私は、この作品に何を期待していたのだろう。

「テンポ良く進むストーリー」?
「号泣もののエピソード」?
「ハラハラドキドキの展開」?
「大掛かりな演出」?

わかりやすいヤマとオチ」……。






……原作を、友人に借りて一度読みました。
独特の世界観を持っている作品だと感じました。
オムニバスで、時系列に並んでいないストーリーは、かえって「バンパネラ」という種族の不変や孤独を際立たせているのだろうと、感じました。

ただ、あまりにも淡々と運ぶ展開に、感動し損ねた感を覚えつつ読了しました。


作・演のイケコ(小池修一郎先生)の前作は、月組の「All for One」でした。
痛快アクションコメディ」らしく、ワクワクドキドキするとてもスピーディーな展開かつ、大胆な脚色(設定)で何度見ても飽きることなく楽しめました。

そのイケコが、30年切望してきたこの「ポーの一族」の作・演。
そりゃ、どんなどえらい仕掛けで演出するのか膨らみまくった期待で、私の足は10cm程浮いてました(笑)


当日券に並んでいる間も、友人(ヅカファンビギナー)と過去のイケコの作品の話で盛り上がってました。




ので。
見誤っていたんです。
イケコが、どれだけこの作品を愛し、リスペクトし、大切に思っているかを……。

それはもぉ、自分のウリを消してまでも、作品に沿った演出をしなくてはならないと思った(だろう)程に。


正直に言います。
この作品の演出に関しては、イケコ……30年時が戻ったような印象を受けました。や、30年前のイケコでもこんな演出したかなぁ?

イケコらしくない暗転の数、中割幕の多用、セットや吊りものの出ハケのタイミングの悪さ、使いこなしているとは言い難い盆やホリゾント……(その割に「この演出どっかで見た事あるぞ」的な物も多かった)……。

そしてなにより、ヤマの(場所がわから)ない脚本……。

どぉしちゃったの?イケコ?!
本気でそう思いましたううっ...


1幕の幕が降りる時、(別の意味で)ハラハラして手汗握っていたイナバでした。

が……。


2幕になって、この作品の制作意図(イケコ的な←あくまでも私がそう思ったもの)は、なんぞやと考えた訳です。

それは、神が与えたもうた奇跡のエドガー役者、明日海りおを得て、原作の世界観を忠実に……己の個性を加味することなく……全く忠実に3次元の世界に、構築することなのだと。


そう。
あの美しくも排他的で、尚且つ詩的で叙情的な「ポーの一族」という作品に、「テンポ良く進むストーリー」も「号泣もののエピソード」も「ハラハラドキドキの展開」も「大掛かりな演出」もいらないのです。

それこそ、私が乗り損ねた「淡々と運ぶ展開」が必要だったのです。



そう考えると……。

美しかった……。その一言に尽きます。
美しくも排他的で、尚且つ詩的で叙情的に……。


みりお(明日海りお)の美しさ、儚さ、少年らしさ……時折見せる分別臭い大人感……、全てがエドガーでした。
それはもぉ、怖いくらいに泣き1

ゆきちゃん(仙名彩世)のポーツネル男爵夫人は、美しく聡明で、主人公の少年が密かに憧れるに値する女性でした。そして、歌がやっぱり上手くて……説明セリフのあの歌、聞き取れなかったら悲惨だったろうなと、思います(笑)

アランの柚カレー(柚香光)も、まるで絵から抜け出た様で。なんとも目も当てられない位アレな設定で、同情通り越して若干引きましたが(笑)
元々少年役が合うキャラではないと思いますが、似合ってましたね。
特に、塔の場面は美しかった。めっちゃお耽美で!
こういう系(察してっ!)は全然興味ないんですけど、ドキドキする美しさは理解出来ますてれ(苦笑)(本当は女性な役者が少年を演じているのを見て、ソレを理解したというのは一寸違うかもですけど)


他キャストも良かった。
特にあきら(瀬戸かずや)最高!オジサマ素敵すぎハート②

ちなつちゃん(鳳月杏)、なにこのゲス医者!サイテー!でも素敵(笑)

華ちゃん(華優希)のメリーベルの、たまらん愛らしさ!私が妹に欲しい!



でも、一番素敵と感じたのは、さおたさん(高翔みず希)の老ハンナです。
なんて品のあるおばあちゃん……。でも、若々しい(色っぽいとかいう意味ではなく)。優しくて強くて、長く生きていた事に説得力があって(そういう意味では、ヒロさん(一樹千尋)もさすが、安定の演技!)
そして、彼女が消失する演出が、今回「さすがイケコっ!」と唸った唯一最大の場面でした。
素晴らしかった(演出も、役者も)。

消失する場面、全部演出違ってたのが面白かったです。
でも、メリーベルが消える時、老ハンナが迎えに来てさっとお姫様抱っこして連れていった時は、ごめんなさい笑っちゃいました(笑)だって、さおたさん男前(笑)

笑っちゃったといえば、あのクレーンもアレでしたね。「それ、いる?」ってツッコまずにはいられない状況でした。笑いこらえるのに必死でしたわ。



ま、とにかく。
今回の作品は、しっとりしみじみ味わうものだったんだなと……。
そう感じました。


そうそう、ラストシーンがトップコンビではなく、トップと2番手だったので、イケコのド定番「フィナーレのトップバッターは、2番手さんの下手(シモテ)スッポン登場」が、トップ娘役スッポン登場+別格スター2人になってました。
これもある意味びっくりでした。
そして、この三人並びの美しさと格好よさに仰け反りました(笑)

あ、フィナーレナンバーでは、マイティー(水美舞斗)に釘付けでした(笑)



結果、「もっかい観た方が良かったかな?」と感じた作品でした。

気軽に観たが為に、身体(脳)に入ってこなかった物もあったと思うので。
回数観て「ゆうるりと」身体(脳)に染み込んで来るのを理解しないと……と感じました。