ギリシャ悲劇っつったら、演劇かじったことある人には、シェークスピアと同じくらい定番のテキストで。

私も、学生の頃演りました。が、これはやってなかったんですよねー。

話で聞いた程度しか知らない状態で観ました。


だから、奈穂子ちゃん先生が、どういじっているかわからないのですけど、一幕で休憩なしのお芝居を、宝塚で観てびっくりしてます。

や、もう、見ごたえは十分!ものすごく集中した一時間半でした。

舞台中央にある階段と、その上の両側にある太陽神アポロンのレリーフ(?)、その奥にあるだろう、オイディプス王の館。
上手にも階段。
下手には祭壇らしきテーブルがあって。

コロスたちと巫女はずっとセットのように(しゃべったり移動するけど)舞台上にいる。

・・・本当にそのままの脚本なのかなって疑いたくなるような、完成度の高さ・・・っていったらむちゃくちゃ失礼だけど。
とても2500年前に書かれた戯曲とは思えない!とても、とても完成された脚本で、サスペンスで。
何がすごいって、探偵役のオイディプスが犯人だと言う、「サスペンスのタブー」をやってしまっているのが・・・すごいです。


トムの熱演もさることながら、ほんの一場面程しか出ないキャスト(ほぼそうなんだけど)の熱演もすごい。

やっぱりの、コマ。素晴らしいの。
なんか、泣けちゃって。
オイデプス王の出自に関わる重要な話の時に、出てくる「羊飼い」。
自分のね・・・自分の事かばって色々いってんじゃなくて、オイディプスの為に嘘言ったり、何も言わなかった過去があって。

でもトムに「全部話せ」みたいに責められて…。
もう、本当に、辛くて泣き1

羊飼いにとって、オイディプスって血がつながっている訳じゃ無いけど、そんな愛情があったんじゃないかなとか、感じた。


何場面か続けて出る、ヒロイン・イオカステのかちゃ。
これ、難しい役だぞー。

なんせ、「母であり妻」なんだから。

ま、どう考えたって、15歳は年上でしょ?トムより汗

でも、妻としていられるくらい美しくて。


…男役なのに…。


って、思ったんだけど、「エリザ」の後半くらいの声のトーンで、落ち着いた「姉さん女房」な感じで演じていた。

ま、妻なんて普通の夫婦でさえも、夫に対して「母」なモードになるときあるから、そういう意味ではあのなだめ具合とか、物言いとかは、普通に「妻」だったのかも。

抱きしめ方が、よかった。そして、それを受けているトムの甘え具合が良かったかお

もーのすごい、ぺたん靴を履いてはりました。多分、時代考証通りってくらいのやつを(笑)仕方ありませんな。



今回の作品で二番手格は、みつるかな。

いやー、負けてないね。トムに。

専科様の中では下級生だし、全然若いイメージしかないんだけど…。

かちゃの弟って設定で(笑)

オイディプスより年上の義弟。国を助けてくれた王を心底尊敬していて、裏切り者の汚名を着せられた事にものすごく腹を立てるんだけど、最後には、王のためを思った計らいをする。

男らしいはっきりしたキャラが、とって似合っていたと思う。



コロスの長のはっちさん、巫女のすーさん、使者(っつーより気のいい商人って感じ)のまりん、予言者のナガさん、知らせの男のるうくん。

みんな本当に熱演。


ほんの少ししか出ない、子供役と、(オイディプスの)娘役の下級生3人も、がんばっていたよ。



ああ、101期ちゃんたちも、コロス、がんばっていたね。

コロスって、ずっと出っぱなしで、実は色んな事しなきゃならないから、結構忙しいのよね。




しかし、やっぱりなによりトムがすごい。


雄々しい王なんだけど、結構若くて一寸短気なとこあったり、少年な空気が出たり、でも正直な人で。


ラストの、目を自ら潰して血だらけで出てきたのには、ほんとびっくりした。

粘度のある血糊で、話している間にもゆっくりほほを伝っていくその赤いものが、もぅ、リアルに恐ろしくて。

マントにも、血糊がついてて、ここまでしたのって、宝塚的にはあまりないんじゃないかなぁ。

…ああ…ソルフェリーノが血だらけだったか(笑)


そしてそれ以上に、つぶれた目を閉じたまま、階段を1人で下りるトムにほんと、驚いた。

そりゃね、いつも下見ずに階段下りてるから大丈夫なんだろうけどさぁ。

「いざとなったら見られる」かどうかって、大きいと思うのよね。

演技で、ものすごく確認してゆっくり、時にふらっとなりながら下りる姿に、ほんと見入ってしまいました。


これ、いい演出だよなぁ。


この時のオイディプスの心情がよく出ている歩き方というか、姿だなと思った。



大分不幸な終わり方だけど、愛娘二人に手を引かれて「実の両親がそうと決めた地」へ向かう姿は、ちょっと幸せそうだった。

ものすごく集中した作品でした。

よかったきゃ