エンゼルスが抱える“最大級の問題契約”といわれてきたアンソニー・レンドン。その名前が、ついに本格的な「引退協議」という形で再び大きな注目を集めています。2020年に結ばれた7年2億4,500万ドルという超大型契約は、当時大きな期待と称賛を浴びました。しかし、その後の展開は誰も想像しなかった方向へ転がり、いま球団とレンドン本人が向き合っている現実は、MLBの契約リスクを象徴する事例として語られています。
レンドンは2019年、ナショナルズの中軸として打点王を獲得し、ワールドシリーズ制覇に貢献したスター選手でした。走攻守揃った実力派であり、移籍しても同じ活躍ができると誰もが信じていたでしょう。ところがエンゼルス加入後、彼を待っていたのは予想をはるかに上回る故障の連続でした。ハムストリング、股関節、手首、太もも、すね…まるで“故障箇所コレクション”とも言われるほど、毎年のように新しい痛みが発生し、シーズン出場数は40〜50試合が定着。年間数十億円の契約選手が、半分も出場できない状況が続きました。
その中でも特に物議を醸したのが、2024年に本人が語った「野球は最優先ではない。これは仕事であり、生活のためにやっている」という発言でした。この言葉は多くのファンを落胆させ、レンドンへの評価をさらに厳しくする決定打となりました。プロとしての姿勢を問われ、ファンの信頼は一気に地に落ちたのです。
そして今、残された契約は1年・3,800万ドル。エンゼルスはこの契約をどう処理するべきか、レンドン本人はどのようにキャリアの幕を下ろすのか。静かに、しかし確実に「契約の終焉」に向かう協議が進んでいると報じられています。
ここで考えたいのは、果たしてこれは“レンドン個人の失敗”なのか、それとも“球団の判断ミス”だったのかという点です。私個人の分析では、このケースは両者に責任が分散していると感じています。レンドンは30代に差し掛かり、過去にも筋肉系の故障が複数あった選手でした。長期契約において最も重要な「耐久性」と「リスクの見極め」に対し、エンゼルスは十分な評価を行わなかったように見えます。一方で、選手本人のコンディション管理やメンタリティも万全ではなく、双方のバランスが崩れた結果、この“不良債権契約”と呼ばれる状況が生まれたとも言えるでしょう。
大規模な契約が成立する背景には、期待、投資、計算、競争、そしてリスクが常に存在します。今回のレンドンの件は、「スター選手の実力だけでは巨大契約を成立させられない」というMLBの厳しい現実を改めて浮き彫りにしています。リスク管理に失敗したとき、失うものは想像以上に大きいのです。
今後、レンドンのキャリアはどのような形で着地するのか。そしてエンゼルスはこの判断ミスをどのように立て直していくのか。彼の超大型契約の終焉は、球団の未来とMLB全体への重要な教訓となるはずです。注目すべきポイントはまだまだ多く、この問題は今後も長く語られていくことでしょう。