なんというか……。
上くみ(上田久美子)先生の作品の事を書こうと思うと、自分の語彙力のなさと文才(というかセンス?)の無さに愕然とするのですけれど……。
昔、宮沢賢治の作品に触れた時の、なんともいえない感動を思い出します。


ので。
この感動をどう書いていいやら……なのですが(笑)

ひとつ、大きな声で言えることは今までのロシア物とは、一線を画す大変美しい、清冽な「人間ドラマ」でした!ということです。
恋愛ものではあるけれど、それより人間ドラマだったなと、感じました。

……ロシア物……だって苦手なんですもの……。
「重い雪」と「明けない夜」が背中にのしかかってくる感じがするから(笑)
「陰鬱」ってこういう事を言うんだわとか、思いながら見たり読んだりしていたんですけど(唯一雪組の「カラマーゾフの兄弟」は、そう思いながらも楽しめましたけどねー)、今回、そんな事カケラも思いませんでした。
もぉ、ただただ美しい……。


決しておとぎ話ではない、ハードな事もあるのだけれど……それすらも美しい……(笑)

ここまできっちりとした脚本持ってこられたら、演者はある意味楽だろうし、大変だろうなぁと、一寸同情しそうになりました(笑)

キャラクターが、これだけ筋の通った生き方してくれたら、キャラ(性格)とか感情の流れとか、役作りの上でとても大切なボーンを作りやすい。そのままなんだから(笑)間埋めるだけでいいから(某大御所のなんか、自分を言いくるめる理論武装しないと役として板(舞台)に立てないものねぇ)。
だけど、脚本家の……や、演出家の求めている物が深すぎて、表現するのは苦労するだろうなぁと、思います。



それにしても、この作品……伶美うらら嬢なくしてはなり得なかったですね。
彼女の美しさと気高さがあればこそ、成立する作品だったと思いました。

あ、もちろん、色濃いお役を体当たりで演じた愛ちゃん(愛月ひかる)の怪演も、忘れてはいけませんが……。


前にトップ娘役不在だった、月組のあさこちゃん(瀬奈じゅん)のサヨナラ公演は、「男同士の友情」全面で、ヒロインらしきキャラいませんでしたが……。
今回は、ヒロインはちゃんといて、しっかり恋愛していましたけど(あの、抑えた恋情ってのが、上くみ先生の真骨頂ですよね!)、どちらかというと、2人の悲しくも美しい恋を縦糸に、ロマノフの黄昏を横糸にしたストーリーで。
あさこちゃん時と同じく、ある意味サヨナラ色の薄い作品だと思いました。
や、かえってそれがよかった。
余計な事考えずに、作品に集中出来たから。




ロマノフが滅びるのは事実だから、そのオチというか最後は分かってるのに、彼らの思いとか生き方を見ていると、どうにか阻止出来なかったのかとか歯がゆい思いを持ってしまった。

上くみ先生が、「何を成し遂げるかではなく、どう生きるかが問題だ。」とご挨拶に書いておられるように、キャラクターそれぞれの生き方がとても粒立って感じられた(ロマノフの人々も、貴族たちも、民衆もジプシーも)。
だからこそ、歯がゆかった。
みんな一生懸命で、みんなそれぞれの思いのために生きていた。
のに。あんな最期を迎える……。

歴史って無情だなぁと。

一番無情だと感じたのは、オリガが母アレクサンドラ皇后の説得に失敗した所で。
きっとこの子は、新しい考えを持ってロマノフを立て直せるぞという印象だったのに、母の愛の前に折れた時、「あ、諦めよった」とがっかりしたんです(笑)
……仕方ない。ここでオリガが諦めなかったら、歴史変わるし(笑)
同時に「母って凄いなぁ」とも思いました。
どう考えたって、この母おかしいじゃないですか。なのに、きっと「おかしい」と感じているはずのオリガですら「お母様が守ってあげます!」と言い切る母の愛情に折れたのだから。
母として、子供に向ける言動には十分注意せねばと思った次第……(笑)



友人に「え?そこ?」と笑われたんだけど、ラスト近くの場面で、革命が起きてアメリカに亡命したマリア皇太后が、故郷ロシアへの思いを口にした時……一番泣きました。
「あの大地に帰りたい」みたいな……。
この作品の一番根幹をなす思いだと思いました。
そんな重要なセリフをおすし(寿つかさ)に言わせるなんて……上くみ先生素晴らしい……。と。
神々の土地……ロマノフの、ロシアの人々が生まれ生きて死んでいく、厳しく雄大で美しい土地。
離れていても、魂はそこに戻る……みたいな。
一度しか観てないので、ニュアンスだけなんですが、そんな風に受け取れました。

望郷の念って「土地」に対する思いなんだなと。




後、観ていて思った事ではないのですが、プログラムの香盤表の場面の所に(  )で年代や季節が指示されていているのですけど、そこにざっくり時間(とか天気)の指示も書かれていて!
好きです!てか、演者だけでなく照明プランとか立てやすい指示だ!と嬉しくなりました。
……台本欲しさに、ルサンク買うかも……と思いました(笑)





取り留めない、結局何が言いたいのかわからない長文読んで下さってありがとうございました。

本当に……素晴らしい作品でした。
……これ↑しか書けてないですが……。


一寸ロシアに興味持てましたし(笑)
観られてよかったです。