シトリン夫婦は夕食のみを一緒に食べる「夕食婚」である。

自宅を本宅と呼び、仕事場を別宅と呼ぶ。

シトリンは夕食のみを旦那様と食べるために本宅に帰っているのである。

シトリンは本日めでたく66歳を迎えた。

免許更新のハガキがきていた。

加えて、２時間の「違反者講習」付きである。

半日で終わらせたかったので、朝一に出向き、手続き後、10時からの講習を受けることにした。

更新手続きは無事終わり、10時から始まる「違反者講習」の部屋に入った。

60人くらいの受講者の中で、どう見てもシトリンが最高齢だ。

「お前たちは違反をしたんだ。この講習を受けないと免許証はあげないよ」ということである。

確かにシトリンは違反をした。しかも５年間で２回も。

講習が始まった。

マスクを着け、超活舌の悪い講習担当者の説明が始まる。

シトリンは文字起こしの仕事をしている。

この講習の依頼が来たら、「音声、難」の部類に入れてもいい。

目を閉じて下を向き、音声だけに集中すれば聞き取れる。

まわりを見てみると、皆ちゃんと前を向いて聞いている。（この２時間さえ終われば免許証がもらえるのだ）

シトリンはだんだん腹が立ってきた。これが２時間続くのかと思うと気分も悪くなってきた。

プロジェクターに映される図表などを棒で指し、説明が続く。

次に説明しますが、●×△□なんです。

というふうに、最初と最後だけは大きな声ではっきり言う。
大事なところは意味不明。プロジェクターの図表で確認するしかない。

シトリンは思った。
この説明も動画にしてナレーションを付け、担当者は指し棒でさせばいいのに。

毎回同じ講習なんだろうから、そのほうがよほど理解しやすい。

とても聞き取りにくい場面でも誰もなんのリアクションも起こさない。
ただただ２時間をやり過ごす罰ゲームのようなものである。

よその講習会では、「どう思いますか？」などと指名されて答えを求められることもあるらしい。

途中、21分の映画が上映される。

「これならいいや」とシトリンは思ったが、そうはいかなかった。

映画が流れている間に、担当者が指し棒を持って、説明を入れる。

「もうこらえて欲しい」（シトリン心の声）

担当者１人だけでも聞き取りにくいのに、聴き取りやすいはずのナレーションと被るのである。

せっかくの映画も台無しである。

途中10分の休憩時間があった。

「左ハンドルと右ハンドルで点数が違います」

ええっ？今はそんなことになっているんだ。

プロジェクターを見た。

「左ハンドルは・・・」

「次は右ハンドル・・・」

プロジェクターには２つの表が映っている。

画面が次に移ったときにシトリンはやっと理解できた。

担当者は「右半分と左半分」と言っていたのである。

シトリンももう、大人の対応で残りの時間を聞き流すことにした。

そもそも、違反をした人に「今後、違反をしないでね」の、為になる講習会ではないのか？

もういいや。

罰ゲームに耐えた後のご褒美に新しい免許証がもらえった。

コロナで講演会や会議等がなくなり、この２年間シトリンの文字起こしも依頼がほとんどなくなった。

ひさびさ文字起こしのリハビリさせていただきました。

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違反者講習は罰ゲーム？