「雪色のキャンパスと・・・」
「そういえばあの日もこんな天気だったな・・・。」
ふと傘を少し上げる。
ほのかに明るい鉛色の空からやさしい純白の雪が舞い降りては、オレの体温を奪い取る。
「はぁ・・・。」
ふと湧き出た溜め息が、白い煙となって空へと昇っていき、儚く消える。
降り続ける雪は、今の今まであった嫌なことも何もかもを真っ白に戻してくれそうな、そんな白さを放っている。
振り返ればそこには、こちらに向かっているオレの足跡。
そして、反対の方向へと向かう君の・・・。
思えば1年程前、今と同じ場所で、同じような天気の中。
背中に雪を積もらせながらうずくまっていた彼女に、何気なく傘を差し向けたあの時から、
オレはもう彼女の事が好きだったのだろう。
あの時、振り返り際に見えた彼女の涙は今でも覚えている。
あれからもう1年も経ったのか。
いろいろとあった。
いっぱい笑って、いっぱい泣いた。
時には彼女を傷付けたりもした。
とにかく彼女の、太陽のように明るいオレンジ色のような笑顔が好きだった。
そして、その色をずっと守ってあげたいと思った。
でも、今日オレはその色を奪ってしまった。
あんなに好きだったのに。
彼女にあんな表情をさせてしまった。
なんて馬鹿だったんだろう。
オレは、オレはあの笑顔を、あの色を守りたかったんじゃないのか!?
振り返り、右手の傘を放り投げた。
走った。
足跡を追って、足跡よりも大きな歩幅で。
あの時と同じ、雪の積もった背中が見える。
「待ってくれ!・・・」
白いキャンパスがオレンジ色へと染まる。