【通行止めSS】その全てへと感謝するために。【前編】 | とあるSSのクライアント

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「悪ィが、もうお前とはお別れだ。今後一切俺に関わンな」

学園都市第一位、全ての能力者の頂点に立つ一方通行は両手をポケットに突っ込みながら静かに、それでいてはっきりとそう告げた。

彼の背中越しにいる少女に聞こえるように。振り返らずとも伝わるように。

「ど、う、して……?」

今にも途切れそうな掠れた声で少女は言葉を絞り出す。

妹達の司令塔でもある打ち止めには、彼の口からそんな台詞が出てくること自体、全く理解出来なかった。

目を見開き、体を硬直させ、呼吸も満足に出来ず、ただただ立ちすくむ。

「俺と一緒にいたらお前まで命を狙われる。そンなことは絶対にあっちゃならねェンだ。だから」

「嫌だよ!ずっと一緒にいるって約束してくれたのに、ってミサカはミサカはあなたの矛盾を指摘してみる……」

彼の言葉を遮るように打ち止めは声を荒げるが、台詞の後半はあまりに弱々しく、全くと言っていいほど力が籠もっていなかった。

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:00:47.77 ID:WAIchpNIO

そんな声を聞いて一方通行は大きくため息をつき、目線を下に落とした。

しかし、それでも彼は振り返らない。

「あの約束か…、ありゃ無かったことにしてくれ」

そう言い放ち、彼は歩き始める。その姿を見た打ち止めは慌てて彼の腕を掴んだ。

彼女の手の感触が、温もりが、震えが、一方通行の右腕へと直に伝わる。

「嫌…、嫌だよ!そんなの絶対に嫌!ミサカはあなたとずっとずっと一緒にいたいよ!ってミサカはミサカは」

「駄目だ」

必死に強く訴えかけてくる少女の願いを一方通行ははっきり断り、拒絶した。
そして自分の腕を握っている彼女の指を一本一本ゆっくりと、丁寧に離してゆく。

やがてその全てを離し終えると彼はまた歩き出した。

「待って…、お願い、行かないで…、どこにも、行かないで…ってミ、サカは、ミサ、カ…」
打ち止めは震える声を必死に振り絞り、彼に懇願する。
無駄だと分かっていても、心のどこかで彼が自分から戻ってきてくれることを期待したのかもしれない。

しかし彼は歩みを止めない。
振り返りすらしない。
たった一言の返答をする気配もない。

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:03:07.19 ID:WAIchpNIO

言いたいことはたくさんあるのに。
伝えたいことはたくさんあるのに。
一刻も早く、目の前の彼の歩みを止めたいのに。

腕が、足が、口が、自分の体の全てが、金縛りにあったように動かない。

結局、彼の姿が見えなくなるまで少女は一歩も動くことが出来ず、少女の姿が見えなくなるまで彼は一度も彼女と目を合わせることはなかった。

それからしばらく時間が経ってから、打ち止めは力尽きたようにその場に崩れ落ちていく。

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:05:32.43 ID:WAIchpNIO

――刹那。
彼女の周りの景色が変わる。

そこは建物と建物の間に挟まれた、暗く、埃っぽい場所。

どこかの路地裏だろうか、打ち止めはふとそんなことを考えながら辺りを見渡した。

そして気づく。

目の前に広がるおびただしい量の、赤い、紅い、朱い、液体に。
その鮮やかなカーペットの上でうつ伏せに転がっている人間に。

打ち止めは反射的に口を手で抑えた。
体全体が硬直し動けない。
しかしそれ以上に動かないのは目の前に横たわる、人。

 かすかに震える少女と、まるで無機質な物体のように微動だにしない少年。
その少年は彼女が世界中の誰よりもよく知る彼にあまりにも似すぎていた。

「うそ。なんで……?」

この体型は。
この服装は。
この髪型は。
この電極は。

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:08:00.95 ID:WAIchpNIO

「だって…、そんな…」

 彼と違う部分を探そうとすればするほど、彼と同じ部分が見つかっていく。

例えるなら、異なる部分が一つも無い二つの絵を見比べて、間違い探しをしているような感覚だろう。

もちろん異なる部分が一つも見つからないということは、この少年は彼女のよく知る彼と完全に一致したということであり、 
それはすなわち目の前にいる少年が彼女のよく知る少年そのものだということ。

「ねぇ……、何か、言ってよ、ってミサ、カは…」

真っ赤に染まった少年の体に打ち止めは手を伸ばした。

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:10:20.80 ID:WAIchpNIO

ツメタイ。

触れた瞬間に感じる圧倒的なまでの温度差。
たて続けに少年を仰向けにして、胸へと耳を当てる。

ナニモキコエナイ。

聞こえるのは、さき程からうるさいほどに乱れた自分自身の呼吸音だけ。

恐る恐る少年の顔へ目を移すと、瞳は固く閉じられ、普段とは比べものにならないほど青白くなった肌が鮮明に視界に飛び込んでくる。

「……っ!!」

打ち止めは全てを理解した。
いや正しくは、理解させられた。

数秒後、暗い路地裏に一人の少女のこの世のものとは思えない、悲痛な叫び声が響き渡る。

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:14:15.72 ID:WAIchpNIO

「っ!!」

 気がつくとそこは見慣れた景色。見慣れた部屋。そして見慣れたベッドの上。

打ち止めは乱れきった呼吸を整えながら体を起こし、ゆっくりと周りを見渡す。

気持ち悪いほど汗だくになった自分の体、窓の外からはうるさいほど耳につく雨の音。
時計が指す時刻は午後十一時。

そしてようやく状況を理解する。

「はあ、はあ、ゆ、夢……?」

どうやら気づかないうちに寝てしまっていたらしい。確かに、考えてみれば夕方頃からの記憶がない。

 家の中は暗闇に包まれ人気がなく、雨の音だけが途切れずに響きわたっている。

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:17:13.70 ID:WAIchpNIO

そういえば今日は芳川も黄泉川も用事で出かけてるんだっけ、と彼女は頭の中で二人のことを思い出した。

ゆっくりと深呼吸を繰り返し自分を落ち着かせ、ぽつりと呟く。

「……それにしても妙に現実味のある夢だったなぁ、ってミサカはミサカは戦慄してみたり」

普通の夢ならば夢で良かったと安堵し、早々に二度寝の体勢に入るのが妥当だろう。

しかし、彼女の見た夢はあまりにも鮮明で、残酷で、現実的すぎた。

嫌な予感が頭をよぎる。

言うまでもなく彼女が見たのは所詮夢であり、今ある現実とは全く違うもの。

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:19:34.96 ID:WAIchpNIO

だが、もしも。

これが現実に起こったら。
これから起こることだとしたら。
既に起こっていたとしたら。

そう考えただけでも恐ろしく、いてもたってもいられない。

「あの人に会わなくちゃ、ってミサカはミサカは正直な気持ちを言ってみる……」

そう呟くと彼女は受話器を手にとり、震える手で一方通行の携帯へと電話をかけた。

数コールの呼び出し音。

その音は気味が悪いほど機械的で、思わず受話器を持つ手に力が入る。

「お願い…、繋がって…!」

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:22:11.31 ID:WAIchpNIO

その願いは虚しく、聞こえてきたのは留守を知らせるアナウンス。

何回繰り返してみても、彼の家の電話にかけてみても、結果は変わらなかった。

――不安は募る。

どうしても、夢の中の彼と重なってしまう。
今でも明確に思い出す、さっき見たばかりの悪夢。

色、音、景色、全てが脳に焼き付いて離れない。

胸が締めつけられ、呼吸は苦しくなり、体は小刻みに震え始める。
考えているだけでは何も変わらないことなど分かっていた。

行動しなければ始まらない。
迷ってる暇など、あるはずもない。

気がつくと打ち止めは彼の元へ走りだしていた。

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:24:47.52 ID:WAIchpNIO

「はぁっ、はぁっ…」

外は予想を遥かに超えるどしゃ降りだった。
しかし彼女はそれを気にする余裕など無く、傘もささずにひたすら走る。

時間は夜遅い。
雨も降っているからか、外を歩いている者は誰一人としていなかった。

今振り返ってみれば、彼女があの少年の夢を見ることはこれが初めてのことではなかった。
以前のように、いつも一緒に過ごすことが出来なくなった今となっては、むしろ彼の夢を見ないことの方が少なくなっている。

その度に胸は痛み、彼に会いたい気持ちでいっぱいになる。

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:26:50.55 ID:WAIchpNIO

だが、実際に会うわけにはいかない。
会えばきっと自分はあの人の迷惑になってしまう。あの人をまた傷つけてしまう。

それだけは絶対に避けたくて、彼女は自分の気持ちを無理やり抑えこみ、ずっと我慢してきた。

 しかし、あの夢を見てしまった今となっては、それはもう不可能であった。

 雨は瞬く間に彼女の全身を次々と濡らし、流れていく。それは幼い少女の小さな体を確実に冷やしていった。

しかし、彼女はそんなことなど気にもとめない。

「はっ、はぁっ、早く……」

あの人に会いたい。
その気持ちだけが彼女を走り続かせる。
息はあがり、胸は苦しく、口の中はカラカラに渇いていた。

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:28:51.14 ID:WAIchpNIO

息を荒げながらも、心の中で彼女は考える。

……あの人に、ミサカと最後に会ったのはいつだったか覚えてる? って聞いたらどう答えるかな。
きっと無愛想に二ヶ月、三ヶ月前くらいかァ? って答えるんだろうね。
そしたら、ミサカは言ってあげるの。
違うよ。三ヶ月と十六日前だよ、って。

会いたいと想う気持ちは日を追うごとに増していき、今日に至る。

しばらくして、彼女は家を出てから一度も休むことの無かったその足を止めた。

「はあ、はあ、着いた……」

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:31:02.93 ID:WAIchpNIO

全力で走ってきた甲斐もあってか、一方通行の家には比較的早く着くことが出来た。
外から見る限りでは、部屋の電気はついていない。物音もしない。

それでも、わずかな可能性を信じて、震える指先でゆっくりとインターホンを押す。

独特なチャイムの音が二回、部屋の中へと響くのが聞こえた。

いつまでたっても、反応は無い。

もう一度押してもやはり反応は無く、何度押してみても一向に彼が出てくる気配は無かった。

会えないことによって彼女の不安は更に募る。

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:33:06.07 ID:WAIchpNIO

「どこに、いるの…、ってミサカは、ミサカは…」

何度否定しても、何度忘れようとしても、夢の中の彼と重なってしまう。
もしかしたら二度と会えないのではないか。

そんな気持ちが頭をよぎった。

考えてはいけないことを、考えてしまった。
想ってはいけないことを、想ってしまった。

再び、彼女は勢いよく走りだす。
行くあてなんかあるはずもなく、彼がいそうな場所なんて検討もつかない。

それでもあの人に会いたい、彼女はその一心で彼を探すために必死に走って、走って、走った。

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:37:08.24 ID:WAIchpNIO

 雨は相変わらず止む気配などなかったが、彼女もまた休むこともなく走り続ける。
ただ、彼を捜すことにあまりに夢中になりすぎて、足元の小さな段差に気づくことが出来なかった。

「あっ!?」

不意に足をとられてバランスを崩し、そのまま地面へと派手に転倒する。

「いっ、たぁ……く、ない、ってミサカはミサカは、あの人に会えない苦しみに比べたらこんな怪我、全然痛くなんか……」
服は泥だらけになり、膝と腕を擦りむき、それなりに出血もしていた。
だが彼女はそれらを気にせず、すぐに立ち上がりまた同じように走り出す。

全ては彼を見つける、ただ、そのためだけに。

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:39:41.27 ID:WAIchpNIO

もちろん、この広い学園都市で簡単に彼を見つけられるわけが無いことは分かっている。

しかし、それでも捜すことによって会える可能性は少しでも上がるはず。
打ち止めはそう考えて少年を捜し続けた。

彼の家の周り。
公園。
コンビニ。
それから路地裏も。

必死な彼女の長時間による捜索も虚しく、どこを捜しても彼の姿は見つからなかった。

「はぁ……、はっ、ごほっ、ごほっ!」

呼吸することさえ苦しくなったのか、初めのうちにあったはずの元気はすっかり無くなり、その容姿は普段の彼女からは想像も出来ないほどボロボロに

なっていた。

見ている側が思わず、顔をしかめてしまうくらい、あまりにも痛々しい。

幼い少女の疲労は心身共に、とっくに限界を超えていた。

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:43:37.32 ID:WAIchpNIO

「ふっ、うぅ……」

結局、彼を見つけられなかった打ち止めは彼の家の近くの公園へと戻ってくる。

フラフラと足を引きづり、目は虚ろで生気は無く、服は泥にまみれびしょびしょで、小さな体は芯まで冷え切っていた。

「っ!!」

両足がもつれ、地面に尻餅をつく。すぐに全身に力を込めて立ち上がろうとしたが、体が言うことを聞かなかった。

「ごほっ……、あ、はは。もう、限界なのかも、ってミサカはミサカは、自分の体力の無さを実感して、みたり……」

自分自身を馬鹿にするように笑ってやろうとしたが、笑う気力さえ残ってはいなかった。

そのままそこから動けずに座り込む。
雨は激しさを増し、冷え切った彼女の体を容赦なく襲った。

「結局、あの人のこと、見つけられなかった……、ってミサカは、ミサカは……」

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:46:33.37 ID:WAIchpNIO

彼女は暗示をかけるように自分自身へと言い聞かせる。

今日はたまたま彼が見つからなかっただけ。

きっと、待っていればあの人はちゃんと帰ってきてくれるはず。
ミサカが助けを呼べば必ず一目散に駆けつけてきてくれるはず。

……だけど。
もしも、あの人に二度と会えないとしたら。
もしも、あの夢が現実になったとしたら。

「嫌、だよ。このまま、お別れなんて。あなたに、二度と、会えない、なんて……。絶対に嫌だよ……」

そんなことを考えただけで、胸が張り裂けそうに痛い。

体中が悲鳴を上げ、視界は霞み、周りの音は聞こえなくなっていく。
周りの匂いも、雨が肌に触れる感触も、全ての感覚が体から消えていく。

「ねぇ。お願いだから、二度と会わないなんて、言わないで……。あなたの、言うこと、ちゃんと素直に聞くから……」

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:50:09.92 ID:WAIchpNIO

息が詰まる。胸が痛い。
呼吸も満足に出来ず、死さえ望んでしまいそうな苦しさだった。

「ミサカね、これからはうるさくしないよ……? ちゃんとあなたに言われた通り大人しくする。
嫌いな野菜も残さず食べるし、欲しい物だって我慢する。勉強も頑張るし、掃除だってちゃんとするよ? 
料理だって覚えるし、もうあなたの迷惑になるようなことは絶対しない。
あなたの言うこと全部聞くから。
ちゃ、んと……いい、子に、するから……。
だ、から、だからお願い…、ミサカを一人にしないで……。
どこにも行っちゃ嫌だよ…、お、願い…、お願いだからぁ……」

 それは雨の音にかき消されてしまうほど小さく、今にも途切れてしまいそうな儚い声。

しかし、その言葉には彼女の哀しいほどの望みが、切ないほどの願いが込められていた。

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:52:28.75 ID:WAIchpNIO

そしてふと考える。

……あの人はミサカをいつだって命がけで助けてくれたのに、ミサカはあの人に一体何をしてあげられただろう。

……ミサカがいなければ、あの人は能力を失うこともなく、傷付くことも無かったのかな。

そんな柄にもないことが次々と頭をよぎる。

「ああ、そっか、そうなんだ。きっと、これは罰なんだ。
ミサカがあの人に、何もしてあげられないから、神様が怒ってるんだね。
それなら、仕方ない、よね…。だって、悪いのは全部ミサカ。あの人は、何も悪くない…。だからミサカは、あの人には…、二度と……あ、えな」

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 01:58:05.67 ID:WAIchpNIO

やがて、打ち止めは壊れた人形のように崩れ落ちた。
頭は支えが無くなりうなだれ、両腕は力が抜けたように垂れ下がる。

そして絞り出すように一言。

「た、すけ…、て」

 それからは、もう何も感じなかった。何も気づかなかった。
体の震えが止まらないことも。
声が出なくなっていることも。
うるさいくらいの雨の音も。
泥臭い地面の匂いも。

目の前にいる人の存在さえ。

何一つとして、気づかなかった。

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 02:00:29.01 ID:WAIchpNIO

奇跡。

それは普通では起こりえないような出来事を指す言葉。
もし、そんな綺麗なものを本気で信じてる人がいるのなら笑い飛ばしてやりたい。

信じるだけ無駄だと。

それは、誰一人予想していない時にだけ突然やってくるものだから。

「……っ!」

 遠くから何かが聞こえたような気がした。
ついに幻聴まで聞こえるようになってしまったかとも考えたが、違う。

今でもはっきりと聞こえてくる誰かの、足音。

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 02:03:22.39 ID:WAIchpNIO

きっと、顔を上げてみればその音が誰のものかなんて簡単に分かるはず。
しかし、現在の打ち止めはそんな簡単なことすら叶わないほど衰弱していた。
どんなに頑張ってみても、ぐったりと俯いたままの顔を上げることが出来ない。

 足音は時間が経つに連れて段々と近づき、やがて彼女の前でピタリと止まる。

そして、何者かが彼女の肩を強く掴み、前後に体を優しく揺すった。

「おィ……」


・・・・後編へ続く