ある雨の夜、
傘を持っていなかった私は、
雨宿りがてら夕飯を食べるために
銀座コアに駆け込んだ。

私が選んだお店は、みなさんお馴染みの
『つばめグリル』。
席に着くと白髪の男性が軽やかな足並みで近づいてきた。
「お寒い中、ようこそお越しくださいました。
」
物腰と言い、雰囲気といい、なんとなく執事っぽくて品がある。

「(ご丁寧に)ありがとうございます。
」
さっきまで凍りついていた息を吐きながら答えた。
ジャーマンハンブルグステーキを注文し、
食事が出てくるまで、店内を観察する。
さっきの白髪の男性が若い店員さんに小声で指示を出している。
「〇〇テーブルはレディファーストでお出ししてね。
」
他の店員とは明らかに雰囲気が違う。
店内にいる全てのお客さんに目を配っているのが、
その動きから分かる。

ジャーマンハンブルグステーキがテーブルに運ばれてきた。
「鉄板が熱いのでお気をつけください。」
女性の店員さんにそう言われた後、
ナイフとフォークを手にすると、再び白髪の男性が近づいてきた。
「これね。私的食べ方お教えしますね。
まず、半熟の卵の黄身の部分をハンバーグで潰すように裏返してみて。」
言われるままに卵を裏返す。
なんだかワクワクしてきた。
「その黄身をハンバーグにまんべんなく塗りつけて。
で、上からソースを全部かける。
」
しなやかな手つきでソースの器を持ち上げ、
ハンバーグにかけてくれた。
「完璧です。
これで約1分間待ってからお召し上がりください。」
にっこりと笑い、去っていった。

なんだか素敵な事が起こる前のような気持ちで、
心の中で60数える。


ナイフを卵とハンバーグに入れる、
フォークでゆっくり口に運ぶと、
いままで『つばめグリル』では味わったことが無いような、
まろやかな肉の旨みが広がる。

黄身を塗ったことで、味に深みとまろやかさが
加わった。

1分待つことで、黄身がハンバーグの味に馴染むという具合だ。
そして熱い鉄板でソースが程よくコゲ、
かすかな苦味を感じる。

『つばめグリル』の接客は、いつも良いんだけど、
この白髪の方は格別。
料理そのものの味は絶対的な条件として、
一緒に食べる人、
その店の雰囲気で料理の味は何倍も美味しくなるもの。
それに「完璧な接客」が加われば、
料理の味は、また特別なものになる。

お馴染みの『つばめグリル』で
高級なリストランテに来たような気分になれたんだもん。
素晴らしいよね。

レジで、他の店員さんに
白髪の男性の方はどういう方なのか尋ねてみた。
どうやら他の店舗や大きな店舗にいた方で、
いまだけ銀座コア店に居るらしい。
その後、ご本人とお話をすると
「あれは・・・私的、食べ方なんですよ(微笑)。
当分ここに居るので、またいらして下さいね。
」
またもや品良く答えてくれた。
このお馴染みの店でこの接客受けるべし!
つばめグリル
http://www.tsubame-grill.co.jp/