冷静に考えると。
はてしなく、内輪ウケな作品だ。
出演者の昔の作品の映像やナンバーやら、それにひっかけたギャグ、完全当て書きのキャラクター・・・。
知らずに「宝塚の(元)ジェンヌが出ているから」ってだけで観てしまったビギナーさんは、何一つ笑えないんじゃないかというくらいの、拘りっぷり。
事実、私たちの後ろに座っていた、母子三世代な感じのお嬢さん(小学校低学年くらい?)は、幕間にお母さんとお祖母ちゃん(と思われる人)の説明を一生懸命聞いていた。
・・・そう。
ファンのための作品であり、ファンのために作られたひとときの夢なのだと(どちらかというと、祭り?)
10年前、人気絶頂のガールズグループが解散し、元マネージャーの結婚式で久々にそろって歌ったのをきっかけに、一夜限りの復活コンサートをやって欲しいとオファーを受けて、それぞれの道に進んでいるメンバーがそれぞれの立場で悩みながらも、決意する話。
マミさんは、イベントプロデューサー。わたるは、振付師兼ダンサー。かしげちゃんは、作詞作曲家。タニちゃんは、ミュージカル女優。
・・・当たらずとも遠からずっつーか・・・。
当て書き以外の何ものでもないキャラ設定。
多分に、その「復活コンサート」に対する考え方の違いには、本人たちの思いも含まれているんじゃないかなと思った。
最初にその話を聞いて、飛びつくわたる。
悩んでいるマミさん。
ほぼ「無理」と思っているかしげちゃんと、興味はあるけど・・・なタニちゃん。
宝塚の「男役」に対する思いに思えてしまって仕方ない。
わたるなんて、悩む必要ない、今すぐ背負い羽根背負って大階段降りられるよって勢いだし。
マミさんは、わたるに比べたら「女優さん」が板に付いてるけど、ただ単に退団時期の違いってだけで、その気になればいつでもって感じだし。
すっかり女優さんになって、つい最近、お嫁にまで行ってしまったかしげちゃんは、「男役」を過去のものとしてとらえているかもしれない。
タニちゃんも、グラビアアイドルみたいになっているけど、退団時期が最近だから、がんばれば戻れるだろうって感じだし。
そう思って観ていると、なんだか辛かった。
ま、こんなお芝居に出ているのだから、宝塚に対するリスペクトも愛もハンパないとは思うけど、退団して・・・例えトップ経験者であっても、宝塚は「昔のこと、過ぎたこと」なんだって。
や、わかってるよ。
宝塚ってところは、一度辞めたら二度と戻れない夢の国なんだって。
なんていうのかなぁ。
人によってだと思うけど、「宝塚で男役やっていた私は忘れてください」って元ジェンヌさんもいると思うの。
あの宝塚っつー場所で、板(舞台)の上に乗っていたからこその私であって、その舞台を降りた今は、違う私なんだって。
わたるの役みたいに、「宝塚にいた私」の延長線上に「今の私」がある人は、「復活」っていわれても二つ返事でOK出来るだろう。
対して、かしげちゃんやタニちゃんの役みたいだったら、そうはいかない。
「男役スキル」をやっとのおもいで封印したのに、また引っ張り出してっていきなりいわれても・・・。ってなると思う。
観ていたファンの立場でいわせてもらうと、わたるのキャラが一番うれしいリアクションだった。
劇場副支配人の風っぱなは、私たちの思いを代弁してくれている。
嘘のライバル作って、競争心あおってでも復活ライブさせたいって気持ちとか。
「OGファンあるある」だよ(爆)
でも、かしげちゃんたちの役の思いもわかる。
てか、大体こうなんだもの。
てか、今までそんなににOG公演とかなかったから、普通に仕事しようと思ったら、男役スキル捨てるか、封印するしかなかったんだから。
それでも、彼女たちは、一夜限りのコンサートを開く。
ファンのため、自分のため、未来のために。
「昔取った杵柄」というには、現役そのままで、涙が出た。
わたるのシャープな男前なダンス。
マミさんの、エンターテイナーぶり。
あんなに可愛かったのにあっという間に男前になるかしげちゃん。
ナイスバディーそのままなのに、男に見えるタニちゃん。
退団して、もちろんその位置にあったわけではないから、いろんなところがスキルアップしていて。
歌にしろ、ダンスにしろ、こんなにレベルの高いショーはなかなかないよ!って位。
本気で泣いた。
素晴らしすぎる。
夢を見ているのかと思うほどに感動した。
「愛と青春の宝塚」とは別の切り口で、宝塚歌劇団というところを、リアルに描いた作品だと思った。
それ故に、はてしなく身内ウケなわけだ。
ああ・・・理解して、大笑い出来る自分でよかったよ(笑)