空へのあこがれ

フライトトレーニング　グランドスクール②-２

１．航空力学・飛行機の構造（主翼の構造、断面含む）、飛行機が飛ぶ原理などの知識

飛行機の主翼と重心位置については、前回述べた

https://ameblo.jp/inakano-otto/entry-12829854900.html

『空へのあこがれ（その21）座学②-1』空へのあこがれフライトトレーニング　グランドスクール②-1 飛行機の運転をしようと思うと、先ずは、飛行機とその運行に関係する全ての知識を身につけている必…

ameblo.jp

次は、飛行機についている操縦計器についての知識を整理する．

飛行機は、風の流れによって揚力を発生しているので、「風に対して、どのくらいの速度で飛んでいるのか？（True Air Speed：TAS）」が、非常に重要な情報となる．

飛行機で言うところの速度とは、周りの風に対する速度（Air Speed）を指す．

速度計（Air speed indicator）：

　飛行機についている速度計は、翼下や（旅客機などでは）機首部分に取り付けられているピトー管という装置で、進行正面からの風の圧力を検出し、一方、その圧力を受けない気圧（静圧）を（胴体側面に取り付けられている）静圧口から検出し、両者の差から速度を計測するように作られている。

静圧口は、胴体側面部についているとても小さな穴（直径１mm程度）なので、万が一、何らかの理由（着氷、雨水、など？）で塞がった場合を想定して、操縦席内（キャビン内）の圧力（静圧）も使えるように切り替えバルブが取り付けてある。

ピトー管は、内部が凍らないように、強力なヒーターがつけてあり、ピトー管内の凍結による速度計測不能を防いでいる．

（20年位前に公開された、娯楽映画の「ハッピーフライト」では、このピトー管トラブルが描かれているが、B747には、ピトー管が機首部に４つも取り付けられている事が説明されている）

ピトー管と静圧口により得られた気圧差の値は、操縦席にある計器盤上の速度計に表示される．

これを「計器指示大気速度(Indicated Air Speed：IAS)」と呼ぶ．

計器指示大気速度は、通常はノット（海里：Knot）単位なので、操縦席で読み取れる速度は KIAS（単位: Knot Indicated Air Speed）として表現される．

空気は、気圧や気温により、その密度を変化させるため、ピトー管の圧力や、静圧口で得られた気圧差により得られた速度（IAS）は、実際の翼の表面を流れている空気の速さ（TAS）とは違ってきてしまう．

計器指示対気速度を、気圧（高度やその時の大気圧）や気温で補正し、真の大気速度に計算しなおしたものがTrue Air Speed（TAS）と呼ぶ．

通常、操縦席においては、パイロットはIASの情報しか得られ（見え）ない．

しかし、翼が作る浮力（揚力）はTASに基づいて生じているので、TASを念頭に考えておくことは大切な事となる．

小型機などに積まれているアナログ式の速度計には、（高級なものだと）、その時の気温（外気温）による空気の膨張率を補正できるように、気温設定のノブとメモリが付いているものがある（掲載写真の速度計．ノブは右下．温度を合わせるのは、中央の上側にある白ぽい窓内．これによって速度計の下の部分（白い部分）が動き、計器指示速度のメモリがズレることで、温度の補正ができる）．

温度や圧力により物理性質が変わる空気を相手にしているので、飛行機の計器は何を計測しているのか？どうやると誤差が生じるのか？を理解しておかないと、思わぬ間違いを起こしてしまう．

速度計の説明：

ホワイトアーク：フラップを最大に展開しても良い速度域（〜104KIAS 以下）

グリーンアーク：通常のオペレーションで使って良い速度範囲（50〜132KIAS）

イエローアーク：気流が安定している時にのみ使って良い速度範囲（132〜157KIAS）

赤チック：絶対に超えてはならない速度（物理的に飛行機が壊れてしまうという物理的限界速度）（158KIAS）

空気の密度は、一定ではなく、バブル状に密度の違う場所があるため、イエローアーク内を飛んでいても、場所によって数十ノットの速度の違いが生じるので、容易に赤チックを超えてしまう可能性があるため、実際には、グリーンアーク内での運用が望ましいとされている．

空へのあこがれ（その22）座学②-2