「貴方のためにドアを開けたり閉めたりしている、このジェントルマンは誰?」

先生の事だ。

私はシドニーに着いてからすぐ、早く友達を作ろうと、シティ中心部にある英語学校に通っていた。そこで発音の授業で出会ったチリとオーストラリアのハーフの先生に私は密かに憧れていた。

「He's my teacher」
Binneyにしか話してない先生の事を、今日初めて会った目の前の彼女が知っている。仕事の相談までとは明らかにちがう、本当に観えているんだと実感した瞬間だった。

あまりにもびっくりして、私は興奮しながらこう話し始めた。

「彼は私の通う英語学校の先生で、コースについて相談しに行く度に、優しくドアを開けてくれる。丁寧にドアを閉め、親身に相談に乗ってくれた後は、また迎えてくれたのと同じくらいの丁寧さでドアを開けて送り出してくれる、まさにジェントルマンというのにふさわしい人なの。」

話を聞いた彼女は微笑みながら、こう続けた。

「彼は今、リレーションシップに対してオープンだから近づいてみてもいいんじゃないかしら。」

先生と私?!だって、私は生徒だし、先生は先生だし、そんなのとても無理、と話を聞きながら恥ずかしくて私はそれ以上は聞けなかった。


そんな私をよそに、目の前の彼女はさらにこう続けた。

「You'll be traveling all over the world to find your right guy (貴方は運命の人に出会うために、世界中を旅することになるわ)」

この言葉がこの後出会うどんな言葉より私にとってあまりにも真実で、今までの人生の謎が一気に解けたような、私は嬉しくておかしくて、声を出して笑い出してしまった。


「運命の人に会うために!」


ずっと心の中で探し続けていた運命の人。必ず会えると知っていたたった一人の人。先生には憧れていたけど、必ず出会うたった一人の運命の人とは違う存在だということも分かっていた。どうしていつだって外国に行きたかったのか、日本にその存在はいないと分かっていてシドニーに来たこと。全てにつじつまがついて、私はこの日、これから始まる7年間の旅の目的を告げられることになった。