~鎮守府 提督執務室~

 

「誰のチョコが一番美味いか選手権?」

演習報告書と共に提出された申請書に俺は首を傾げた。

「これはアレか。イベント的な?」

「はいっ。えっと、もしかしてダメですか?」

「いやダメじゃないが・・・・・・」

「なにか?」

「阿武隈、これって俺が貰う側なんだよな?」

「ほかに男の人はいませんよ?」

「あぁ・・・・・・うん。そうだな」

いや工廠のおっちゃんとかいるだろ。

「やっぱりダメですか?」

「この優勝賞品の『一日提督レンタル権』ってナニ」

「金剛さんの発案です。あ、“奥様”の許可はもらってます」

「それは良いんだけどさ――ほれ」

いろいろツッコミたいがとりあえず申請書に決裁印を押す。てか由良の事を“奥様”って、あえてその言い方したな。

「ハンコ押したから、あとは好きにして構わん。必要な材料は主計班に一括で入れてもらえ」

「いいんですか?」

「そっちの方がいいだろ。あ、くれぐれも業務に支障が出ない範囲でしてくれよ」

「はいっ。ありがとうございます!それじゃ失礼しますっ」

申請書を受け取る阿武隈は笑顔で執務室を出ていく。彼女に限らずああいう笑顔を見るたびにイベントは出来るだけするべきだと思う。それに、何より俺自身がこういったイベントが好きなのだ。

それにしても――

「誰のチョコが一番美味いか決めるなんて、優勝者はすでに決まってるんだけどなぁ」

阿武隈たちには申し訳ないが「誰のチョコが一番美味いか選手権」、優勝者はすでに決まってる。

 

 

                                                つづく