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少しだけ、ご霊さまのお世話になりました

何をしても良くならない胃もたれと下痢に悩まされて、ある宗教団体の門を叩きました。夢の中にのっぺらぼうが現れてからというもの、胃もたれが快気に向かい多くのご加護をいただくようにんりました。

CPc

第5章 先尾翼機 Ultra震電 を作る

 

  先の大戦末期、帝国海軍は来襲するであろうB‐29に立ち向かう局地戦闘機をいくつかの航空機メーカーに命令したが、九州福岡市にある九州飛行機があのライトフライヤー号と同じ尾翼を前につけた先尾翼型の閃電戦闘機で応じたのです。

 

  

 

 

   中島飛行機は双発の戦闘機”天雷”で応じたが、1機で2機分のエンジンを使うなら、「単発機を2機

  造る方が効果的だ」という理由で数機の試作機で中止となりました。また、双胴型の”閃電”戦闘機で

  応じた三菱重工でしたが、Pusher型のプロペラ後流が水平尾翼に不穏な振動を生じたトラブルの解

  決に多くの時間を要したことと、予定していたエンジンが所定の性能を得られなかったことで試作前に

  中止となりました。

 

   そんな中で、この前代未聞の先尾翼型(海軍は前翼式と呼んでいた)戦闘機”震電”の設計技師鶴

  野正敬氏は、模型による風洞試験や実物大の滑空機による先尾翼型の課題を次々と解決していく中

  で「技術的な見通しが立った」と 十八試局地戦闘機 として試作命令が出たのが昭和18年末でし

  た。

 

 

 

   さて、Elevatorが前にあるため敏感に反応してくれる反面、CGとVerticak stab.の距離が近いために

  Verticalに大きな面積が求められるなどこれといった構造的なメリットなどがない先尾翼型なのに、な

  ぜ、鶴野技師は強くこだわったのでしょうか。

 

   それは、三菱閃電と同じように 最大速度405knot(750㎞/h)以上、8000mまで10分以内の上

  昇力が得られるであろう空力的抵抗の小ささ、そして30ミリ機関砲の装備 といった海軍の要求に応

  えるためだったに外なりません。

 

   時速750㎞の最高速と8000mまで10分の上昇力は直径の大きな大出力、大容量のエンジン

  をNoseに置いたのでは実現することは難しく、必然的に胴体中ほどに置いてPusher型プロペラを装

  着した流線形胴体ということになりました。

 

   そして、あのB-29爆撃機を一発で破壊できる威力をもっているけれど、銃身が長いために翼には

  装着できなかった30ミリ砲を胴体のNoseに4基も装着することで、その命中精度と威力が格段に向

  上するはずだと踏んだのです。

 

 

   水平尾翼を機体の前方に配した先尾翼型震電ですが、操縦舵面Control surfaceの配置はどうなっ

  ているのでしょうか。下図にその舵面配置図を示します。

 

   重心CGから遠く離れた主翼外側に横方向の制御をするAileronと、その内側に着陸速度を遅くする

  ためのFlapを設けたのはよく理解できます。しかし、Elevatorが先尾翼に配されたことはともかくとし

  て、普通翼機のゼロ戦の水平尾翼よりずっと小さく、しかも、水平飛行中は機体を支える揚力を担っ

  ていないにも関わらず、SlatやElevatorと兼用の後縁Flapといった高揚力装置を設けているのはどうし

  てなのか、と疑問がわきます。特別に大きな揚力を必要とする場面が先尾翼にはあるのでしょうか。

 

   あれやこれやよーく考えてみた結果、その機会があることに気がつきました。


    離着陸の速度はなるべく小さな市区度にしなければなりません。そのために主翼後縁Flapを下げて

  揚力を大きくしますが、同時に、機体は大きくNose downの姿勢になってしまいます。なぜなら、主翼

  Flapは 重心CGより後ろにあるからです。

 

   その危険な機体のNose down姿勢を修正するために主翼後縁Flapを下げることと連動して先尾翼

  のSlatをせり出し、Flapを下げて先尾翼に生じる揚力を一時的に増大させるのです。これによって生

  ずるNose upモーメントによって縦の安定を保つことができるのです。

   この先尾翼FlapがElevatorと兼用ということは、操縦桿の位置によってFlap角度が制御できるのでは

  ないかと推察します。そこまで記述された文献を目にしたことがありませんが、そのようにしないと

  Flap extendのときの縦の制御ができないからです。

 

   Slatは翼前縁の、そして主翼Flapは後縁のキャンバーを大きくして揚力を増大させる機構ですが、そ

  れぞれに隙間(Slot)を形作るように作動させています。翼下面の負圧気流を上面に流してより効果的

  に大きな揚力が得られるよにすることが目的です。

 

   そんな九州飛行機製震電戦闘機を、外形を直線だけで構成し、1枚のVertical stab.に大きくデフォ

  ルメしたのでUltra震電ということです。スーパーを超えたウルトラ ということです。実機の生産数は

  強度試験用の機体を含めて3機製造されたところで終戦となり、実際の性能詳細等は明らかにはな

  りませんでした。

 

 

1.紙ヒコーキ ウルトラ震電を作る

 

   紙ヒコーキで作る先尾翼機”震電”は、下向きがちなNoseの持ち上げ方で次の2種類があります。

   A.Area-aid shape(先尾翼面積援助型)---主翼の25%を超える先尾翼面積とその取付角を調整

                              委することにより縦方向の安定を 図る形です。

 

   B.Elevon-aid shape(エレボン援助型)―主翼面積の25%を下回る先尾翼の場合、先尾翼角度に

                    加えてElevonのNose upモーメントを利用して縦の安定を図っている形で

                    す。下の震電は主翼の15%の先尾翼面積で、翼端ほど翼弦長が長い

                    逆テーパー翼Reverse tapered wingを採用したElevon-aid型の震電で

                    す。

                     そして、先尾翼をどんどん小さくしていくと同時に主翼を大きくしていく

                    と先尾翼がなくなって一枚翼の無尾翼機となります。

 

 

  A. Area-aid 型先尾翼機”震電-a”を飛ばす

 

   イ.Area-aid型先尾翼機は、基本的に普通翼機の主翼と尾翼の面積をそのままにして、その位置を

    逆にしたものです。従って、主翼面積と先尾翼面積はスーパーゼロ戦の主翼と尾翼と大きく変

    わらないのですが、ゼロ戦の台形前進翼もその向きを変えて台形後退角にして胴体後部に取り付

    けます。

   ロ.安定性をよくしたい

     主翼面積の25%前後の先尾翼面積にして、普通翼機と同じように全幅全長を15・12cm余に

    していくつか作ってみたけれどうまく飛んでくれたのは皆無でした。左へふらふら、右へフラフラ、

    縦の安定や方向の安定が治まりません。「何がいけないんだろう…」

 

     基本に立ち返って、次の3点を組み込んで再設計してみました。

    a.先尾翼容積比VC=Sc・Lc/Sw・MACw≧0.6 とした。

    b.先尾翼と主翼のAR≧5 とした。

    c.主翼の取付位置を胴体後端から2㎝に置いた。

 

     その結果は月とスッポンほどの違いを見せてくれて、難なくtan6°の滑空性能をクリアしたので

    す。

 

    その設計図を下に示します。

 

    

     説明します。当初、胴体長をゼロ戦と同じ12.5㎝でとりかかったのですが、上記3点の条件を

    組み入れると少なくとも13㎝の長さが必要なことが分かりました。

 

     胴体後端から2.0㎝のところに主翼を置いたのは、垂直尾翼の面積を小さくする距離Lvである

    CGとCPv(垂直尾翼圧力中心)間を長くするためです。そのために、Lv=3.80cmとなり、Sv=

    (003×4218×14.80)/3.80=4.90c㎡ と程よい面積になり軽量化の一助になりました。

 

     主翼面積はゼロ戦と同じ42c㎡余にしましたが、距離が近いために大きくなりがちな垂直

    尾翼を考慮して翼幅を小さくした平面形を再設計し、Cr=3.90 cm、Ct=1.80㎝、B=14.80㎝

    のSW=42.18c㎡、AR=5.2の台形後退翼にしました。

 

     先尾翼の位置はNose先端から0.20㎝控えたところに前縁を置き、主翼とほぼ相似形にしたい

    ので付根弦長2.00㎝、翼端弦長1.00㎝のテーパー比TRを0.5と想定し、MACc=1.56㎝の

    40%点をCPc先尾翼圧力中心と決めて先尾翼と主翼の圧力中心間距離Lcp=8.39cmとしまし

    た。

 

          2      k2乗           Ct

     MAC=――・(1+――――)・Cr   k=―― 

             3       k+1           Cr

 

 

     ここで先尾翼の翼幅を決めて先尾翼の面積を確定することになるけれど、R/S Rate of Surface

    先尾翼と主翼の面積比=0.22を目安にし、VC Volume of Canard wing先尾翼容積比=0.60

    を指標にして、必要最小限の先尾翼面積を見つけ出す作業になります。しかし、それは面積の広

    さをいくつか変えてみての計算を繰り返すことになります。

 

     もちろん、VC=0.60は経験に基づく数値であり、これより大きな数値になっても安定性さが損

    なわれることはないけれど、一方で機体の重さが増えることになり滑空性能に影響が出る恐れ

    があります。

 

      ここで作るultra震電の必要最小限の先尾翼面積、11.70c㎡は次のようにして求めました。

                Sc      Sc

     R/S=0.22=――――=―――――    からSc=11.79c㎡ となります。

              Sc+Sw   Sc+42.18

                                     Cr+Ct

     図形化するための計算をすると 先尾翼面積Sc=―――×翼幅B=11.79 の方程式を

                                      2

                                          2+1

     たてて、B=7.86を求めて7.80cmに処理すると、Sc=―――×7.80=11.70  となりま

                                           2

     した。

 

 

 

     先尾翼と主翼の面積比からその釣り合い点CPtotal を求めると

           11.70

    R/S=―――――――     =0.217 ×8.39=1.82cm  となり、主翼圧力中心CPwから前

        11.70+42.18

    方1.82cmにCPtotal があることになります。その点は同時に、先尾翼の圧力中心CPcから後

    方に6.57cmの点でもあります。

 

     そして、先尾翼と主翼の面積的釣り合い点、言い換えれば先尾翼と主翼の揚力的釣り合い点で

    あるCPtotal の前方0.10㎝にCGを置きます(CG advance)。これを0.20cmにすると、先尾翼

    の角度を最大限にしてもNoseは持ち上がりません。従って、CGは主翼後縁から3.71㎝の距離

    になります。

 

     CGが決まったところで先尾翼容積比Volume of Canard wing VCを計算します。

          11.70×6.47

     VC=―――――――――=0.60≧0.60

          42.18×2.98

 

     ということでVCの基準値を満足させています。分子の部分を見ると、先尾翼面積をもっと大きく

    した場合には主翼からの距離をもっと小さくできることが分かります

 

 

     さて、このまま飛ばしてもNoseは持ち上がらずに地表に突っ込んでしまうだけです。理由は次

    の3点です。

    イ.先尾翼と主翼の翼型が異なること

    ロ.CGをCPtotalの前方に置いたこと

    ハ.主翼に取付角がつけられていること(このモデルには該当しない)

     

     従って、上記のイ、ロ、ハを先尾翼の取付角で補正すことでtan6°の滑空が得られることになり

    ます。その補正の計算を以下に示します。 

 

   イ.先尾翼と主翼の翼型が異なることの先尾翼の補正角度

   

 

     第2章でも紹介した3%キャンバー翼と平板翼の揚力曲線を上に示します。例えば、 Cl=0.5に

    おけるキャンバー翼と平板翼の迎角を比較すると キャンバー翼の4.4°に対して平板翼は5.

    9°と読み取れます。すなわち、平板翼である先尾翼の取付角を主翼よりも1.5°大きくすること

    で主翼と同じ揚力係数となります。  

 

   ロ.CGをCPtotal の前方に置いたことによる先尾翼の補正角度

     先尾翼と主翼の揚力釣り合い点=揚力合力点であるCPtotalより前方に機体の重心位置を置い

    たのだから、先尾翼の角度を少し大きくしないと前のめりになってうまく飛んでくれません。その先

    尾翼の角度を計算で出します。

 

    (先尾翼) 1.82+0.10=11.70・Cl →Cl=0.164

    ( 主翼) 6.57-0.10=42.18・Cl →Cl=0.159

 

          0.164-0.153

           ―――――――=0.072 → 主翼に対して先尾翼の揚力を7.2%増やす。

             0.153 

          

     そのClは Cl=0.5×1.072=0.54 となり、その迎角は上の曲線から6.3°となり

    ます。

 

     この時の主翼の迎角は上の揚力曲線から4.4°なので、それとの差 6.3-4.4=

    1.9°を先尾翼に付加することでCPtotal の前方0.10cmにCGを置いたことによるNose down

    モーメントを消失させることができるはずです。

 

   ハ.主翼に取付角がつけられていることの補正角度

     主翼が胴体に取付角をもって取り付けられた場合、同じ角度を先尾翼にも与えないと先尾翼と

    主翼の揚力は釣り合いが取れません。しかし、ここで作るウルトラ震電の主翼には取付角をつけ

    ないので補正値は±0°となります。

 

     以上、イ、ロ、ハ、の補正角度を合計すると 1.5+1.9+0=3.4°となり、先尾翼を胴体に

    +3.4°、つまり前縁上げ3.4°で取り付けます。

 

     3.4°の角度は、三角関数を使ってを図形的に表すことで工作が容易になります。

      tangent3°=0.05241

      tangent4°=0.06993

                                              5.94   3

    その差 0.01752×0.4=0.0070+0.05241=0.0594=―――=――

                                               100   51

               3

    つまり tangento―― が3.4°であり、図形で表すと下図になります。

               51

 

 

     

 

     設計三面図から下に示す全ての構成部品各々の外形図を描いた部品図を作成します。上記三

    面図と共に示しています。

     ・主翼  ・先尾翼  ・垂直尾翼  ・主翼と先尾翼の取付ガイド片  ・上反角くさび切り出し片

     ・胴体  ・胴体補強板  ・キャンバーゲージ

  

     部品図から切り出した各部品を加工し、組み立てて震電type277を完成させ、試験飛行に臨み

    ました。機体を投てき後、大きくNose downし、地表間近で水平飛行に姿勢を変えるというその飛

    行姿の原因は、先尾翼の所定の角度に足りないと判断しました。

 

     そこで、先尾翼の左右両先端付近を少し捻じって取付角を少し大きくしたところ、俄かに解決し

    tan6°の滑空角を満足させることができました。

 

     やはり、先尾翼の取付角3.4°をはじめとする手作業による誤差の累積が、試験飛行における

    微調整として具現化しているのだと感じます。

 

 

 

 

 

 B. Elevon-aid型先尾翼機 ”震電-e”を飛ばす

    

    下を向いてしまうNoseを何とか上向きにする揚力を先尾翼の面積だけに頼る震電ーAに対して、

   主翼に施した反転キャンバーによるNose-upモーメントを利用して先尾翼面積を小さく、且つその取

   付位置も自在にできるのが震電ーeの特徴です。

 

 

 

    このように、同じ先尾翼型でありながらArea-aid型とは大きく異なる揚力作用を持って空を飛ぶ

   Elevon-aid型があります。その違いは次の通りです。

    イ.先尾翼面積+主翼面積を53c㎡余にして主翼面積の一定割合のElevonを設けることで、縦の

      安定を損なうことなく先尾翼の取付位置とその面積を自在に設定できる。

    ロ.しかも、先尾翼の取付角は繁雑な計算をすることなく一定値4°にしてやればよい。

    ハ.縦安定の制御は、もっぱらElevonが担っている。

 

    というように、先尾翼型戦闘機 震電―e を簡単に作ることができて胸のすくような飛びっぷりを見

   ることができます。では、ここでは逆テーパーの主翼と先尾翼を持つ震電―e を作ってみます。

 

 

    逆テーパー翼を持つ震電ーeの二面図を下に示します。

 

    少し、説明します。

   特異な形をしているので戸惑うかもしれませんが、逆テーパー翼は筆者の思い付きではありませ

   ん。れっきとした実機に採用されたこともあるのです。その目的は何でしょうか。

 

    後退角を大きくすることで弦長が長くなって気流に対する翼厚比は小さくなるけれど、構造的に

   も翼厚が薄い翼端部分の強度が弱く大きくたわんで揚力を失いやすくなるのです。

 

    その不都合を解決しようと、アメリカのリパブリック社が設計したのが翼端ほど弦長を長くして頑丈

   にした逆テーパー翼を採用したXF-91戦闘機でした。確かに堅固な翼端にしたことで翼端失速は抑

   制されたことでしょうが、その思惑に反して機体を支える翼の付け根部分の脆弱さが露呈して実用

   にはならなかったのです。

    しかし、ここで作る震電ーe の逆テーパー翼の目的は、XF-91のような”翼端失速の抑制”ではな

   く、ただただ、その特異な外観が目に留まったから、だけなのです。震電ーe の試作機を作り終えて

   感じたことは、「逆テーパー翼は先尾翼型というヒコーキの形によく似合う」 ということでした。

 

    主翼面積46.10c㎡で、その約16%である7.46c㎡の先尾翼をNoseから2.0cmのところに配

   置しましたが、意の向くままの形です。ただ、1枚のVertical stab.にするには主翼後縁からTailに向

   かって3cm余の距離をとらないと巨大なVertical stabになることがあらかじめの計算で分かってい

   たので、先尾翼と主翼間の距離が5.30cmとずいぶん短くなりました。全長は13.00cmです。

 

    先尾翼面積の主翼面積に対する割合は16%ですが、この16%という割合により次の設計値が

   決まってきます。

      ・CG advance――CPtotalから前方に0.25cmCGを置きます。

      ・Elevon 面積―ー主翼面積の13%余が左右併せての面積です。

 

    これは筆者の研究結果を適用したもので、その全容を下図に示します。

 

    

    この震電-eは、上の表のSc/Swが0.15 欄を横に観てみると、Swが46付近でSe係数は0.13

   とあり、さらに右横のCG位置には+0,25cmとあるのが分かります。そのSe係数とCG位置を適用

   することで とてもよく飛ぶ先尾翼機、震電を難なく作ることができ、飛ばすことができるのです。

 

    主翼のMAC平均翼弦長は3.19cmで、その40%長1.28cmが前縁から後方に主翼の圧力中

   心CPwとして設定されています。後縁がテーパーになっているために誤差を生じやすいと考えて前

   縁から求めました。

 

    R/S先尾翼と主翼の面積比0.139×Lcp6.03cm=0.84cmとなり、CG位置は 

   1,28-0.84-CGadvance0.25=前縁からの距離0.19cm となります。

 

 

    この二面図から構成部品の全てを個々に描いた部品図を作ります。下に示します。

 

 

    その部品図をケント紙にコピーして個々の部品を切り出し、加工してPrototypeを1機作りました。

    外観の出来具合や問題点のないことを確認して、CG位置で支えて機体前後の重さがバランスする

   ようにおもりの調整をした後、恐るおそる、そっと投げ出してみました。さてーーー。

 

 

 

    1回目の飛行を観てElevonの角度を少し浅くしたら、2回目には約10m先までスーッと飛んでくれて

   tangent6°の滑空レベルを満足してくれました。パチパチパチ、拍手です。自分の設計製作した震

   電戦闘機が空気と仲良くなりながら10mも飛んでくれたんです。重さを測ると3gram弱の軽さです。

 

    この感激を求め続けて40年以上になります。飽きませんね。ほんま、あきまへんなアー。

3章 普通翼型 スーパーゼロ戦を作る

 

 

 

 

    先の戦争で降伏する前の日本は、今のアメリカのような世界に名を馳せた軍需産業が盛んな国で

   した。戦闘機ひとつとっても、誰でも知っている普通翼型の”ゼロ戦”を始めとして、双胴型の”閃

   電”戦闘機、先尾翼型をした戦闘機、”震電”、そして、ドイツの技術を模倣した無尾翼型ロケット戦

   闘機”秋水”とあらゆる形のヒコーキを開発、製造してきたのです。

 

    それでは、大きな主翼を前に、小翼を後ろに配してもっともオーソドックスな形の普通翼機 三菱

   ゼロ戦を作ります。主翼が機体の前にあるということは機体の前方が重いということで、すなわち、

   1トン近い重さのあるエンジンをNoseに載せているからです。

 

 

 1.スーパーゼロ戦の設計図を描く   

   そもそも、尾翼が前にある先尾翼機が全盛の1900年代の初頭にあって、ブレリオⅪという面積

   の大きな主翼を前に、小さな尾翼を後ろに配した普通翼型が生まれたのはどんな理由なのでしょ

   う。

 

    ウォータージャケットWater jacketを持つ構造が複雑な水冷エンジンから簡素なオートバイ用の空

   冷エンジンに替えてNoseに載せたところ、Noseが重くなった機体を支えるための主翼を前に置かざ

   るをえなかった、というTheoryでしょう。しかも、空冷エンジンは機体の一番前に置くことが最も冷却

   効果が大きいし、飛行性能がとても安定しているとなれば、この形が既成の事実として主流になら

   ざるを得なかったはずです。

 

    さて、その普通翼型をした旧日本海軍の三菱零式艦上戦闘機、通称”ゼロ戦”をA4サイズのケント

   紙1枚で出来上がるようにデフォルメ(Deformation、変形、歪曲、誇張)して作っていきます。このコ

   ンセプトは順次作っていく閃電や震電なども同様であって、言ってみれば”Real de ArtなA4サイズ紙

   ヒコーキ” というコンセプトです。

 

    そのようなことで、A4サイズケント紙に描いた三面図と部品図から切り出されるReal deArtな紙ヒ

   コーキは、全幅15㎝余、全長が12㎝余の大きさで出来上がります。

 

 

   名前のゼロ戦は、正式名が零式艦上戦闘機からきていて”れい戦”とも呼ばれましたが、零式とは

  いわゆる型式であって陸軍機のように1式戦闘機”隼”とか3式戦闘機”飛燕”というような型式の後の

  名前を持たないのです。どうしてでしょうか。

 

   海軍機において型式名から名前を付ける命名法に変わったのが1943年7月で、このゼロ戦が制

  式採用されたのは1940年だったからです。従って、43年以前の海軍機には名前を持たずに神武天

  皇即位を元年とする皇紀歴の下2桁を型式名にいして呼んでいました。ゼロ戦が採用された1940

  年 、昭和15年は皇紀2600年だったので零式艦上戦闘機となってゼロ戦と呼ばれるようになりまし

  た。

 

   また、ゼロ戦は、Noseに出力1100馬力の中島飛行機製の栄(さかえ)エンジンを一基載せて三菱

  重工業が開発、製造した艦上戦闘機で、後に中島飛行機もライセンス生産して全部で1万機以上製

  造されて生産数の多い飛行機の一つに数えられています。

 

 

 A.紙ヒコーキゼロ戦の設計ポイント

  イ.Noseにエンジンを載せたShort nose profileを表現するために、Noseの太いくさび型胴体スタイル

    にする。

  ロ.ハンドランチ式の紙ヒコーキなので、胴体を指で摘まみやすいよううに中翼にする。

  ハ.仕上がりの機体重量をなるべく小さくするために全幅15cm余、全長12cm余といった最小限の

    大きさにする。

 

 

 B.主翼と尾翼の面積を決めて、機体の平面形を作る

 

    主翼と尾翼の平面形を作るといっても何を頼りにしたらいいのでしょう。ここではこんなデータを

   使います。 

                         1

    イ.揚力公式  Lift=Weight=――・ρ・v2乗・S・Cl  ただし、v=5m/sec、Cl=0.5

                         2

    ロ.筆者の研究により得られたよく飛ぶ紙ヒコーキに関する経験式

     ・Sw+Sh=53c㎡余、、Sw+0.25・Sw=53からSw=42c㎡余、ただし、全幅15cm、全長

      12cm余

     ・普通翼機の翼面荷重  Weight/(Sw+Sh)=0.06台

       先尾翼機、無尾翼機の翼面荷重は 0.05台

     ・翼のAspect Ratio=5~5.5

    

    上述のデータから得たSw主翼面積42c㎡を揚力式に代入すると

 

      L=W=1/2×ρ 1.23×v 52乗×S 0.0042×Cl 0.5=0.032 Newton

           0.032

           ――――=0.0033kgf=3.3gf

            9.8

 

    すなわち、機体の重さを3.3gを超えないように作ることで0.06台の翼面荷重値を実現できれ

   ば、tangent6°の滑空を見せてくれると踏んでいるのです。果たしてどうでしょう。

 

    Swが42c㎡余でA/Ratio 5~5.5の使用に対して下図に示す平面図を作りました。

    Cr付根翼弦長3.70cm、Ct翼端翼弦長1.80㎝の台形前進翼で、Sw翼面積は41.80c㎡、

   A/Ratioは5.5としました。

 

    問題はこの主翼をどの位置に取り付けるか、つまり、主翼前縁をNose先端から後方に何センチの

   ところに取り付けるかということです。うかつには取り付けられないのです。その理由を示します。

 

   イ.ゼロ戦のshort nose profileを表現したいのですが、Noseにエンジンを載せていない紙ヒコーキを

    Shot noseにしようとするとエンジンに代わる多くのおもりをnoseに載せざるをえず、機体重量が

    3.3gを大きく超過する恐れがある。

                                             Sh・Lh

      ロ.同時に縦の安定性を確保する指標である水平尾翼容積比VH=―――――≧0.60 も満足

                                             Sw・MACw 

    させなければならない。

 

 

    Horizontal Stab.の後縁を胴体最後部から手前に0.2㎝のところに配するとして、VHの分子であ

   るSh・LhがSw・MACw=41.80×2.86=119.55の0.6倍よりも大きくなるよう、上記のイ.項

   を満足させるような取付位置をいくつもの試作機を作って探したのです。

 

    その結果得られたのがNoseの先端から2.80cmに主翼前縁を置くことでした。そのことにより、

   主翼と尾翼の平均翼弦MACが計算され、CG位置が決まり、尾翼面積とCGとCPh間の距離lhを導き

   出しました。

                          11.02×6.59

    それらをVH式に代入すると VH=―――――――――=0.61≧0.60

                          41.80×2.86

   とVHをクリアしました。

 

    水平尾翼は主翼と相似形とするのが一般なので Cr2.00cmとCt0.90cmは前もって決めて

   あったのでLh6.59cmは既知となっていました。そこで、VHが0.60を超えるよう尾翼の全幅を7.

   60cmにしてSh=11.02c㎡としました。

 

   説明を加えます。

 

  イ.全幅15.20㎝、全長12.00㎝です。

    重さを軽くするための設計値です。Noseを2.80cmよりも長くすると、全長が12.00cmを超える

    ようになり、ゼロ戦に見えないだけでなく重さの増加も懸念されます。

 

  ロ.主翼面積は41.80c㎡、AR 5.5で、次のように算出しました。

    B2乗/42=5.5  からB翼幅=15.20㎝

         (Cr+Ct)/2 ×15.20=42 

         Ct=0.5Cr

 

    この連立方程式を解くと  Cr=3.70㎝ Ct=1.80㎝ 翼面積Sw=41.80c㎡となり、工作し

    易いように直線で構成された台形前進翼にしています。  

 

  ハ.MACとCP圧力中心 

    MAC Mean Aerodynamic Chord空力平均翼弦とはその翼の平面形を代表する翼弦のことで、翼

   の重心位置を通る翼弦を意味しています。その翼弦長の前縁から40%点に発生した全揚力の作

   用点がありCP圧力中心としています。

    

    そのCP付近に機体の重心CGを置いて水平を保っているのが実用機で、尾翼は燃料の消費など

   によるCGの移動にCPが追従するように舵角を変化させています。だから英語では水平尾翼のこと

   を水平安定板Horizontal stabilizerといいます。

 

    一方、CGはCPよりも後方、ここではMACの50%点の付近に置いて尾翼にも揚力の分担を担わ

   せているのが紙ヒコーキの縦の安定です。これを揚力尾翼Lifting tail といい紙ヒコーキの特有なと

   ころです。

 

    紙ヒコーキのCPはCGより前方にあるのでNose upの姿勢になりますが、同時に尾翼の迎角も大き

   くなり尾翼のLiftがNose downのモーメントを発生してその2つの相反するモーメントが均衡した姿勢

   で滑空していることになります。

    

  ニ.VH

    縦の安定性を担う水平尾翼Horizontal stabilizerの位置と面積は、VH Volume of H/stabilizerを

   利用して求めますが、VHがCG位置によって変化する具合を下のグラフに示します。CGがMACの

   50%に置いた場合、VHが06を超えれば安定域となり0.55が下限値となります。

     

 C.機体の側面形を作る

   機体側面形のポイントは次の3点です。 

 

   イ.ゼロ戦らしい側面形

    胴体側面形は、大きな径の空冷星形エンジンをNoseに載せた、あのゼロ戦らしい形に表現しま

   しょう。例えば、水冷エンジンを載せた飛燕戦闘機とは明らかに違うように、しかも、工作し易い単純

   な線で構成するのがポイントです。

    エンジンを載せたNoseを太くしただけのような単純なくさび型よりも、Noseを斜めにカットして胴体

   底部を500㎝半径の円弧で構成した胴体の方が軽量化に寄与するだけでなく、とても躍動的な

   スーパーゼロ戦になるはずです。

  

  ロ.翼型 Airfoil profile

    いわゆる翼の断面形のことで、反りのあるのをキャンバー翼と反りのない平らな平板翼といいます

   が、大きな上向きの揚力を得たい主翼は当然にしてキャンバー翼を採用します。一方、上側だけで

   なく下側にも揚力を生じさせて機体の姿勢を制御する水平尾翼は平板翼となっています。そのあた

   りは実機も紙ヒコーキも同じです。

    実用機には厚みのある厚肉翼Thick wingが採用されますが、紙ヒコーキではケント紙1枚または2

   枚重ねで作る薄型円弧翼Thin circular wingまたは薄型三角形状翼Thin triangular wingが採用され

   ます。ここで作る紙ヒコーキには揚力の性能は変わらずに工作が容易な後者を採用しています。

 

    そして、最大翼厚位置(三角の頂点)は翼弦長の40~45%に置いて、その高さ(矢高、キャン

   バー)は1mmとし、キャンバーは2.7%となります。なぜ、40~45%なのかは、実用機のwingに

   倣ったからで、これにより、3±1%のキャンバーに対して2.50~5.00㎝の翼弦長に対応できま

   す。

 

  ハ.翼の取付角と取付位置

    取付角は胴体基準線との角度をいい、方眼紙の目盛りの方向です。主翼取付角0°、尾翼取付

   角0°とは、翼の前縁と後縁が方眼紙の目盛りに平行になるように描くことです。

 

    取付位置とは胴体の上側に取り付けるのか、下側なのか、ということですが、ゼロ戦の実機は胴

   体の下側に主翼をつけた低翼Lowwingなのです。しかし、ここで作るゼロ戦は、機体を投げ出すとき

   に胴体を指でつまみやすいように中翼Middle wingにします。よって、胴体の中ほどに翼型をした貫

   通孔を開けることになります。

 

    翼弦長3.70㎝、キャンバーが2.7%の薄型三角形状翼の貫通孔を正確に胴体に開けるにはど

   のような手法をとっているのか、については、部品図のところで詳述します。

 

  .垂直尾翼の面積と取付位置

    垂直尾翼の面積と位置も、水平尾翼の面積と取付位置と同じように一定のルールに従って決めて

   あげることで方向安定がしっかりとしたスーパーゼロ戦に仕上げることができます。 それは

 

                Sv垂直尾翼面積×LvCGと垂直尾翼距離

            VV=―――――――――――――――――――≧0.03 

                     Sw主翼面積×B翼幅 

 

    を満足させることです。これは必要な風見鶏効果Weathercock effectを得るための基準でもありま

   す。

 

    そこで、下式の計算で得られた3.47c㎡の垂直尾翼を作って取付、飛ばしてみました。

                0.03×41.80×15.20

           Sv= ――――――――――――=3.47c㎡

                       5.55

 

    しかし、風見鶏のようにきちっとまっすぐに飛んでくれなかったのです。何度やってみても同じでし

   た。胴体の曲がりや左右の主翼のねじれなどを注意深く点検してみても、不具合はありません。尾

   翼面積を計算しなおしてもまちがいはありません。再び飛ばしてみても、やはり左にそれてしまいま

   す。

 

    すこし胴体を右方向に曲げてみたところ、今度はふらふらと右方向に反れてしまいます。「どうして

   まっすぐに飛ばないのか」、予想外の挙動に唇はへの字です。

 

    そこで考えたのが、尾翼面積を少し増やして試してみよう、という対策でした。1cm四方の小片を

   ケント紙から切り出して、垂直尾翼の先端に継ぎ足したのです。のりしろを除いて増やした面積は

   0.8c㎡程です。

 

    「果たして、まっすぐに飛んでくれるだろうか」。  結果は、ぴたーっと微動だにすることなく飛んで

   くれたんです。原因は垂直尾翼の面積が足りなかったのです。「でも、先尾翼機も無尾翼機も0.03

   のVVで求めた面積で不都合はなかったのに、どうしてゼロ戦は0.03の計算では面積が不足する

   のか」という疑問にぶち当たりました。「何が違うのか」

 

                        

    このように、VVを満足させてもなお、方向の不安定を生じる場合があります。それは、機体重心を

   またいだ前方に大きな側面積があって風見鶏効果が抑制されている場合です。風見鶏効果は、重

   心より後方の側面積が前方に比べて十分に大きい場合に得られるからです。

 

    Noseの側面積が大きくなった場合のVVを下表に示します。Noseの幅を広げて面積が大きくなるに

   したがって、VVを大きくしなければ方向安定の確保が困難になることが分かるでしょう。

    

    このスーパーゼロ戦のNose幅が2.0㎝に対してTail幅が2.10cmなので Nose/Tail=0.95と

   なりVVを0.033を適用してSv=37.7c㎡と計算され、Cr=4.0cm,Ct=1.1cmの38.3c㎡にしてクリア

   になりました。

 

 

 D. 機体の正面形を作る

  

  イ.翼の上反角

    機体を正面から見ると翼が上側に反った上反角Dihedral angleが目に入ります。上反角は機体の

   横安定に関与していて、主翼には9~10°の上反角をつけますが、尾翼にはつけません。主翼の

   上反角 tangent9°=0.158×翼幅片翼7.6㎝ で片翼の翼端で1.2㎝反りあがっています。

 

    では、主翼に上反角をつけるのはなぜでしょうか。上反角を持たない紙ヒコーキを作って飛ばして

      みると、その理由が明らかになります。それは、上反角のない機体が滑空中に少し横に振れた時、

   そのまま振れた方向に滑ってしまうんです。しかし、上反角がついている紙ヒコーキは、自律的に、

   自らの空力的復元力で元の姿勢に戻るのです。これを上反角効果(Dihedral effect)といいます。

 

    例えば、機体が左方向に横滑りを起こしたときに、左主翼の迎角が右主翼よりも上反角の分だけ

   大きくなって右側よりも大きな揚力を生じることで復元します。さらに、中翼や高翼になると、左主翼

   と胴体との間の風圧の差も加わることになります。つまり、低翼にすると、より大きな上反角をつけ

   ることになります。  

    以上で三面図を描くことができました。

         

                                                     

 2.スーパーゼロ戦の部品図を描く

   

   先に描いたスーパーゼロ戦の設計三面図から機体の各構成部品を取り出して部品図に描きます。

  A4サイズのグラフ用紙に0.3ミリ太さで濃さ2Bシャープペンシルと直線定規、STAEDTLER Mars

  571(輸入品) または、DRAPAS Template E-108 (日本製)等の曲線定規を使って誤差0.5mmで

  丁寧に描きます。スーパーゼロ戦の場合は次の10部品です。

 

   イ.主翼ー補強板を含みます。

   ロ.水平尾翼ー補強板を含みます。

   ハ.垂直尾翼

   ニ.主翼の取付ガイドー胴体と主翼の取付が直角になるためのガイドです。

   ホ.水平尾翼の取付ガイドー尾翼と胴体の取付が直角になるためのガイドです。

   へ.くさび製作片ー適切なくさび型を切り出して9°の上反角を作ります。

   ト.胴体ー主翼と尾翼の翼型を正確に描きます。

   チ.胴体補強版ー4枚構造の胴体にする補強板です。

   リ.キャンバーゲージー主翼のキャンバー3±1%を確保するゲージです。

   ヌ.機体安置台ー車輪を出した状態で安置させます。

 

 

   部品図描画上の注意事項は次の通りです。

 

  イ.翼型の描き方

     

 3.切り出した部品の加工

 

   部品の加工は次の通りです。

  イ.主翼の加工 

  ⅰ.主翼の前縁になる一点鎖線に切りすじ(ケント紙の紙厚の半分ほどまでカッターを入れて折り曲

    げる手法)を入れて折り曲げて、接着剤tombow PIT ハイパワーを使って貼り合わせる。

 

  ⅱ.前縁中心線に切り込みを入れと共に裏側後縁中心線に切りすじを入れて上反角の加工を容易に

   する。表に返して、後縁中心線に沿って主翼取付ガイド片をPIT接着剤を使って貼り付ける。乾燥さ

   せる。

 

  ⅲ.主翼付根と翼端の弦長40%点につけたマークに裏側から直線定規を当てがい、定規のへりに

   沿ってくの字に折り曲げる。くの字状に折り曲げた翼型に2.7%のキャンバーゲージを当ててその

   キャンバーに添うよう折り曲げ角を微調整して薄型三角形状翼を作る。

 

  ⅳ.前項のキャンバーを狂わせないようにして、後縁中心線に沿って貼り付けた取付ガイド片に定規

   を当てて上側に折り曲げて上反角を作る。9°の上反角は下図のようにいして作り、その上反角に

   狂いを生じないように、三角形状に開いた前縁にくさび状に加工した2枚合わせの小片を挟み込ん

   で接着剤セメダインCで固定する。1時間ほど感想させた後、余計な部分をカットしてペーパーやす

   り等でスムースアウトする。

 

 ロ.水平尾翼の加工

  ⅰ.後縁になる部分の一点鎖線を切りすじの手法でカッターを入れ、折り曲げて貼り合わせることで2

   枚合わせの水平尾翼になります。水平尾翼には上反角はつけない。中心線に沿って取付ガイド片

   をPitで接着し、10数分放置して乾燥させる。

 

 ハ.胴体の加工

 ⅰ.短冊状の胴体部品の中心線に切りすじを入れ2枚合わせにしますが、はり合わせる前に次の作業

   を行います。

  ・左側胴体に垂直尾翼を取付ける。

  ・同じく左側胴体の前端に板おもりを取付ける。おもりの量はCGでうまくバランスするようにあらかじ

  め確かめておいたNoseから1.4㎝までの距離です。右側胴体にセメダインを塗布し、はり合わせて

  乾燥させる。

 

 ⅱ.主翼と尾翼の貫通孔を切抜く   下に胴体の部品図を示します。

 

 

   図の左側のa点と右側のa´点に定規を当てて主翼前縁部にカッターを滑らせると主翼前縁が切り込

   まれます。同じように、b点とb´点に定規を当てて後縁をカッターで滑らせると主翼後縁が切り込まれ

  ます。それは、それは主翼前縁の傾斜1/15(前縁翼弦長15ミリ、翼厚1ミリ)に対して、その前方に4

  倍の延長線上にa線を記し、後方にも4倍の延長線上にa´を記したからです。

 

   同じように弦長が22ミリの後縁についても22ミリの3倍がb点であり、後方では6倍がb´点なので、

  bとb´に定規を当ててカッターで切り込みを入れると、設計値通りの正確な翼弦が加工できます。その

  前縁と後縁の1ミリ下側に直線の切り込みを入れて両端にカッターを入れれば翼型を切抜くことがで

  きます。ポイントは切れ味のよいカッター刃で作業を行うことです。

 

   同じ要領でキャンバーを持たない水平尾翼について、cとc´点に定規を当ててその幅0.5ミリの平

  行な貫通孔を開けます。そして、直線定規と円弧状義を使って部品図の外形線に沿って切抜けばよ

  い。

 

   これらの作業により、Noseに所定のおもりがつき、主翼と尾翼の貫通孔ができ、垂直尾翼が取り付

  いて胴体の加工が完了する。

 

 

 4.機体の組み立て

   上反角とキャンバーがつけられた主翼、、平坦な水平尾翼、そして、主翼と尾翼の貫通孔が開けら

  れた胴体の3点を組み立てます。

 

   まず、胴体の左側から主翼を注意深く、主翼付根まで貫通孔に差し込んでその治まり具合を観察し

  ます。主翼前縁のくさびが入った部分がきちんと治まり、主翼と胴体を結合することに段差やすき間

  などの支障はないか、といった部分です。

 

   問題がないことを確認し、2個の物干しバサミを利用して主翼を胴体の貫通孔の翼型をした上側の

  前縁と後縁に押し当てて固定します。その際、主翼上面と貫通孔翼型の間に寸分の隙間もなく、しっ

  かりと組み合わされていることを確認して、液状の瞬間接着剤パワーエースをその結合っ分に適用し

  ます。

 

   10分間以上乾燥させ、主翼と胴体の間に塗布された接着剤が完全に乾燥していることを確認して

  物干しバサミを外します。

 

   水平尾翼も同じ手順で接着し固定します。その後、機体の前方から主翼の上反角と水平尾翼の水

  平具合が左右で均等であることを確認し、不均等であるならば注意深く修正します。

  

   最後に、切り出した左右の胴体補強板をセメダインCを適用して貼り合わせますが、Noseの部分や

  主翼下面との間に段差やすき間がなく、胴体底辺にぴたりと合わせることが重要です。それはとりも

  なおさず、仕上がりの精巧さ、出来栄えを左右するからです。

 

 

 

 

 5.主翼の前後を逆にした後退翼スーパーゼロ戦 ZERO-sen  を作る

    先に作った台形前進翼をもつスーパーゼロ戦とは一風変わったゼロ戦を作ってみました。主翼の

   前後を逆にして台形後退翼を主翼にした スーパーゼロ戦‐SBW型(Swept-back wing) というもの

   です。外観の形を変えてみて、その飛び具合を比べてみようという目的です。

 

    その設計コンセプトは次の通りです。

   ・機体の全長、全幅は変えない。

   ・主翼と尾翼の面積も変えない。

   ということで、ただ、主翼の前後を逆にして台形後退翼にしただけです。その設計三面図を示します

   が、主翼が前方に来て、台形前進翼のスーパーゼロ戦とはその表情がかなり違います。

 

 

 

    主翼と尾翼の面積を変えることなく主翼の前後を逆にしただけなので、VHは前進翼スーパーゼロ

   戦の0.61と同じにすることが縦安定の確保にとって重要なポイントです。0.61より大きくすること

   はかまわないけど、CGが前方に移動するので機体重量が増えてしまう恐れがあります。従って、

        11,02×6.59

   VH=――――――――― =0.61 となるように主翼の位置を決めればよいことが分かります。

        41.80×2.86

 

    早速、作ってみました。Noseが短い上に主翼前縁に後退角がついているので、まるでトビウオの

   ような恰好です。果たして飛んでくれるでしょうか。

 

    ”案ずるより産むが易し”で手を離れた瞬間、サー――っと飛んでくれました。こんな形のゼロ戦

   が、思いのほかよく飛んでくれたなあ、という思いです。やはり、飛ぶための基本から外れない限り、

   空を飛んでくれます。重さは3.35gf余ですから全翼面積かっ重は0.063gf/c㎡ですから予定通り

   の数値です。

 


                                                      

                                     

 

 

                       

 

 

              この章は終わりです。次は双胴型機 三菱閃電戦闘機 を作ります。

 

1.ヒコーキの形とその変遷

 

 A .ヒコーキの形と各部の名称

   この項では胴体に取り付く翼の位置と数からみたヒコーキの形の名前を説明します。

          

  イ.普通翼型Conventional wing form

          この形に特別な呼び方がないのでここでは独自に”普通翼”と呼びますが、主翼を胴体

          の前方に、安定板の役目をする小翼を後方に配した前後2枚翼の形です。後部胴体を2

          つに分けた双胴型Twin boom typeもこの形に属します。

 

  ロ.先尾翼型Canard wing form

          普通翼型の前後を逆にしたような主翼を胴体後部に、先尾翼とかカナード翼と呼ばれる

          小翼を前方に配した前後2枚翼の形をいいます。

 

  ハ.無尾翼型Tailless wing form

          主翼を胴体後部に配し、小翼を持たない1枚翼の形です。

 

 

   このBlogではこれらすべての形を紙ヒコーキにして飛ばしますが、奇しくもこの4つの形の戦闘機が

  先の大戦中に日本で製造され、あるいは計画されたので、それぞれの名前を借用して作っていきま

  す。

 

   まず、普通翼機ではあの三菱”ゼロ戦”を作り、次いで、双胴型機では計画図面だけで終わった三

  菱”閃電”を、そして、先尾翼機では九州飛行機”震電”を、最後に無尾翼機ではドイツ機の模倣ロ

  ケット戦闘機 三菱”秋水”を、といった具合です。

 

   機体各部の名称を下図に示します。

 

 

  B. ヒコーキの形の変遷

   世界最初の有人動力付きヒコーキが空を飛んだのは、1903年のアメリカのライトフライヤー号でし

  た。設計製作者のライト兄弟は、自作の水冷エンジンを2枚に重ねた主翼の下側翼の上面に置い

  て、後ろを向いた2つのプロペラを回しました。

 

   しかしその形は以外にも、現在世界中で最も普及している普通翼型ではなく、Elevator昇降舵の小

  翼を先端に付けた先尾翼型だったのです。なぜ、世界最初の有人動力ヒコーキが普通翼型ではな

  く、先尾翼型だったのでしょうか。そしてその後、普通翼型機が世界のヒコーキを席巻していったのは

  なぜでしょうか。

 

   このライトフライヤー号が空を飛ぶ以前の1800年代にも、多くの研究者が模型のヒコーキや動力

    を持たないグライダーを作って高いところから飛び出すなどして大空に舞い上がることを試みていた

  のです。

 

   多くの有人グライダーを制作したイギリスのジョージ・ケイリーや20年以上にわたりコウノトリやカモ

  メといった鳥の飛翔を観察して湾曲した翼面が大きな揚力を発生するといった揚力理論を記述した

  「鳥の飛翔」に関する書籍を発刊し、1896年には鳥の羽根のような翼を持つグライダーで250mの

  飛行記録を作ったけれど、残念ながら1896年に墜死したドイツのオットーリリエンタールもその一人

  でした。

   初期のころのリリエンタールのグライダーは主翼1枚だけの現在のハンググライダーのような無尾翼

  機でしたが、上の写真に写る進化したリリエンタール機は、尾翼を持つ普通翼型のグライダーに見

  えます。

 

 

   そんなリリエンタールの情報をライト兄弟は耳にしたに違いなく、Elevatorを機体の前方に配して大

  きく上げ舵にして、何とか墜落することだけは避けたかったのではないかと想像されます。なぜなら、

  Elevatorは機体後部よりも前部に配した方が、機首上げNose upの効果が断然敏感に働いてくれるか

  らです。下の写真は機首のElevatorを大きく上げ舵にしていることが見て取れます。

 

 

   それから3年後の1906年、ヨーロッパで初めて空を飛んだ友人動力付きヒコーキであるフランスの

  サントスデュモン機もライトフライヤー号と同じように水冷エンジンを主翼の上に載せて後ろ向きのプ

  ロペラ(Pusher type propeller )を持った、今でいう先尾翼型だったのです。

   それから3年後の1909年7月、突如、フランスのブレリオんⅪ(じゅういち)機がその距離43キロ

  メートル余もあるドーバー海峡を45分余りで横断したのです。その安定した飛行が賞賛されてドー

  バー海峡横断カップの賞金1,000ポンドを獲得しただけでなく、フランス政府から名誉の勲章を授与

  されたのです。

 

   そのブレリオⅪの形は、というと、ライト機やデュモン機とは似ても似つかない1枚の主翼を胴体の前方に、もう1枚の小さな尾翼を後部に配して、当時のオートバイ用の空冷エンジンを胴体の最前部取り付けた、今でいう普通翼型だったのです。

   アメリカのフライヤー号や同じ国のデュモン機の形にこだわることなく、ブレリオはどのようにして近

  代で最も普及している普通翼型にたどり着いたのでしょうか。それは、1900年初頭に作った羽ばた

  き機から始まった数多くのヒコーキの形を手掛けて大空を飛んでみたいというルイ・ブレリオ氏と彼を

  とり巻く研究者たちの燃えるような情熱と絶え間ない探求心にあったようです。

 

   1900年初頭   ブレリオⅠ  羽ばたき機Ornithopterを作るも飛ぶことはなかった。

   1905年           Ⅱ  ガブリエル・ボアゾン氏と出会い、彼のグライダー研究を手伝う。そ

                       の中の1機を購入してブレリオⅡとした。コウモリの翅のような形の

                       1枚翼。

   1906年      ブレリオⅢ  前から見ると楕円形の主翼と尾翼を持つ胴体の前方にアントネット

                       社製V8水冷エンジンを載せたが飛ばなかった。 

       

                    Ⅳ  Ⅲの尾翼を1枚翼に改良したが飛ばなかった。

                    Ⅴ  水冷V8エンジンを機体後部に載せた先尾翼型にしたけれど、離陸

                        時の機首上げ操作で後部につけたプロペラが地表に当たり破損

                        した。それ以降は先尾翼型は造らなくなった

                    Ⅵ  主翼と同じ大きさの尾翼を持つ串型機で水冷V8エンジンを機首に

                        載せた。

   1907年      ブレリオⅦ   尾翼を主翼の半分の幅にした。水冷V8エンジンを機首に載せ

                        た。

   1908年           Ⅷ   主翼で機体を支え、尾翼を安定板Horizontal stabilizerとして横の

                        制御を行えるよう1本棒の操縦桿を開発した。水冷エンジンを機

                        首に置いた。

                    Ⅸ  完成したが飛ばなかった。水冷V16エンジンを機首に置いた。

                    Ⅹ  記録がない。

                    Ⅺ  胴体を木材で作るとともに、アンザニ社製バイク用空冷W型3気筒

                        エンジン1基を機首に載せて軽量化を図った。

 

   ブレリオⅪがライト機やデュモン機とは全く違う普通翼型に発展したのは、彼が制作してきたヒコー

  キの翼の形、エンジン冷却方法そしてその装着位置に着目してその歴史をひも解いてみると、次のよ

  うなことが言えて近代の普通翼機の形に至ったものと推察されます。

 

   イ.ライト機やデュモン機に倣ってエンジンを後ろに乗せてプロペラを回す先尾翼機を造ってみた

     が、離陸のときにプロペラが地表をこすって破損してしまって以来、先尾翼型は造らなくなった。

   ロ.鳥のような1枚翼よりも機体の前後に2枚の翼をつけた方が飛行の安定性がいいことを知った。

   ハ.前部にエンジンを載せたために面積の大きな翼を前に置いて機体を支え、小さな欲を後ろに置

     いて縦、横、そして方向の制御を行えるように一本棒の制御棒(今でいう操縦桿)を発案した。

   ニ.軽量化という必要に迫られて木材で胴体を作り、オートバイに使われていた空冷エンジンを載

     せた。

 

 

    ブレリオⅢ               ブレリオⅤ

 

                     ブレリオⅥ                  ブレリオⅦ

              

   

      ブレリオⅧ                  ブレリオⅨ

                                        ブレリオⅪのタンザニW型空冷エンジン

                                      

 

 

   このW型をした空冷エンジンのcylinderを放射状に6つ、8つ、さらに2列、4列と増やして小型で高出

  力の星型エンジンが多くのヒコーキに装着されました。日本のゼロ戦や紫電改といった戦闘機も例外

  なく胴体の一番前に装着してプロペラを回しました。

 

   しかし、より速い速度と重火器を装備するよう軍から要求されたとき、大きな直径の星型エンジンを

  最前部に載せていることが大きな支障になっていたに違いなく、胴体後部に移して流線形に形を整え

  てその要求に応えたのが双胴型の三菱”閃電”であり、先尾翼型の九州飛行機”震電”だったので

  す。

 

   この形により時速700キロを超える速度と、機首に30ミリの強力機関砲を搭載することができるよ

  う計画されたけれど、閃電は机上の計画で終わり、震電も2機造られて終戦となりました。ライト機や

  デュモン機とは理由こそ違うけど、古典的なPusher type propellar(機体後部につけた後ろ向きプロペ

  ラ)に回帰したのです。

 

 

   近代に製造された多くのヒコーキを見てみると、閃電のような双胴型Twin boom typeの形はあまり

  見かけないマイナーな存在です。ジェットエンジンの普及によって高速化を目指そうとするとき、双胴

  のような込み入った胴体構造にする目的を持たないからでしょう。

 

   一方、先尾翼型は、そのユニークさと未来志向の形からビーチクラフト・スターシップ等いくつ

  かの民間機に採用されています。

                                                       ピアジュ・P180 アバンティ(イタリア)

                                 主翼と尾翼の距離が短いので先尾翼を追加して

             スターシップ            縦の安定を図っています。

           

 

   1980年代になって高速のジェット戦闘機の主翼の前方に小翼をつけた先尾翼型が表れました。ス

  ウェーデンのサーブ39、グリベン、フランスのダッソーラファー あるいはロシアのスホーイ30といった

  マッハ2級の超音速機です。もちろん、先尾翼を取付けた目的は閃電とも違うし、あのライト機やデュ

  モン機とも異なるものですけれど。

 

       ダッソー・ラファール                    ユーロファイター・タイフーン

 

                                                                                  スホーイ30

                                                                            

  では、これらはどのような目的の先尾翼型なのでしょうか。

 

      

 

   日本の航空自衛隊に国産ジェット機三菱T-2CCVという実験機が1機あり、上の左写真に示します。

  これは練習機T-2をCCV実験機に改造しいたものです。CCVとはControl Configulated Vehicleで直訳

  すれば形態制御機、つまり運動能力向上機のことをいいます。

 

   それは従来ケーブルで油圧バルブを制御して舵面を動かしていたのを電気信号に替えたFBW Fly

  by Wireにすると共に、機体の揚力中心を前方に移して故意に不安定にし、フラップを使って揚力の大

  きさやエンジン推力の強さを自動的に言制御して、あらゆる飛行条件に対して最良の運動能力を発

  揮できるようにコンピューター化したヒコーキなんです。

 

   従って、上の右の図で示すように、機体の姿勢を変えることなく旋回したり、姿勢を変えながら直進

  したりというような従来のヒコーキでは考えられない運動ができるのです。ラファールやタイフーン、ス

  ホーイ30の先尾翼は、そのような働きをするために取り付けられた先尾翼です。

 

   すなわち、T-2やラファール あるいはタイフーンの先尾翼は、ライト機デュモン機の”墜落したくない

  先尾翼”や、震電の”機首に星型エンジンを置きたくない先尾翼”、あるいは民間機にも採用され

  た”未来志向のかっこいい先尾翼”に続く”CCV先尾翼(水平カナードと呼ばれている)”ということにな

  ります。 

 

 

   最後に広大な翼面積を持つ1枚翼の無尾翼機Tailless wing formですが、縦の安定を図る水平尾翼

  はどこに行ったのでしょうか。  その答えは「この1枚翼の中に 同居している」  のです。

 

   後で紹介する無尾翼紙ヒコーキ”Strong秋水”は約53c㎡の翼面積にしてみたらtan6°の滑空を見

  せてくれるようになったのですが、それは奇しくもSuperゼロ戦の主翼と水平尾翼の合計面積41.80

  +11.10=52.90cc㎡と概ね同じだったのです。それだけではありません。よく飛ぶ先尾翼機Ultra震電

  の先尾翼と主翼面積を合わせた合計面積も、偶然に、52.84c㎡と概ね53c㎡だったのです。これ

  を”翼面積の53c㎡ルール”と呼ぶことにしました。

 

   では、水平尾翼面積と併せた1枚翼にする必要性はどこにあったのでしょうか。それは”より速い速

  度を可能にするための翼の形は”という課題がkey pointになります。

 

   音速の何倍も超えるような超音速飛行機を作ろうとすると、"より細い胴体とより薄い翼"ということ

  に指向して空気抵抗を極小化したいと考えます。それはペンシルのように細長く、でっぱりのない胴

  体に大きな後退角を持った主翼というセオリーになります。下図に示すように同じ翼厚でも後退角を

  つけることによって翼弦長Cが長くなって翼厚比が小さくなるからです。

 

   しかし、薄翼に大きな後退角をつけると翼端付近に生じた揚力が翼をねじるモーメントとなって翼の

  機能を果たせなくなります。その対策として左右両翼端にわたる桁Sparを追加した形が三角翼Delta

   wingとなって、フランスダッソー社ミラージュ戦闘機やアメリカコンベア社のF-102、あるいは

  F-106、そしてモックアップMock-up(実物大の模型)で中止となったアメリカ リパブリック社XF-103

  などに採用されています。

 

  デルタ型無尾翼機 F-102とF-106         主翼、尾翼ともデルタ翼のXF-103

     

 

   すなわち、水平尾翼を加えた広大な面積の1枚翼の必要性というのは、”ねじれを生じることのない

  堅固な薄翼”ということであることは多くの超音速機に採用されていることから明白です。  

 

   一方、三角翼ではなくカミソリのように極薄の直線翼を採用した超音速機もあり、アメリカロッキード

  社F-104や最新のF-35などを見てみると、大きな後退角の採用を避けるもうひとつの手段のように見

  えます。

 

               F-104                                                         F-35

                 

 

   では、無尾翼機の水平尾翼部分はどこにあるのか、と言えば両翼端部の逆キャンバーあるいは”ね

  じり下げ”の部分が該当します。この部分はCGから最も距離が離れた部分で、機体の縦方向の姿勢

  制御しているからです。

 

 

2.翼の揚力で浮き上がる

 

 A.機体を支える翼面積

   ヒコーキの翼に生ずる揚力はLift=1/2・ρ・v2乗・Sで表されますが、そのヒコーキの必要な最大速

  度と機体重量の関数にあります。多くのお客さんや荷物を積もうとするプロペラ旅客機は大きな翼面

  積にしなければならないし、軽量で素早い動きが要求される戦闘機は小さな面積の翼をつけるでしょ

  う。Lift=Weightの関係にあるからです。

 

   一方、飛行速度が5~6m/sとほぼ一定しいている紙ヒコーキは、機体の重さと翼の配置の違いに

  よる機体の形によって翼面積を導き出せばいいことになります。ここで作る全幅15cm余、全長12c

  m余の”15・12型紙ヒコーキ”の主翼を機体前方に配した普通翼、主翼を後方に配した先尾翼、一

  枚翼の無尾翼といった機体の形別の翼面積を下表に示します。

 

 15・12型紙ヒコーキの主翼面積と尾翼面積

    補足説明をすると、普通翼機の場合、CGと水平尾翼間の距離Lhを確保するために主翼を前方に

  置く必要があり、そのために機首に相当のおもりを置いているので機体の重さが他の形より重くなっ

  ています。

 

   約42c㎡の主翼面積とその25%の尾翼面積約11c㎡をVHで計算された距離Lhを放して取り付けて

  機体の重さが3,4g以下に抑えることで、どなたにもよく飛ぶゼロ戦を作ることができるのです。

 

   それは、先尾翼機も、無尾翼機も同じです。主翼と尾翼の面積を加えた全翼の面積は、揚力の落ち

  込みが顕著なテーパー比0.2以下の翼平面形を除いて、概ね53c㎡になる”翼面積53c㎡のルー

  ル”が、簡素な紙ヒコーキ作りという理念の表現という意味でここに生かされています。

 

   では、翼面に対して前から気流が当たると揚力が発生するのはどうしてでしょうか。理由は2つあります。

   イ.迎角げいかく Angle of attack--- 気流面に対する翼面の頭上げ角度

                                           気流の流れ方向に対して薄板の前縁を持ち上げると、薄板は浮き上が

                   ります。気流が薄板の底面に当たったことの反作用によるもので、揚力式

                   でいえば1/2・ρ・v2乗・Sの部分、つまり、気流の動圧×薄板面積 で

                   す。

 

   ロ.キャンバー 反りCamber---翼断面の上側への反り

                         気流に置いた薄板に上側へのキャンバー、反りを与えると、例え気流と

                   平行であっても上側へ浮き上がります。その理由は、反りによってその通

                   り道が狭くなったことで下面の気流速度よりも速くなったことにより静圧に

                   影響を与えるというベルヌーイの定理によるものです。

 

                    つまり、1/2・ρ・v2乗(動圧)+p(静圧、大気圧)=Po(全圧)一定 とい

                   う定理から、速い気流速度の上面の静圧の方が下面の静圧よりも小さく

                   なったことの翼の上・下面の静圧差によって浮き上がります。

 

                    イ項の薄板の角度と同様に、反りの大小によって揚力の大小に影響を

                   与えるので揚力式のCl 揚力係数lの部分です。

 

 

 

  B. より大きな揚力を得るための形

   機体を支えるに必要な翼の面積は前項で分かりましたが、より大きな湯力を得るための平面形に

  することも大切です。それは揚力式のCl揚力係数を大きくするためです。四角形の平面形がいいの

  か、三角形がいいのか、という問題です。つまり、翼が発生する揚力と抗力の比が大きく、且つ紙ヒ

  コーキだは工作し易いことが条件になります。

 

   大きな揚力を発生する割に翼端の誘導抗力がとても小さく理想的な翼平面形だともてはやされたの

   が先の大戦で活躍したイギリス スーパーマリン社スピットファイヤSpitfireや日本の99式艦爆などが

  採用した楕円形の前縁と後縁に囲まれた楕円翼(Elliptical wing)でした。

 

   しかし、数学的な楕円形に加工することに困難さがあったなかで、テーパー比が40%余の台形テー

  パー翼やその翼端を半円形に加工することで楕円翼と大きな差がないことが知られてからは、設計

  、製造が煩雑な楕円翼は採用されることがなくなりました。紙ヒコーキついても同様です。

   

 

   上のグラフは、翼幅効率e Span efficiency=誘導抗力係数Cdi/揚力係数Clが最小となる楕円翼のe

  を1.0とした縦軸に対して台形翼のテーパー比(Taper Ratio、TR,先細比)=Ct/Crの変化を横軸にし

  たグラフです。

 

   TRは大きすぎても小さすぎてもよろしくないのですが、だいたい0.4付近にしてやれば幅効率eが

  もっとも1に近づくことが分かります。しかも、それよりTRを小さくする方が効率の落ち込みが大きいの

  で、TRは0.3~0.6にすることが大切だと分かります。

   

   次にアスペクト比(Aspect Ratio、AR,縦横比)はどうでしょうか。ARを大きくすればするほど翼端に生

  じる誘導抗力Diが小さくなって楊抗比が大きくなり、よく飛ぶようになりますが、細長くなることで構造

  的な強度を保てなくなるのでおのずと限界があります。

 

   Cdi=Cl2乗/π・AR からCl=√π・AR・Cdi となってARの平方根と比例ます。なお、台形翼のAR=

  b2乗/S翼面積、楕円翼のAR=4・b/π・Cr で計算できますす。  

 

   翼型についても大きな揚力、小さな抗力ということになるけれど、この条件に合致するのが3%翼厚

  比の薄型円弧翼Thin circular airfoilまたは、薄型三角形状翼Thin triangular airfoilということになりま

  す。折り曲げることで最大翼厚位置を40%翼弦長に置けて工作し易という観点から、このBlogでは

  後者を採用しています。

 

   3%翼厚比といっても±1%の範囲を設けて2~4%ということになって、1mmの翼厚に対して翼弦

  長が25から50mmまでとこのblogで作るすべての紙ヒコーキに適用できます。

  

    薄型三角形状翼とキャンバーのない平板翼の揚力曲線を下に示します。3%のキャンバーをつけた

   三角形状翼は平板翼の1.3倍余の揚力を発生することが読み取れます

 

   機体の重さに対応する翼面積Sについては先述したけれど、それよりも大きくしてやればもっと大き

  な揚力が得られて、もっとよく飛ぶのではないかと思うのかもしれません。

 

   しかし、それほど単純ではありません。なぜなら、主翼面積を増やして主翼容積は大きくすれば、同

  時に水平尾翼容積も大きくするとともに機首のおもりも増やしてCG周りのモーメントバランスをとるこ

  とになり、予想以上に重さを増やしてしまいがちだからです。

 

   従って、機体の重さを支えるに十分で、なおかつ、必要最小限の面積が算出できたならば、おもり

  の量をなるべく少なくできるCGの位置を探したり、胴体の重さを軽くするよう工夫したり、あるいは翼

  のキャンバー、TR、ARを適正な値にしてClの増加に指向すべきです。

 

 

 C. 揚力の作用点(圧力中心、CP,Center of Pressure)を決める

   

       揚力分布や揚力の方向が一定しない翼面において、翼面上の圧力中心はどこなのでしょう。無限

  にある翼弦の中でどこか1ヵ所を代表翼弦を決めないと先に進みません。その代表翼弦は風洞試験

  で求めるわけにもいかないので、翼の重心位置が通る翼弦を空力平均翼弦(MAC Mean

  Aerodynamic Chord)として下式で求めてその代表翼弦とします。

 

                      2    TR2乗

                MAC=――(1+―――)・Cr

                      3    1+TR

 

   例えば Cr=5㎝、Ct=2㎝の台形翼のMACを計算すると TR=0.4なので

           2       0.4 2乗

      MAC=――×(1+―――――)×5=3.71㎝ となります。

           3       1+0.4

 

   圧力中心はキャンバー翼と平板翼とでは異なって、3%のキャンバーを持つ主翼はMACの前縁か

    ら40%位置、平板の尾翼は同じく前縁から30%位置 ということになり、図示すると下の左ようにな

  ります。

   

   キャンバー翼は40%で平板翼は30%の根拠は、翼の迎角とCPの位置に関する上の右グラフによ

  ります。主翼も尾翼も同じ40%にしても目立った不具合は生じません。

 

 

 D.機体の重心位置CGを決める

   機体の重心位置CG Center of Gravityは飛行中の機体の重さが作用するところで、揚力作用点

  CPや普通翼機と先尾翼機については主翼と尾翼あるいは先尾翼の揚力との合力点CPtotalの位置

  よりも前方に置くことが重要です。

 

   すなわち、機首または機尾に載せるおもりの量が最も少なくなるように主翼の位置を決めることにな

  ります。普通翼機、先尾翼機そして無尾翼機それぞれのCG位置を下に示しますが、詳しくは実際に

    それぞれの紙ヒコーキを作るときに説明します。

 

     ・普通翼機―――主翼MACの50~90%に置きますが、このBlogでは50%に置いた揚力尾翼

                機です。

     ・先尾翼機―――主翼CPから前方に R/S×Lcp+0.2~0.3㎝

     ・無尾翼機―――主翼CPから前方へ 0.4cm

 

   普通翼機の場合は、主翼MACの40%付近にCGを置けば実機と同じように主翼揚力だけで機体を

  支えることになるけれど、紙ヒコーキは50%よりもを後退させて揚力尾翼とするので主翼と水平尾翼

  の揚力で機体を支えることになります。

 

   先尾翼機も揚力尾翼の普通翼機と同じように先尾翼と主翼の揚力で機体を支えますが、1枚翼の

  無尾翼機は、エレボンに生ずる下向き揚力Downward liftによって縦の安定を図ります。

   普通翼機の場合、CGよりもCPwがっ前にあるように見えますが、主翼揚力と尾翼揚力の合力点

  CPtotalはCGより前方にはありません。

 

 

 E. 胴体への取付角

   普通翼型のゼロ戦や飛燕といった実機の主翼は前縁上げ2~3°の取付角をつけて、気流に対する迎角を大きくしています。しかし、推進動力を持たない紙ヒコーキは、その角度が有害な抗力となるので主翼と尾翼とも0°で取り付けます。

   この取付角によってCGとCPtotalはほぼ一致して水平姿勢となり、降下角度である5~6°」に相当

  する迎角で飛んでいると考えられます。それは4°の取付角を持つ」先尾翼機もエレボンを上げ舵に

  している無尾翼機も同様です。