ご注意:宙組「shakespeare」の、ちょっとネタバレ、かなり長文です。













私がシェイクスピアの脚本を最初に読んだのは、小学生の時。家に何故か戯曲集があって、多分、今回コメントを寄せておられる小田島先生の訳の、ロミジュリでした。
さすがに子供すぎてほとんどわからなかったのですか、何故かドハマりして、クラスのレクリエーションで短い劇をやった覚えがあります。

そう言えば、「演じること」「演出すること」に興味を持った最初だったかもしれません。

だからかどうかわかりませんが、今でもシェイクスピア作品はとても好きです。

だけど…。
今回気付いたのですが。シェイクスピアがどんな人か、どういう時にどの作品を書いたのか、どんな人生を歩んだのか…歴史上の人物なのに、全然思い至らなかった…というか、調べようともしてなかった事に、びっくりしています。
そして、その様な作品がほぼ見当たらないってことも。

ので、今回の「シェイクスピア」は、イギリス物が得意(と、私は勝手に思っている)生田先生の作品だからというだけでなく、史実通りではないとはいえ、彼自身が主人公という事に期待を持って観ました。

幕開きから、生田先生らしい演出で。
当て物(上下端の、背景等が書かれているセット)と、中割幕みたいに動くパネルには、シェイクスピアの代表作である戯曲の、冒頭部分が書かれていて(ロミジュリと、ハムレットと、夏の夜の夢と、マクベス…だったかな。しかわからなかったけど)、否応なしにわくわくする。

ほうほう、シェイクスピアの芝居がウケた時代は、みんな豊かで芸術にも関心が持てるほど余裕のあった訳ではなく、生きるのに一生懸命で、色んな不安や不満が充満してて、うさを晴らしに芝居観に行くと…そんな時代だったのね。
と、時代背景さらっと出す辺り。

コメントでも生田先生、書いてらしたけど、「ひょっとしたら」「いや、もしかしたら」「こうであった」かもしれないシェイクスピアの半生に、巧みに戯曲絡めて。

なかなか面白いなぁ。

妻との出会いが「ロミジュリ」で、政権を握るべく国民を扇動するために作り(作らされた)、名声と地位を欲しいままにしたのが、「ハムレット」で「リチャード二世」で「マクベス」で「ジュリアス・シーザー」で、「夏の夜の夢」たちで。
妻とのすれ違いから和解までが「冬物語」と。

巧くつなげたなぁと。
見ていて本当にワクワクした。

劇中劇で、スピーディーにポイントだけやって、「あぁ、(この物語の中の)現実では、こういう事が起こってるのね」と思わせるとことか、劇中劇と現実がうまいこと絡んでるとことか、本当に面白かった。

今回は7作品だけだったけど、から騒ぎとか、十二夜とか、テンペストとか入ったらどうなるのかしらとか、ふっと考えてしまった(笑)
膨らむわ。想像がニヤリ


そして、まだストラットフォードにいた若きシェイクスピアが、羊皮紙に木炭のペンで文を書いたり、ロンドンに来てから羽根ペンで書いていた時のガリガリって音が、やけにリアルだったり、
劇団の女役のお衣装の下着にパット付いてるなんて凝っていたり、
彼が使っていたデスクが透明で暗示的だったり、
場転とセット移動がスムーズで格好よかったり、
ジョージとベスの場面の、紗幕に映る照明が絵的だったり、
銀橋を照らす本舞台前ツラの照明が、絶妙なタイミングでムービングしてきたり、
ショックな事があって脚本書けなくなったり、
ラストの「言の葉」が、煙みたいであんまし良くないなぁと思っていたら、幹が現れて文字どおり言葉の「葉」になっていたり。
…いちいち好きな拘りが散りばめられていて…。
楽しいったらない。
新公、本公合わせて2回しか観てないから、もっと拘りがあるのかもだけど。

拘りといえば、せーこが男役で、本当にショートヘアーになってたのにはびっくりした。
せーこにしか出来ないお役だよね、もうけ役だな。


生田先生は、「冬物語」が一番お好きらしい。
私はあんまし好きではなかったのだけど(疑り深い男は嫌いよ・笑)、今回、ちょっと好きな気持ちがわかった。
ポリクシニーズ役のリチャードに感情移入したら、たまらなく切なくて…。
ラストも、本当にきれいにまとまって、不幸なことはあったけど幸せな終わりを迎えて。

大団円の後の意外にシュールなオチを、語る「時」役のリチャード。
リチャードが…というかこの役がコマってことに、鳥肌が立つ(笑)
この役も、この人にしか出来ないお役だよね。
コマの芸名の由来がシェイクスピアの和名っつー、多分一方(ひとかた)ならない思い入れがあるはずのコマが、生田先生がシェイクスピアにリスペクトして、オマージュしたセリフを話す…。
鳥肌立てながら、感激していた。

なんか…。
私、シェイクスピア好きだ~と思った。

作品だけでなく、「もしかしたら」こういう人生を歩んだかもしれないシェイクスピアが。
劇作家として、情熱を持って魂を削って、時に悩みながら、時に笑いながら…後世に残る素晴らしい作品を産み出したシェイクスピアがすごく好きだと思いました。

私にとってシェイクスピアとは、いつの時もワクワクするものなんだと。
改めて感じました。

あー、面白かった。