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     < 野沢菜の花 >         < 天王寺蕪 >


 温泉とスキーで全国に名の知れた、長野県下高井郡の「野沢温泉村(のざわおんせんむら)」。

 村の特産品は、これまた有名な、「野沢菜」。

 その種子は、雪解けと共に成長し、5月になると、それはそれは見事な菜の花畑になるといいます。

 村の木は「ブナ」、そして、村の花は、勿論、「野沢菜の花」です。


 今を去ること、250余年。宝暦6年(1756年)のことです。

 村にある「健命寺」の和尚が、大坂で食した蕪(かぶら)のあまりの美味しさに、その種子を分けてもらい、500キロも離れた村まで持ち帰り、種を植えました。

 しかし、大坂よりも寒冷で土壌も違う信濃では、蕪は育ちませんでした。

 が、葉と茎だけは、見事に大きく育ちました。これが、「野沢菜」の誕生です。


 その野沢菜の親ともいうべき野菜、天下に名を馳せるほどの美味であった野菜。

 時代が進むにつれ、大阪では「幻の野菜」と化してしまいます。

 実は、その野菜こそが、「なにわの伝統野菜」の一つとして力が注がれている「天王寺蕪」だったのです。


 今や、野沢菜が村のシンボルとして定着した野沢温泉村では、野沢菜の親が天王寺蕪であることは、みんな子供の頃からよく聞かされ、知らない人はいないと言います。

 そして、観光客のみやげ物の包装にも、発祥の経緯の説明に天王寺蕪のことが書かれています。

 また、村には野沢菜株式会社ならぬ、「のざわな蕪四季(かぶしき)会社」があって、年1回、これまた株主総会ならぬ、「蕪主(かぶぬし)総会」と称すイベントが行なわれ、全国のファンとの交流が行なわれています。


 これほど盛り上がっている一方、「天王寺蕪が野沢菜の親」・・・そんなことは全く知られなくなった大阪。

 平成7(1995)年、大正末期の『天王寺村誌』で、天王寺蕪が天王寺・阿倍野付近の特産品であったことを知った、難波りんごさんの探究が始まります。

 野沢菜との関係も耳にし、マスコミにも発表しました。


 地元の宝を伝えたい・・難波さんの一途な気持ちに同士が集まり、平成9(1997)年には「天王寺蕪の会」が発足。難波さんはその会の事務局長を務め、更なる活動が続けられました。

 平成18(2006)年の野沢菜発祥250周年には、会の一行14人は、「のざわな蕪四季会社蕪主総会」にも出席、健命寺の記念法要にも参列し、親子の会の交流も始まります。



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 その、難波りんごさんがガイドを務められた、去る10月2日(日)の、「大阪あそ歩~阿倍野ルート」。

 今回のゴールは、「安倍王子神社」の敷地内にある「天王寺蕪」の顕彰碑でした。


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 難波さんは、この碑の前で、先の経緯を、何枚もの野沢菜の包装の記載などを手に、熱く語られました。

 「なにわの伝統野菜・天王寺蕪」にかける愛情や、歴史を知ってもらいたいという気持ちが、じんじんと伝わってきます。
 明治7(1874)年に東成郡天王寺村に開校した、現在の「市立天王寺小学校」(天王寺区大道1)の校章も、「天王寺蕪」を模(かたど)ったものだそうです。

 同校のはぐくみネットだよりは、「天小かぶら通信」。「かぶちゃん」というマスコットも制定しています。


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 平成21(1909)年には、「蕪主総会」20周年を記念して、健命寺の僧侶が歩いた道を辿るウォークイベントが、「のざわな蕪四季会社」の企画、「天王寺蕪の会」の後援で行なわれました。

 11月1日の「蕪主総会」を目指し、四天王寺境内での「出発式」が行なわれたのが、その年の今日・10月10日のことでした。


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 「あべの」の魅力の虜になってしまいそうな、「あべの入門編」。

 ガイドの難波りんごさん。サポーターの長谷川信正さん。お疲れ様でした。

 そして、大変お世話になりました。ありがとうございます。

 難波りんご著『もうちょっと知っとく? 私たちの阿倍野』を再読し、もうちょっと勉強し直したいと思います。


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      < 阿倍野区美章園2 豊下製菓㈱ 「なにわの伝統飴野菜」 >


 大和川叢書④『流域歳時記・甚兵衛と大和川~この日何の日』の10月10日は、1704年の大和川付け替え工事中、狐の加護を願って「浅香山稲荷神社」を建立、この日に遷宮式が行なわれた説を紹介しています。