
かつて日本の、そこ此処には美しい風景が在りました
便利さ・快適さ と引き換えに、今はもう失われてしまった日本の原風景
残念ながら私が生まれた刻には、既に殆ど残されておらず
父や母、祖母に聞かされたものです。
(もっとも、その頃の私は日本の原風景になど興味を持っていませんでしたが)
そんな、古き良き日本の姿を求めて、徳島県の祖谷渓へ

上の写真は築三百年になろうかという茅葺き屋根の古民家
篪庵(ちいおり)と呼ばれています。
アレックス・カー氏(アメリカ人)が学生時代、日本をヒッチハイクで旅していた折、
訪れた祖谷には、当時失われつつあった日本の原風景が残されていたのだそうです。
祖谷に魅せられた彼は偶然見付けた廃屋を購入し、
自ら修復して移り住んだのは1973年の事でした。

古民家を移築した宿も、今では珍しくなくなりましたが、
篪庵の魅力は、それらとは一線を画きます。
それは、建物を便利な場所に移築したのではなく、
元々在った場所に拘ったという事
この場所にたどり着くには、カーナビの案内だけでは困難で、
案内人に先導されて狭い道を山深くまで分け入る必要に迫られます。
それでも車で辿り着けるのは、昔より便利になったという事なのでしょうが、
引き換えに失われた物も有った筈です。
辿り着いた其処は、現在においても下界とは別世界でした。
かつては、今より比べようも無く不便だった事でしょう。
そして過酷で美しい自然に抱かれた、日本人の暮らしが確かに息づいていたのです。
そんな日本の原風景の名残を体感出来る、今となっては貴重な場所
それが祖谷の篪庵なのではないでしょうか
篪庵の屋内では、かつての面影を残しつつ、アレックス・カー氏によるアレンジも見られます。
古き良き日本を愛するアメリカ人の感性と、日本の伝統がミックスされた不思議な空間が、
不思議と心地良さを誘うと共に、この場所を見付け残そうとしたのが
日本人ではなく、アメリカ(外国)人であった事が悔しくもあり、
何とも複雑な気持の、庵でのひと時でした。
残念ながら今回は休憩しただけでしたが、篪庵は宿泊も可能です。
セルフサービスが基本の素泊まりで、ホテルや旅館のようなサービスは受けられませんが、
その方がかえって祖谷の自然を、より身近に感じる事が出来るのではないでしょうか。
満天の星空の下、風にそよぐ木々の音を枕に眠り、
翌朝目覚めると、足元を雲がたなびく…そんな仙人のような壱日を体験出来る事でしょう。
必ず再訪するぞ
と誓って庵を後にしたのでした。
アレックス・カー氏の著書「美しき日本の残像」のコンセプトはこちら
当記事のタイトル「国栄えて山河無し」は、こちらからお借りしました。
(祖谷の宿泊リポートはFC2支店にて改めて紹介予定です)