映画はシネコンで観るのが当たり前になった昨今、気軽に行ける反面、映画を観にいく、という高揚感が薄れてきたように思う。
70年代、80年代は映画に行く、という行為が大きなレジャー、イベントであったように感じる。お盆、正月は映画館へ、というのがごく普通の過ごし方であり、どこの映画館も満員で、立ち見も当たり前だった。
 映画全盛のその時代、ロードショウは有楽町・日比谷、名画座は文芸坐というのが私のこだわりだった。東京には新宿に「新宿ミラノ座」「新宿プラザ」、渋谷に「渋谷パンテオン」という大劇場があったが、洗練された雰囲気の街である日比谷の映画館が連なる一角にあった大劇場「有楽座」「日比谷映画」で観るのがロードショウを観たという満足感を更に高めてくれた。

 もちろん、スクリーンの大きさも劇場を選ぶ大きな判断材料であり、先に上げた劇場はどれも大スクリーンを誇っていた。視界に収まりきらないような大画面は圧倒的な迫力で映画に没入させてくれた。
 そんな中で、「シネラマ」テアトル東京の存在はとても気になっていたが、銀座から少し離れた場所にあり、行くのを躊躇してしまっていたのです!私が初めてテアトル東京に行ったのは「ディアハンター」だったのだが、そのスクリーンの迫力は今まで経験したことがないようなものだった。1階、2階合わせて定員数1150名、床面から直接立ち上がる、高さ8.7m、横幅28mの湾曲した大スクリーンは前列で観ようものなら視界に収まりきらない臨場感!を味わうことができたのでした。



 私は休日の1回目の上映から行き、1回目は全席自由となっていたので2階席の指定席(リクライニングシート!)で観て、2回目は1階の最前列でまさにスクリーンに包まれながら映画に浸ったのでした。
 「ディアハンター」で味を占め、その後「地獄」「天地創造」「エイリアン」と連続してテアトル東京に通ったのち、私が初めて映画館で鳥肌がたった出来事があったのです。それは、テアトル東京に「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」を観に行ったとき、お決まりの20世紀FOXのオープニング映像が終わり、スター・ウォーズのテーマ曲がまさに鳴ろうかというとき、期せずして客席から大拍手が鳴り響いたのでした。待ちに待った映画がまさに始まるという期待感、高揚感をこの劇場にいるみんなが共有しているんだということに鳥肌が立ち、胸が熱くなったのでした。


 その後、テアトル東京に「ブラックホール」「フラッシュ・ゴードン」「ハウリング」等を観に行きましたが、なんと閉館のニュースが!・・・。
 テアトル東京の最後の上映作品は「天国の門」。私は「天国の門」上映と「予告編」大会、そして小森のおばちゃま、荻昌弘さんらによる座談会をオールナイトで行うさよなら企画に参加!しました。素晴らしい企画の中、私はたった2年間のテアトル東京との付き合いに別れをつげたのでした。実はその後、高校の修学旅行で新幹線に乗った時、偶然、小森のおばちゃまも乗り合わせ、このテアトル東京のお別れ企画の話しをしたらとても喜ばれたのもいい思い出です。 


 これほど思い入れがある“封切映画館”はテアトル東京が最初で最後でした(涙)

 

(テアトル東京の画像は BIGSTONEの気ままな日記「ありし日のテアトル東京」  から転載させていただきました)