中国農業環境汚染と大きな関連のある化学肥料の行方。2月20日付Economistによると、世界の大手肥料製造企業が再編の動きにあたると伝えています。本日はその訳を以下に記してみます。

 農業資材の高騰の中で肥料も2008年をピークにしつつ高騰しており、最近の若干の値下がりを更なる価格高騰に向けた「買い」のチャンスと捉えています。ノルウェーのYara社は41億ドルを出しアメリカTerra社を買収、Yara社を世界最大の窒素肥料製造企業に押し上げました。ブラジルの巨大鉱山企業Vale社も48億ドルを投入した買収を行い、リン酸肥料、カリ肥料でブラジルの農業市場に進出していきます。その他、BHP Billiton社(同じく鉱山企業)もカナダのカリウム採掘企業から鉱山を買い取るなど、鉱業企業から肥料生産企業への働きかけが続いています。カリウムが人々をひきつけており、Vale社やBHP Billiton社がアメリカのMosaic社やカナダのPCSと言った肥料会社にもアプローチしたという噂の背景ともなっています。

 これらは今後の人口増加と食糧問題;食糧増産、及び食生活の変化から来る畜産業での飼料ニーズ増などから、肥料のニーズは長期的に高まると言う予想が、大きな背景にあります。中国はその巨大な人口と耕地の荒れ具合から、肥料ニーズが更に増大すると見られています。今のところ、中国は窒素肥料を主に自国生産していますが、リン酸肥料、カリ肥料は既に輸入国となっています。世界の5000万トンと言われるカリ肥料の4分の1を中国が消費しており、15年の内には中国だけでその消費量が2600万トンにまで増えるという予想もあります。

 その他にも、肥料が他の商品よりも価格の戻りが遅いことから、特に銅などにより最近好況である鉱業企業にとってはお買い得となっていることもあります。カリウムなどはこれら企業の鉱山から取れることもあり、業界としても近いと言えます。

 Yara社の動きはアメリカにおける天然ガスの低価格にも拠るところがあります。窒素肥料製造のコストの4分の3は燃料コストであり、アメリカの安い天然ガス+同国の大量の農民と言う市場の近さが、Terra社を更に魅力的にしたと言えます。神様は肥料メーカーに微笑んでいるようです。