木山「申請が・・・、通らないんだ・・・」 | とあるSSのクライアント

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とある魔術の禁書目録のSSのまとめブログです。


木山「23回」 

美琴「?」 

木山「あの子達の回復手段を探るため、そして事故の原因を究明するシュミレーションを行うために」 

木山「『樹形図の設計者』の使用を申請して却下された回数だ」 

木山「統括理事会がグルなんだ。警備員が動くわけがない」 

美琴「でもそれじゃ、アンタのやってる事も同じになっちゃ……」 

木山「君に何がわかるっ!!」


木山「申請が・・・、通らないんだ・・・

747 :木山先生は23回断られた 2:2011/05/16(月) 21:09:24.61 ID:yEbqgJJ+0

========= 1回目 ========= 

木山「メールで『樹形図の設計者』の使用申請をした木山だが」 

事務員「ああ、あのメールの方。すみませんね、書面の形にしてもらわないと申請は受け付けられないんですよ」 

木山「む……そうだったのか」 

事務員「お手数ですけど、申請書出して下さいね」 

木山「……分かった」


========= 2回目 ========= 

木山「『樹形図の設計者』の使用申請書だ。よろしく頼む」 

事務員「ん? 何ですかこれ?」 

木山「だから、申請書だ」 

事務員「だめですよ、適当に刷ったプリントじゃ」 

木山「え?」 

事務員「そこに置いてある正規フォーマットの用紙を使うんですよ」 

木山「だ、だが、さっきはそんな事……」 

事務員「何か?」 

木山「いや……何でもない。この紙だな?」 

事務員「ええ。規則なんですみませんね」 

748 :木山先生は23回断られた 3:2011/05/16(月) 21:10:41.91 ID:yEbqgJJ+0

========= 3回目 ========= 

木山「正規フォーマットの用紙に直したぞ」 

事務員「ああ、あなたですか。すいませんが、今日の受付時間は終わっちゃったんですよ」 

木山「ん? 遅れてしまったか。すまないが、とりあえずこれを」 

事務員「明日また提出してください」 

木山「受け取るくらいいいだろう。君はここにいるんだから」 

事務員「別の仕事のためにいるんですよ」 

木山「でも、君はまだ帰ってないじゃないか」 

事務員「いや事務員がいるとかいないとかじゃないから。もう締め切ったから」 

木山「ちょっとの遅れだろう」 

事務員「だめでーす」 

木山「何も今から処理しろとは言わない」 

事務員「無理でーす」 

木山「そんな融通のきかないことを言わなくても」 

事務員「規則でーす」 

木山「くっ……」 

749 :木山先生は23回断られた 4:2011/05/16(月) 21:11:57.24 ID:yEbqgJJ+0

========= 4回目 ========= 

木山「……朝イチで来たぞ」 

事務員「はい、おはようございます。『樹形図の設計者』の使用申請書ね。IDカードと一緒に出して下さいねー」 

木山「ID?」 

事務員「だってこの申請者とあなたが同じ人だってどうやって証明するの?」 

木山「それはそうだが……なぜ昨日言ってくれなかった?」 

事務員「普通持ち歩くでしょう。首に掛けて肌身離さず持つの、一応規則なんですけど」 

木山「知らなかった……」 

事務員「忘れちゃいました? じゃ、取ってきて下さいねー」 

木山「自宅まで一時間かかるんだが、後日提出という形で何とかならないか?」 

事務員「今取ってきて下さいねー」 

木山「ぐ……」 


========= 5回目 ========= 

木山「申請書とIDカードだ」 

事務員「はいはい、じゃあお預かり……あれ? 何これ? パソコンで書いたの?」 

木山「ああ。そっちの方が早いもので」 

事務員「すいませんねー。手書きしか受け付けてないんですよ。ごめんなさいねー」 

木山「な、何だそのルール? 機械の文字で何の問題があるんだ。時代錯誤じゃないか?」 

事務員「はーい。余計なお世話でーす」 

750 :木山先生は23回断られた 5:2011/05/16(月) 21:12:51.75 ID:yEbqgJJ+0

========= 6回目 ========= 

木山「手書きで書いたぞ」 

事務員「どれどれ。……はあーっ」 

木山「何だその馬鹿にしたようなため息は」 

事務員「消しゴムで消えるようなもので書かないで下さいよ。ボールペンかサインペンで書き直して下さい」 

木山「そ、そんな事聞いていないぞ」 

事務員「わがまま言わないで下さいね。みんな守ってるんだから。……常識なんだけどな」ボソッ 

木山「………………ッ!!」 


========= 7回目 ========= 

木山「ボールペンで書いた。これで文句はないな?」 

事務員「ええ、ええ……って、なんで青字で書くかなー。普通黒でしょ黒」 

木山「ああ、丁度手元に青いボールペンしかなかったもので」 

事務員「手元に無いなら買えばいいじゃない。売店もすぐそこにあるんだからさ」 

木山「そんな、いちいち……」 

事務員「お金だっていっぱいもらってるんでしょ? こんな所で事務やってる人間なんかと違ってさー」 

木山「…………」 

751 :木山先生は23回断られた 6:2011/05/16(月) 21:14:30.92 ID:yEbqgJJ+0

========= 8回目 ========= 

木山「書き直した。黒いし、ボールペンだ」 

事務員「たかが申請書にここまで手こずる人は初めて見ましたよ。じゃ、預かりますね。おめでとうございます」 

木山「一言多いな君は。それじゃあ、よろしく頼む」 

事務員「木山せんせーい?」 

木山「……なんだ?」 

事務員「あなた、木山・何なんですか?」 

木山「何って?」 

事務員「氏名欄ですよ。名字だけじゃ誰だか分かんないでしょー。所属と姓名きっちり書いてくださーい」 

木山「また小出しにして……」 


========= 9回目 ========= 

木山「所属も名字も名前も完璧に書いて来たぞ」 

事務員「はい、どうも」 

木山「それじゃあ、私はこれで……」 

事務員「先生ー?」 

木山「な……何だ……?」 

事務員「あなたの名前は木山はるお? え、違う? じゃあ何て読むんですかコレ?」 

木山「は……はるみ、だ……」 

事務員「ふりがな書いて下さいよ。わざわざ申請書に空欄でいいスペースなんて作るわけないでしょ」 

木山「だが、氏名はしっかり……」 

事務員「ふりがな欄ナメないで下さいね、学園都市って変な名前の人いっぱいいてこっちも迷惑してるんです」 

木山「それはそっちの都合だろう……」 

事務員「手続きに必要な都合ですよ。ふりがな書いて出し直して下さい」 

752 :木山先生は23回断られた 7:2011/05/16(月) 21:15:23.36 ID:yEbqgJJ+0

========= 10回目 ========= 

木山「ふりがな付きだ。小学生でも読めるぞ」 

事務員「一年生はひらがな読めない子もいますけどね。きやまはるみ、と……」 

木山「今度こそ大丈夫だな?」 

事務員「あっれ~~~~~~? せーんせーい」 

木山「うぐっ……」 

事務員「これ、はんこ押してないじゃない」 

木山「判子?」 

事務員「氏名欄の隣りにしっかりありますよ。印鑑ポンとやればいいだけなのに」 

木山「……押してくる」 


========= 11回目 ========= 

木山「押印済みだ。もう文句は言わせないぞ」 

事務員「こっちがわざと因縁つけてるみたいに言わないで下さいよ。できたんならちゃっちゃと出して下さい」 

木山「ほら」 

事務員「……あなたのだけじゃだめでしょ」 

木山「ええ?」 

事務員「上長の署名捺印貰って下さい。副室長以上の権限持った人の承認がいるんですよ」 

木山「そ、そういう事は先に……」 

事務員「ちゃんと上長の氏名欄があるのに無視する方がどうかと思いますよー。はい、やり直し」 

753 :木山先生は23回断られた 8:2011/05/16(月) 21:16:36.25 ID:yEbqgJJ+0

========= 12回目 ========= 

木山「貰って来た」 

事務員「シャチハタ不可ですよ」 

木山「…………!!!!」 


========= 13回目 ========= 

木山「朱肉に付けるタイプの印鑑を使ったぞ」 

事務員「ええ。これでいいんですよ。ここまで頑張ってやっと普通の申請書ですね」 

木山「大きなお世話だ」 

事務員「あ」 

木山「な、な、な、何だ?」 

事務員「先生。先生が申請してるこの日ね、先に他の人が予約してます」 

木山「そんなはずはない。日程を決める時に空いているかどうか確かめたぞ」 

事務員「先生が書類申請にもたもたしてる間に埋まっちゃったんですよ。別の日にして下さい」 


========= 14回目 ========= 

木山「……別の予定を開けた」 

事務員「お疲れ様です。じゃ、これを預かって会議にか……け……」 

木山「今度は何だ」 

事務員「先生……本当に申請書の類、書き慣れてないんですねえ」 

木山「憐れむような目をしていないで不備があるならはっきり言ったらどうだ」 

事務員「あのね、使用目的『研究のため』って、これじゃだめでしょう」 

木山「だって、実際研究のためだし……」 

事務員「もっと具体的に、どんな研究に使うのか書いてもらわないと。これじゃ受け取れませんねー」 

木山「くっ……どこまでも邪魔を……」 

754 :木山先生は23回断られた 9:2011/05/16(月) 21:17:40.25 ID:yEbqgJJ+0

========= 15回目 ========= 

木山「これで、どうだ!」 

事務員「はい、ちょっと拝見しますね」 

事務員「…………」 

木山「これなら流石に……」 

事務員「…………ビッチリ書いてくれたのはいいんですけど、これじゃ許可降りないねー」 

木山「な、何故だ!? 研究内容も具体的に書いたのに!!」 

事務員「分かりづらい」 

木山「え……」 

事務員「あのね、これを読むのは事務員なの。分かる? あなたの専門分野に精通してる研究者じゃないの」 

事務員「学者さんはそういうとこだめなんだよなー」 

事務員「自分が分かる事はみーんな他人も分かってると思っちゃって」 

事務員「こんな専門用語つらつらつらつら書き連らねられてもね、」 

木山「……」 

事務員「 な  に  が  な  ん  だ  か  わ  か  り  ま  せ  ー  ん 」 


========= 16回目 ========= 

木山「……これを」 

事務員「眠そうですね先生。でも誤字脱字には気を付けないと。『木山』が『本山』になってるよ。はい直して」 

755 :木山先生は23回断られた 10:2011/05/16(月) 21:19:09.87 ID:yEbqgJJ+0

========= 17回目 ========= 

木山「『木山』に直して来た。よろしく頼む」 

事務員「あーあ。先生~。だめでしょ修正箇所ペンでぐしゃぐしゃぐしゃ~ってやっちゃ」 

木山「いらない部分を消しただけだ」 

事務員「直す時はね、二重線引いて印鑑押すの。これじゃだめ。全部書き直しですねー」 

木山「そ、そんな! まさか『使用目的』欄も……?」 

事務員「あたりまえでしょ。全部です」 

木山「 」 


========= 18回目 ========= 

木山「この間新しく書き直して、やっと受け取ってもらった例の申請書だが」 

事務員「ええ。検討会議かけましたよ」 

木山「そうか。申請した日から使えるか?」 

事務員「あのねえ……これ読んだけどね先生。本当にこの研究、『樹形図の設計者』いるの?」 

木山「何を言い出すんだ? 当然必要だ」 

事務員「うん、こっちでも勿論きちんと検討しましたよ? でもわざわざアレを使うつかう程のものでもないんじゃないかなー」 

木山「き、貴様に何が分かる! 専門の研究者ではないのだろう!?」 

事務員「だって、大袈裟じゃないですか? 『樹形図の設計者』って、学園都市で一番のコンピュータですよ」 

木山「規模の問題ではない!」 

事務員「二番じゃだめなんですか?」 

木山「だめだ!」 

事務員「こっちだってね、専門家じゃないのにこんなこと言うのもあれなんですけどね、いけると思うなー、二番目で」 

木山「『樹形図の設計者』の次点の演算器では二十年は掛かるぞ……」 

事務員「やってみなきゃ分からないでしょう。他の使ってみてね、それでもだめだったらまた来て下さいね」 

木山「そんな……ひどい!」 

756 :木山先生は23回断られた 11:2011/05/16(月) 21:20:42.40 ID:yEbqgJJ+0

========= 19回目 ========= 

事務員「だめだった? 本当に?」 

木山「上手くいっていたらわざわざまた来るわけないだろう」 

事務員「証明できるものは?」 

木山「は?」 

事務員「代替案が上手くいかなかった証拠ですよ。二番目の演算器でやった実験のデータまとめてないの?」 

木山「い……今手元には無い……」 

事務員「だめだよーちゃんと取っとかないとー」 

木山「…………」 


========= 20回目 ========= 

木山「う、うまく、行かなかった、実験のデータ……付けた、ぞ……」 

事務員「うーん。添付資料だけどね、申請書と同じで決まったフォーマットがあるの」 

木山「うぐぐぐぐ……」 

事務員「先生が勝手に作った形式のファイルじゃだめなの。そっち使って出し直して下さいね」 

木山「うぐぐぐぐぐぐぐぐ……」 

757 :木山先生は23回断られた 12:2011/05/16(月) 21:21:50.61 ID:yEbqgJJ+0

========= 21回目 ========= 

木山「『樹形図の設計者』の使用申請をしたいのだが」 

事務員「申し訳ありません。本日は担当の者が欠勤しておりますので」 

木山「む、そうか。ではこれを彼に……」 

事務員「担当者でないと取り扱いができないので、本日は生憎ですが」 

木山「え、いや、だからこれを取り敢えず君に」 

事務員「いえ、私は担当ではないので」 

木山「別に君に処理してもらいたいわけではなく」 

事務員「ですから、担当の者でないと対応出来かねますので」 

木山「彼の机にでも置いておいてもらえれば」 

事務員「いえ、直接お渡しいただかないといけないので」 

木山「……もう……」 


========= 22回目 ========= 

木山「現れたな……!」 

事務員「こっちの台詞ですよ。また申請ですか?」 

木山「何度も来るのは何度も却下されるからだ。これを」 

事務員「はいはい、と……せんせーい。この日は『樹形図の設計者』メンテだよ。もっと早く申請してればねえー。残念でした」 

木山「……ッチッ」 

事務員「え? 何か言いました? 先生? いい? 僕が有給取るのは正当な権利なの」 

事務員「僕のせいで研究に支障が出たと思ってほしくないなー」 

事務員「大体、あなたが最初からまともに申請書作ってればこんなに延び延びにならなかったでしょー」 

事務員「自分のこと棚に上げる人は好きじゃないなー」 

木山「……うぅっ」 

758 :木山先生は23回断られた 13:2011/05/16(月) 21:22:43.06 ID:yEbqgJJ+0

========= 23回目 ========= 

木山「『樹形図の設計者』使用申請書だ!! こ、ん、ど、こ、そ! 何の問題もないな!!!?」 

事務員「あぁ~……先生……」 

木山「何だ!!!」 

事務員「申請書は多分、完璧だと思うんですけど……」 

木山「だったらさっさと使わせろ!!!」 

事務員「あのね、20回連続で申請却下された人はしばらく再申請出来ないんだった」 

木山「な!? な……」 

事務員「この間教えてあげればよかったですねー。20回目の時に」 

木山「そんな……」 

事務員「しばらく頭冷やして、もう一度出直して下さいねー」 

木山「 」 

759 :木山先生は23回断られた 終:2011/05/16(月) 21:23:30.06 ID:yEbqgJJ+0



木山「――絶対に許さない」 

美琴「うん、許さなくていいわ」 


完