真梨幸子/殺人鬼フジコの衝動(2008/2012)

小冊子まで読む元気がない。。

 

 

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自分にしか興味のない母親。その顔のほとんどはつくりもの。

装飾することにお金をかけ、酒びたり

こどもには給食費すら渡さない。

 

自分が一番の父親。外面だけはよく、見栄っ張り。

こどもにはろくな食事も与えずに、会社の部下を度々家に呼んでは

ご馳走をふるまう。

 

このような機能不全の家庭で育つ 「わたし」と「妹」 4人家族。

 

・・・

 

両親から虐待を受け、周囲の顔色ばかり窺って生きてきた主人公のフジコ

容姿は決してよくない。

 

小学生のとき、両親と妹が惨殺される事件が起こり

母方のおば家族と一緒に生活することに。

 

家族を一度に失い、凄惨な家庭環境に於かれていたフジコに

まわりの大人たちは優しかった。

伏し目がちな顔を見せればすぐに気遣ってくれる。

大人って簡単。

 

でも、こども相手じゃ そうはいかない。

フジコの”ズレ”が顔を覗かせ始め

とうとう とある事件を起こします。

きっと誰にもばれてない、気付かれてない。

 

・・・

 

やがてフジコも成長し、大人に甘えることをやめなくてはいけない年になりました。

アルバイトを始める 恋人が出来る

自分とは何もかもが正反対の親友も出来る。

 

・・なのに、うまくいかない

 

 

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フジコは運が悪かった。

まわりの人間、みんながみんな自分本位の ことごとく クズばかりだった。

誰しも自分がかわいい その面は持ち合わせているでしょう。

わたしだって。

でもそれを、他者を傷つけ、壊すまで振りかざすのは間違ってる。

 

本作に出てくるのは、凶器と化した自己愛に何の葛藤もない人間ばかりです。

ヒトのこころに巣食う どす黒いものを ぎゅっと凝縮させたような

そんな感情がむきだし。

 

普段、必死にひた隠し、見ないようにしている部分を見せられて

とても気持ちが悪くなる。

 

 

フジコは”現在”までの成長過程で何度も殺人を犯していくのですが

それを重ねるごとに、本当に何の抵抗もなく

まるで自分はどこか別のところから見ている

傍観者かのように描かれています。

 

小学生の頃から、じぶんの立ち位置を見誤らんと

友人を格付けし 自分より上位のものには媚びへつらう厭な現実感と

躊躇なく人を殺める非現実感の差に、酔います。

(殺すというより邪魔なものを片付けている感覚に近い)

 

 

全体としては「連鎖」「業(カルマ)」がテーマとなっていることもあり

最後まで読みきると、もう一度はじめの章を読まずにはいられません。

 

ところどころ目を背けたくなるような描写がありますが

すきなひとは好きかと思います

ミステリーとしてはおもしろかったです。

 

 

「なんとかしなくちゃ。どうすれば、いい?とりあえず、ここをでなくちゃ。

今度こそ、ここをでなくちゃ。

ここを出れば、きっと、わたしたちにはまだ未来がある。」

徳間文庫 真梨幸子/殺人鬼フジコの衝動 限定版(2012)p.285 13行-15行より抜粋

 

 

 

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