暴走族からの旅立ち…僕たちと警察の交流サッカー | クソイナカ…周囲はほとんど既知害ばかり

暴走族からの旅立ち…僕たちと警察の交流サッカー

「いいか?安直だけどいいのかなーとか内心思ってんじゃねえぞ?こういう安直さが受けるんだよ、わーってんだろ?」一気にまくし立てる長井、覇気のなさだけでなく、反面反論を許さない、といった相反する雰囲気を漂わせて説明してくれた。「新企画・・・ですよね・・・各自地域での常識ではあるが、でもほかの地域ではやってないだろうな、っていうようなのを取り上げてみる・・・」どっかで見たような、っていうかもろパクリ題材、しかしこれまで「すばらしき田舎」での新企画なんて似たようなもので、本当にどっかのテレビ番組の企画をパクっただけ。でもこういうのが受けるんだ、ていうかこの程度でいいんだ、と僕もようやく理解しだした。

「インパクトなさそうだったら、適当にでしゃばりそうなやつ、名士様だぞ、わかってんな?に『もっとみんながびっくりするようなのないですかねー』っていえばよ、絶対にありえねーっていうようなまねてくれっからさ、まあそのあたり任せるわ」

新企画「こっちの住民ショー」が定着しだして、地方のでしゃばりがありもしない常識をでっち上げだして、『うちにも取材に来てくださいよ』なんてはがきががんがんと来るようになった。

「うちの子供会のみんなはいい子ばっかり、だから早朝ラジオ体操でがんばってるんですよ」「うちの婦人部バレーボールクラブは元気抜群!」「うちの青年部のリーダーは、昔不良で手のつけられないワルで、今では更正して子ども会のみんなに好かれている」…はがきが大量に来るが、こういうのを出してくるところには住みたくない、という実感を抱いてしまった。なんでいちいち「みんなが」なんてのをまず第一に出して、はい仲がいいんですよ?ってのをアピールするんだろ?はがきの100枚中99枚はほとんどクズだ。採用するに値しない。でもたまーに取材する価値ありかな?というようなのもあったりして、って馬鹿みたいでインパクトがあるだけだけど。

暴走族の子供たちが、これからは暴走族なんてやらない、解散するから、っていうんで警察のかたがたとサッカーをするんですよ」ひでー、ていうか警察何やってんだよ?なんでこんなのが「うちの常識」ですよ、なんてテレビで放送できるんだよ?地域全員がDQNかなんかなんだろうか?全員が金髪で、全員の前歯が溶けてて、全員がジャージ着てて、全員が気宇壮大な名前?長井さんにはがきを見せると「お!おめえわかってんじゃねえかよ?」と満面の笑みをたたえて僕をほめてくれた。「警察もどうせ喜んで取材に応じてくれるだろうしよ・・・もしかしたら教育委員会さまさまも、きょうりょくしてくれっかもなあ?」・・・「どうせ喜んで」?日本語としておかしかったりするが、でも長井さんのいいたいことはわかるような気がした。

「けどよ、毎年ゾクの引退っつうんで、地域からは容認されてるわけだよ、でもって引退後はブスなカミサンもらって子供生んで、でもっていい人あつかいだろ?一生すみたくねえよな・・っていうかよ、クソイナカじゃゾクってのは青年団みたいなもんでよ、引退式は卒業式みたいなもんなわけよ。でもってVIPカーチームに移行する、っていうのが定番だわ。そういう連中ってのが、まあ対外18までにカミさん見つけられなかった連中。まあ早すぎる婚活、って言うかな?」長井さんは東京の足立区の生まれで、瞬間ゾクとか詳しそうだなー、って。でもって「おめえ、足立っつうんでゾクが多そうだ、って思ったろ・・間違っちゃねえよ、でもおれ中学から越境して千葉行ってたからな、まあそゆこと」荒れた中学時代、手分けじゃなかったんだ、って。

「けどよ、地元の諸木連合っつう暴走族?毎年一人か二人死ぬんだよな、さしたり刺されたり、っていうんで、でもさ・・・連中からすれば刺される瞬間、おれってかっこいい!っておもいながら脳汁ブピブピ出しながら幸せに死ぬのかなー?って。でもあいつら生きてる限り、そういうかっこいいなー俺って、っていう瞬間もないだろ?ゾク以外に・・・」ひでーな、と思いながら。「でもよ、暴走族と警察の交流サッカーなんてもんやってるとこよりゃ、ずっとましだぜー。あいつら俺たちの生活に干渉してこねえもん。諸木連合のトップクラスから獄東会幕山連合会にいくってのは、まあ地元じゃ常識でよ、その限りにおいて、俺たちにかかわりねえわけよ・・・まあアウトローと堅気に超えられねえ高い壁があって、うざい連中とのかかわりもなく生きていけるんだ、ってことよ・・でもイナカじゃあよ、元ゾクが『いい人』面さげてんだろ?俺たちは不良だったけど、ひととして間違ってなかったとか・・馬鹿じゃねえの?ついでにそんな連中とかかわりたくねえよ。まだゾクが抗争で死ぬほうがいいね、っていうかストレスねえよ」


以降続くよ。