英語教育迫り来る破綻 ~江利川春雄先生編~ | 女王様のブログ

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ある女性教師の日常のこと,悩みや課題を率直に書いた,ぶっちゃけ話。

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七月一杯は授業があるため,

こちらに戻って来てからずっと忙しい毎日を過ごしているわたしなので,

一番最初に講演をしてくださった江利川先生が,10日後の今日になりました。



講演会が終わってからすぐ書くよりも,自分の頭で再度よく考えながら,自分の言葉で講演会を振り返ることができるから,わたしが感想を書くときは少し時が経ったものが多い。

江利川先生は,

グローバル企業の無謀な英語教育要求から子供を守るためにという題でお話をされた。


成長戦略に資するグローバル人材育成部会での提言の内容は,

(2013年4月8日 自民党教育再生実行本部)


「結果の平等主義から脱却し,トップを伸ばす戦略的人材育成」


① 大学受験資格および卒業要件として「TOEFUL等の一定以上の成績を求める。

  → 学習指導要領と整合せず二重基準で混乱:語彙は中高で三千語,TOEFULは一万語超も頻出


② 世界レベルの教育・研究を担う30程度の大学の卒業要件はTOEFUL iBT90点相当(これは英検の1級の資格と同じ程度

 → 英語に追われ専門研究が手薄になる。ノーベル物理学賞を受賞した益川先生のような英語が苦手な人が大学を卒業できない。


ちょっと見ずらいでしょうが,

以下はそれぞれの試験の語彙の難易度を示したもので,

学習指導要領で述べられている三千語のレベルは,英検2級が85パーセントが出題,

準1級になると65パーセント,TOEFULはわずか14パーセントの出題。

今のままでは到底対応,達成できるものでない。

しかも,

全国の高校生の約32パーセントしか高校3年時までに準2級を取得していない事実から,

ハードルが急に高くなり,まさしく英語の勉強のみに追われ,その他の専門教科を学ぶ時間が殺がれ,以前の高校にいた学生のような,日本だけでなく世界に通用するようなスポーツ選手を育成することが困難になる。そういう学生こそ,グローバルな日本が誇れる人材であるのに,むしろ国の政策がそれを潰してしまう。

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成長戦略に資するグローバル人材育成部会での提言の続きで,


③高校では全員がTOEFUL iBT45点(英検2級)等以上を達成。

 →大半が高校を卒業できなくなる。英検準2級程度の保持者は3割程度。

   江利川先生が述べられたことに付け足して,私はこの提言は,地域の多様性,高校の校種や生徒の多様性を全否定するものであり,今までの先人たちが苦労して積み上げた英知等を全て捨てさる愚行で恐ろしいものだと思った。日本語を使って充分文化的で知的な生活を送っている者を全否定しているようで,自己否定,自己卑下(日本文化の否定)も酷いし,日本語で表現している私たちの頭はそんなにバカで役に立たないのかよぉ~っと,言いたくなる。相当情けないし悔しい。夏目漱石も悔しがっているに違いない。

④英語教師の採用条件TOEFUL iBT80点(英検一級)程度以上。

  目標の英語力を達した教師の割合を都道府県ごとに公表。 

 →教師の力量=英語力+指導力+人間性。そのためには自主研修とゆとりが必要。国がやるべきは教育環境の整備。


⑥小学校教員志望学生の卒業要件にTOEFULを課す。

  →( *先生がなんとおっしゃったかは,皆さんの想像にお任せします。ちなみに相当呆れて激怒したお言葉でした。)

 

 このような中,安倍内閣の第2期教育復興基本計画(2013年6月14日閣議決定)が出される。

教育改革は英語ばかりがいじくられ,現場の声もむなしく,どこかで勝手に計画をされて急激にどんどん推し進められている感がある。全く大丈夫でない。

英語教育の早期化は強硬に推し進めておいて,教育予算の増額は見送り。

実際の学校現場は悲鳴を上げているのに,計画を立てる人間だけが無責任に発言して潤う。


TOEFULの試験はネットを通じて行うため,大学生が全員受けることとなれば,IT企業は儲かる。金額でいえば,約220億円が米国やIT企業に入るらしい。(こういう金に目がくらんで正しく導かねばならない人も一緒になってのっかるのが英語界のダメなところ)

お金が絡んでくるから,ミキティ(三木谷楽天社長)は声を大にして,若者,学生たちにTOEFULを課すことを強いているわけだ。それは全然今の若者のためでなく,むしろ言葉を奪って思考を麻痺し,企業や国の言いなりになる人間を社畜同然の人材を作るため。辞令ひとつで世界のどこにでも飛んでくれる使える人材を作るため,そして,日本語で反論できないように潰すためにしているのではないだろうか。 

ネゴーシエーション能力を育みたいなら,母語でものを考え表現し,言葉でケンカすることを学ばないと難しい。自然と発した感情を言葉で表現できる能力を潰しておいて,外国語である英語だけで『交渉』するなど無理。

終盤に差し掛かり,江利川先生が,

実際の調査データーを基に,「学校の職場は蟹工船」

と話された。


月80時間過労死ラインを超える残業:中学校 80%  高校 61%

月45時間健康破綻ライン:中学校 19% 高校 25%


・公立学校の病気休職者は,8,544人

・上記の休職者の中の精神疾患は5274人

  補給なしで兵6割を飢え死にさせた軍部と同じ


最後に英語教育に対する先生からの要望として,


①教育投資を増やす:OECD並みに 


②クラスサイズの削減:35人学級凍結で教育再生は出来ない。


③専任教員の増員による教師の「ゆとり」を


④ICTを含めた教育環境の充実


⑤英語一辺倒主義を脱し,周辺アジア諸国の言語を含む,複合言語主義。複文化主義へ


 いつも現場に入り,現場に耳を傾け話を聞いてくださる先生に感謝。

しかし,どうして英語教育者を育てる江利川先生以外の大学の先生がたは.このような大事な時に発言をしてくださらないのかしらと,私は感じている。

自らしなかったことをどうして他人には強いるのだろうか,

どうして日本語に置き換えて考えられないのかしらと,そうすれば相当滑稽なことをしていることに気付くはずなのに。


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英語のことに関して言えば,世間はいつも理性を失うと,

なんで人々は間違うのでしょうか。

それについては,拙ブログのバカの理由 を!