熊本では馴染みの深い「家族湯」。
みなさんは、家族湯に入ったことはありますか?
50分や60分など、決められた時間
温泉のある部屋を貸し切りで利用することができるのが「家族湯(家族風呂)」です。
家族湯は、熊本をはじめ、九州に根付く温泉文化です。
大切な人と温泉を貸し切って入浴することができる家族湯。
一人で入ることも、多くの家族湯で可能です。
家にお風呂がある現代でも、わざわざ出かけて入りたい魅力があり
ここ熊本では、昭和40年代から、今に続く文化です。
私には夢があります。
それが、この素晴らしい温泉文化を世界中の方々に知っていただき、
「kazokuyu」を世界共通語にすることです。
海外の方には、まだまだ公衆浴場に抵抗がある方も多いと思いますし、
人目を気にせずに温泉を楽しめるということは、
様々なコンプレックスを抱えている方々にもニーズのあること。
この家族湯文化について、書かせていただきました。
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私が暮らす熊本にたくさんある家族湯。
元々は、旅館にあった「貸し切って入ることができる温泉」を、もっと気軽に利用したい。
という要望があり、家族湯が誕生したと言われています。
家族湯「源氏」のご主人・桑原さん
現在も営業を続ける山鹿にある家族湯『源氏』の桑原さんは、
「昭和27・28年ごろだったかな、親戚がよく『旅館末広』さんの貸し切りできる温泉に行っていたんです。宿だけど外来でも入ることができて、浴室は2つあったかな・・・」と当時のことを教えてくださいました。
その後、昭和42年にお客さんからの要望を受けて『新町温泉』さんが誕生します。
残念ながら2017年に閉店されましたが、それまでは「山鹿で最初に誕生した家族湯」として
たくさんのファンに愛されてきた家族湯です。
家族湯は、「家族の湯」という名前通り、
小さなお子さん連れのお客さんや、ご夫婦など、親しい方と入ることが多い温泉です。
私は、この家族湯は、「当たり前にある温泉の営業スタイル」だと思っていました。
菊池郡大津町が地元の私にとって、ちょっと車を走らせれば、「家族湯」があちらこちらにあったので、なんの疑問もなく利用していたんです。
近くにあると気づかない魅力。
それが「家族湯」でした。
その魅力に気づいたのは、熊本で最初に温泉ソムリエ認定セミナーを開催したときのこと。
セミナーの講師として来熊した温泉ソムリエ・家元の遠間さんが、
「家族湯だけで営業が成り立っているの? これってすごいことですよ」
と言われたんです。
「え?なんで家族湯が?」と思っていた私にとって、この一言は、大きな衝撃です。
そこから、私の家族湯の歴史探訪が始まります。
そういえば山鹿方面には家族湯が多いな。なんでだろう?
そんなことを考えながら調べていると、
ふっと目にした「山鹿温泉」のパンフレットに、
「家族湯は山鹿が発祥だと言われている…」といった内容が書いてあったのです。
なるほど!と思い、どこが最初なんだ?と探していると、
たどり着いたのが『新町温泉』さんだったのです。
昭和42年に家族湯専門の施設が熊本に誕生し、
その後、「精養軒」さん、「湯の里温泉」さん、「かみの湯」さんとオープンします。(現在、閉店されています)
「家族湯」という言葉自体は、鹿児島に明治時代からあったようなので、
現在も残る「家族湯専門の施設」としては、山鹿がはじめてかもしれない…と思っています。
とは言え、過去の資料が少なく、現在、調査中です。
残念ながら、昭和40年代にオープンした家族湯は、後継者不足などもあり閉店している施設が多く
施設充実のリゾート型の家族湯も増え、従来の日常型の家族湯のニーズが
減ってしまったこと、お風呂のある家庭が増えたことが影響しているでしょう。
現在、山鹿に残る家族湯の中で
一番古いと言われているのは、
昭和46年開業の『再会温泉』さんです。
レトロな看板など、開業当時の趣きを残し、
すりガラスの入った扉を開けると脱衣スペースがあり、
その先には、鮮やかなブルーのタイルの浴室が。
日中に入ると、窓から日が差し、タイルのブルーが輝く、綺麗な家族湯です。
時代の変化に合わせて、利用時間や料金を少し変更していますが、そのほかは、当時のまま。
泡つきの湯は、かけ流しされており、体を芯からぽかぽかと温めてくれます。
お話を伺った『源氏』さんは、昭和49年創業。
中庭があり、開放感のある造り。
それまでの日常型とはちょっと雰囲気が変わり話題だったことでしょう。
どちらも、山鹿の温泉の特徴でもある「アルカリ性単純温泉」。
柔らかい湯が心地よく、美肌に嬉しい湯です。
他にも、山鹿市には、熊入温泉、平山温泉、菊鹿温泉、鹿本温泉(総称して「やまが温泉郷」)があり、そのほとんどの地域に家族湯専門の施設があることからも、それだけ、山鹿エリアには、「家族湯文化」が根付いているということです。
ちなみに、『源氏』の桑原さんは、「子どもは家族湯にしか連れて行ったことがなかバイ」とおっしゃいます。山鹿方面出身の方に話を聞くと、大体、こんな答えが返ってきます。
我が家は暮らしている地区に家族湯がなく、「公衆浴場派」だったので、
私は、大人になって家族湯好きになった派。
小さい頃から、家族湯に通っていたのが当たり前という話は、何度聞いても驚きです。
(そんな方々が、結構、家族湯のオーナーさんになっています)
コロナ禍の今、
「身近な人と・・・」というのがキーワードの一つになっています。
家族湯は、身近な人とお出かけする目的地の一つに、本当にぴったりだと思います。
そして、また戻ってくるインバウンドに向けて、
「家族湯」は、世界に誇りたい温泉文化の一つ。
ものすごく極端ですが、
「みんなで家族湯に入れば、戦争にならないんじゃ?」と思っています。
ネットで連絡を取ることができる便利な時代。
でも、やっぱりface to faceは大事です。
そんな時代に、あえて会って、一緒に温泉に入るって、面白い。
それに、そこで生まれる会話は、思い出の一つになることでしょう。
「家族湯」は、大事な人との絆を深めるコミュニケーションツール。
そんな意味でも「kazokuyu」を世界共通語にしたい。
そう願っています。



