがあったから様変わりだ。ホーム・シアターにいよいよ飽き足りなくなった人たちが戻って(というより初めて)来た、という部分もあるだろう。入場者の熱気も感じた。


今回の特徴としては、PCオーディオがいよいよ立ち上がりつつあるということを肌で実感したことだ。いくつかのブースでは何百万円もするステレオ・システムのデモに、CDプレーヤーは全く使われず、その位置をパソコンが占めていた。安物のパソコンのハードディスクから出される音が、どんな高級CDプレーヤーより音がいいということは、その筋には以前から分かっていたが、それがいよいよビジネスの世界で、具体的な製品を伴って現実になりつつある。まさにPCオーディオは黎明期にある。モノとしてのCDを買ったりセットしたりする楽しみは捨てがたいものがあるから緩慢ではあるだろうが、この大きな流れは止まらないだろう。


今年、最も印象に残ったブースは、第一にノアで、Soulutionだ。700シリーズの超弩級アンプ類に、新着のやはり超弩級のデジタル・プレーヤーを加え、Sonus faberのスピーカーAmati anniversaryを動かしていたが、そのふわっと広がる空気感の中から明確なヴァイオリンの音像が浮かび上がる様は、音楽性とリアルさを両立させていて本当に素晴らしかった(アンプ類とプレーヤーで総額2000万円を超えるのだから無理もないけど)。ここのブースは、以前にもStradivariをBurmesterのアンプ類で鳴らして、素晴らしい音色を出していたが、Soulutionのアンプは物量を投じているだけあって、もっとずっと安定した印象があり、音色もより透明だ。いったい、スイスのメーカーはFMAcousticsといいGoldmundといい非常に高価だが、動作は地面に根を張ったように安定感が強い。工作精度なども関係しているのだろうか。このあたりはまだまだオーディオの不可思議を感じる。


そして良かったのが、Degital Do Main。西和彦さんが主宰し、FET(SIT)を使ったB-1a(懐かしい名前だ)で知られる会社だが、入力にはサウンドフィデリティの高価なオーディオPC、Model2(予価140万円)が使われていて、それを同社のD/Aコンバーター、パワーアンプB-1aに繋いで、Cabasseの新しいスピーカーを動かしていた。スピーカーは小さかったので空気感までは望めないが、音はまるですぐそこでミュージシャンが演奏しているのではないかと思うほど、生気溢れ臨場感が高いものだった。PCオーディオは、LINNやアクシス(Ayre)でもデモをしていて、どれも新しい時代の到来を告げる素晴らしいものだったが、音だけならこのブースの音が最もスタジオのナマ音らしくて、一番ダイレクト感があった。

このブースがいい音を出していた理由のうち、一つは少なくともはっきりしていて、音楽用のパソコンが使われていたことだ。ハードディスク自体は汎用品しかなく、そのままでもCD以上の音は出すが、電磁ノイズ対策などをすることで当然に音はよくなる。回転部分を持たないSSDの可能性もこれからだ。音楽用のUSBケーブルなども次第に出てきているようだから、これからこのあたりが急速に進むだろう。

PCオーディオについては、三浦孝仁さんの「デジタル・オーディオの最終形が見えてきた」という言葉が、全てを語っていると思う。