中 九兵衛のブログ 大和川流域歳時記

      < 12月29日 撮影 >


 大晦日。もう、今年も終わりですね。


 今夜から元旦の未明にかけて行なわれる、京都東山・八坂神社の「おけらまいり」。

 書棚の整理で出てきた、若き日の詩集に、それを記したものがありました。

 詩集は、季節季節に歌った青春歌で、名付けて秋冬「青」春夏。しゅうとう・せいしゅん歌。

 恥ずかしながら、折にふれて、ご披露します。



      ● 秋冬青春夏-1   ひとりぼっちの おけらまいり


  何を恐れ 何を願い ぐるぐる回す

  凍(い)てつきそうな 手の冷たさに耐えながら


  古都の心に しばし身をうずめたくて

  四条通り行く人の 列の中に紛れ込む

  それぞれの胸に みな願い事を秘めるのか

  振り向き見上げれば 月は十三夜

  満つる日を前に 何を考え 何を見守る

  その月に しがみつくよな 星ひとつ

  何故か 親しみ感じつつ


  祇園さんの石段登れば

  耳を突く はげしい売り子の声

  薄らぐ興趣に とまどいながらも

  吉兆縄を買い求め

  出店並ぶ参道の 人の流れに身をまかす

 

  おけら木燃える灯篭に 集まる人はみな

  われ先にと 縄を差し出し 火を移す

  何を そんなに急ぐのか

  何を そんなに求めてる


  おけらまいりで終り、始まる 古都の一年

  この火で雑煮を炊けば

  無病息災の御利益(ごりやく)ありと 人は言う

  自動点火のガステーブルに

  この火が役立つわけでもないのにと

  ふとよぎる 冷めた心を恥じながら

  火縄振り 家路を急ぐ人 見つめる


  四条通りのざわめき逃れ

  底冷えきつい 細露地くぐり

  昔ながらの町並みをさまよう

  気付けば無意識に回す 自分の手

  早くも白みはじめた 鴨の流れを渡る頃

  火縄振る人 ほかになし


  消してしまおか 続けよか

  ひとりぼっちの身にとって

  あてのない火は いらないけれど

  この手は 何故か止められない

  何が そんなに恐ろしい

  何を そんなに願うのか

  消せない心は 何のため

  消せない心は 誰のため

  ひとりぼっちの 火縄振り 



 因みに、「八坂神社」は、平安建都の以前からある古い神社。860年前後の貞観(じょうかん)年間に、時の関白・基経の寄進により、疫病の守り神である牛頭天王(ごずてんのう)を合祀、祇園の社と呼んだことから、京都では、八坂神社というより「祇園さん」の名で親しまれています。


 また、本来のおけら祭りは切火(きりび)でおけら(キク科の多年草植物)を焚き、その煙のたなびく方角を見て吉凶を占う神事ですが、いつの頃からか、参拝者がその火を火縄に移して持ち帰り、雑煮を煮る風習が生れたと言われています。


 季節は移ろい、時の流れの中に、あと数時間で一年の区切りがやってきて、おけら木が燃え、煙がたなびきます。よいお年を。


中 九兵衛のブログ 大和川流域歳時記


      中 九兵衛のブログ 大和川流域歳時記


          中 九兵衛のブログ 大和川流域歳時記


 12月28日の夕方、西の空に見えた雲。来年のエトのようにも見えました。



★☆ 大和川叢書④『流域歳時記・甚兵衛と大和川~この日何の日』 12月31日 要旨 ☆★


 昭和6(1931)年の年末。国鉄関西本線の「河内堅上駅」と「王子駅」の間の、大和川右岸にあった「亀の瀬トンネル」が、周辺地形の地すべりで崩壊し、大和川に土砂が流れ込みました。

 同じ位置でのトンネル復旧は無理なことから、対岸に移し、2本の鉄橋で従来線とつなぐことになり、昭和7(1932)年の大晦日のこの日、単線運転が再開されました。