空へのあこがれ

フライトトレーニング　グランドスクール②-1

飛行機の運転をしようと思うと、先ずは、飛行機とその運行に関係する全ての知識を身につけている必要がある。

１．航空力学・飛行機の構造（主翼の構造、断面含む）、飛行機が飛ぶ原理などの知識

私は、小学校のころから紙飛行機から始まり、ゴム動力飛行機、エンジン付きの大型の模型飛行機（Uコン）などを作って飛ばしてきた経験があった．

なので、主翼が揚力を生み出す原理、翼の断面の形状等に関する知識は、小学生の頃からの（Uコン技術やラジコン技術などで）勉強済みだったし、主翼の断面形の考え方、コードライン（翼の断面の上下の平均値を繋いだ線）、迎角（Angle of attack：コードラインが、前方からの風に対しての角度）、失速（翼面からの風の流れの剥離）の原理・現象、翼によって揚力がどのように得られるかについての一般的な知識も小学生〜中学生の頃に趣味の中でおおよそ勉強してあったので、ジェファソンの飛行機操縦の教科書を読んでも、特に目新しい事柄はなかった．

翼に関しては、その翼の断面の中心線（コードライン）が、翼に当たる風の向きとの角度（Angle of attack）の制御が非常に重要で、これによって揚力が変化する．

これを制御するための構造が、飛行機本体の構造の全てと言っても過言ではない．

（つまり、翼に適切な風を当て続けるのを実現するための構造が、飛行機の構造の本質ということ）

尾翼類は飛行機の姿勢を制御するために付いている

（100年前のライト兄弟の飛行機（フライヤー号）は、垂直尾翼を機体後部に、水平尾翼を機首部分に配置した形だった．飛行機の発達と共に、それらが後部にまとめられるものが多くなった）．

これらの補助の翼と主翼とを物理的に接続している構造が胴体となる．

主翼は、飛行機の全重量を支え、空中に浮かせる役割をしている（この力が作用している点を揚力点という）．

つまり、『翼が飛行機全体を釣り上げている』ため、翼の力点に飛行機全体の重量がかかっている．

一方、重力によって決まってくる飛行機の重量については、飛行機全体の重量が掛かる点を（点として仮定し）重心と呼ぶ（重心では、その前部分と後ろ部分の重さが釣り合った状態となっている）．

重心は、飛行機が姿勢を変える時の回転軸（ビボット）の位置となる．重心位置と翼の揚力点が一致していると、飛行機の姿勢の制御はとても安定して行うことが出来る．

もし、重心位置が主翼の揚力点よりも前方にあると、尾翼による姿勢制御の量が増えるため、飛行機の姿勢変化を起こしにくくなる．つまり、舵の効きがわるくなる．

実際には、重心位置が前方にありすぎると、「舵（水平尾翼）の効き」が著しく悪くなり、操縦が困難となってしまう．しかも、その操作に大きな力が必要となる．

重心位置が、規定の位置よりも後方にあると、

少ない舵角で飛行機の姿勢が容易に変わる為、舵の効きが強くなりすぎて、逆に、操縦が困難となってしまう。

以前、八尾空港では、４人乗りのムーニー（単発の高速の飛行機）が、重心位置が後ろすぎて、制御不能となり、着陸時に失速となり墜落している．

このため、

飛行機を飛ばす前には、飛行機の重心位置が、（設計上の）適正な範囲内にあるかどうかを必ず計算する．

それが、Waight and Barance の計算と呼ばれるものだ．

重心位置の計算は、

　飛行機本体の重心位置（燃料なし、エンジンは掛かる状態での重心位置）を基準として、そこに、積載物の重さと積載位置から重量の中心位置を決め、飛行機の重心位置から積載位置までの距離（アーム）と積載重量（ウェイト）を掛け算し（モーメント）、其々を足し合わせて計算する．

下のような表をうめるようにして、計算すると間違いが起きにくく、計算結果がスムーズに得られるので、よく使われている．

最上段：　飛行機の重さ、重心位置の数値（整備書の一ページ目に記載されている）を入力する．

　この値は、飛行機毎に違うので、定期検査の時に、それぞれの飛行機の数値が確かめられている．

二段目：　前席（パイロット、副操縦士席）に搭乗する人の重さ（ポンド単位）を入力、その値に80.5を掛けた結果を右欄（Moment)に記入する．

三段目：　後ろ席（客席）に搭乗する人の重量、或いは、客席に置く荷物の重量を記入．それに118.1を掛けた結果を→欄に記入．

四段目：　搭載する燃料の量（48USガロン≒182L）を記入し、それに142.8を掛けた結果を右欄に記入

５段目、荷物室に搭載する荷物の重さを記入

６段目、出発する時の、重さの合計を記入

７段目、燃料の減り分の計算（ランプでエンジンをかけ、ランナップ、タクシーなど、離陸前に消費する燃料分）

８段目、離陸時の総重量を計算（離陸可能重量以下であるかを確かめるため）　と総モーメントを計算

最後に、総モーメントを総重量でわると、重心位置が計算される．

（この計算での単位は、インチとポンドで計算する）

＜実際に数値を入れた例がPOHに示されている＞

こんな感じで計算される．

CGは、91.5インチとなり、総重量が、2550ポンドと分かり、この値は、下のグラフの上淵、中央やや右にプロットされるので、飛行可能範囲と判る．

この作業は、小型機でも、グライダーでも、旅客機でも行っている．

（大型機では）それによって、荷物を積む位置を変えている．

飛行機の整備書には、必ず、最新の重心位置と、（構造から計算された）主翼が制御可能な重心許容範囲を示した図が掲載されている．

定期検査で、重心位置を計算する方法は、POHに記載されている（PA-28-181の場合には下値を計測する）

その情報を元に、フライト毎に重量（操縦員、お客、荷物、燃料等々）のデータを入力し、上の表を使って重心位置の移動量を計算する．

計算された結果が、飛行可能な範囲にあるかどうかは、メーカーが（予めテストして安全範囲を決めている）表を参照して確認をする

この表の横軸は、計算より求めた重心位置の移動量（単位はインチ）

縦軸は、離陸時の重量（単位はポンド）

計算した結果が、このグラフの内側に入っていれば、安全に操縦できる範囲内であると判断できる．

この表を見ると分ることは、飛行機の重量が小さければ、重心位置の移動の許容値が大きいことだ。

このPA-28-181では、基本的に2100ポンド以下で使うのが良いということが判る．

空へのあこがれ（その21）座学②-1