14時。大手町のオフィス街。たくさんの人が無表情で歩いている。

学生の慶太も就職活動が始まり、スーツ姿はその風景と全く違和感がなく溶け込んでいた。

ゲイであることはそこまで悩んでいない。ただ、将来が不安だった。

就職活動の影響で、未来の自分を嫌でも考えなくてはいけなかったのだ。

1時間前の面接を思い出しながら歩いていた。


「未来自分の理想像を教えてください」

面接官の質問に一瞬言葉が詰まった。

浮かんだのは人生のパートナーであろう人と、一緒に笑っている光景だった。


結局、あらかじめ考えていたありふれた事を言った。

面接官は納得したようだが、自分は未来について考えるたびに不安になった。


インターネットのゲイサイトには自分より年齢が倍以上の人も良く見かける。

彼らのほとんどがその年齢にもなってパートナーを見つけられずにサイトを彷徨ったり、

一夜の関係だけを求めていたりする。

自分もこうなる可能性がないと言い切れるのか?


今まで、自分はたくさんの人とクラブやバー、インターネットを通して出会った。

でも本当に恋愛したといえるのは過去、一度きりだった。


政治家を見その彼を思った。

選挙では理想論を並べて関心のよい事ばかり言って国民を信頼させる。

そして、それを信じて自分は投票する。しかし、必ず言ったとおりに行動するわけではない。

騙されてしまったのである。見極めることができなかったのだ。


自分は彼の言葉と優しさに魅かれ、それを信じて付き合った。

しかし、自分の見る目がなかったのか、自分が考えていたような人ではなかった。


将来の自分はそれを判断できる人間になったいるだろうか。

人を信じることはリスクが伴うのかもしれない。だからこそ同時に価値もあるのだろう。