ぼくはらっきょ 後編
カレーさんからの独立を決意したぼくは、古くからの友人に相談しに行った。
島らっきょくんだ。
ぼくとかれは幼稚園からずっと仲良くて、いつかビジネスで成功する日を夢見て、同じ日に故郷を後にした。
運良くカレーさんに気に入ってもらえたぼくが早めに人様に知られるようになったけど、そんなぼくを見てかれはずっと違和感を感じてたらしい。
数年前にたまたま再会した時のかれは、公園で生活をしなければいけない程、仕事も収入もほとんど皆無だった。
その時ぼくはかれに言われたんだ。
「所詮おめーはカレー野郎の金魚のフンだろ。今に見てろよ。ぜってーおめーを追い抜いてやっからよ」
それから数ヶ月後、彼は独自の切り口からビジネスを展開させて、見事誰の力もかりる事なく大成功を収めていた。
「沖縄ブーム」という部分に乗っかり事業開拓し、子供が苦手な味という事を逆手にとり「大人の酒のつまみ」というジャンルで仕事の幅を広げ、華麗な程のセルフブランディングで一躍トップスターに躍り出た。
今では、新進気鋭のクリエイターである海ぶどうくん、サーターアンダギーくん達と一緒に、沖縄を代表するスターにまで成り上がった。
そんな彼に僕は独立する旨を伝えようとアポを取ったんだ。
待ち合わせ時間30分程遅れでやって来る島らっきょくん。
送迎のリムジンからは島唄が大音量で流れている。
どうやらスケジュールが詰まってるらしく、ゆっくり話す時間も無いらしい。
多分、ぼくの顔を見て何を話そうとしてるかわかったんだろう。
サングラスかけてても僕の顔を見てない事ぐらいすぐにわかる顔の角度で、何も言わずにそのまま札束を渡して颯爽と帰っていった。
あの時の公園で出来てしまったお互いの溝を埋める事も、独立の相談する事も出来なかった。
こんな時に限って、故郷で「お互い成功したら、仕事で一緒に何かできたらいいよな!」っていう約束を思い出して涙が出てくる。
しょんぼりしたぼくはついつい福神漬けくんに電話してみた。
電話が繋がらない。
仕方無いから、仕事に戻ろうとカレーさんに今溜まってる案件を聞こうと電話してみた。
留守電だ。
しばらくしたらカレーさんのマネージャーから電話があった。
「ごめんねらっきょちゃん。福神漬けがらっきょちゃんの独立の話をカレーに話したみたいなんだ。そしたらカレーがキレちゃって、らっきょちゃんを破門にするって...。だからウチらカレーのスタッフは、もうらっきょちゃんに連絡取れないんだ...。ごめん...。ホントごめん...。」
「え?」という暇無く電話が切れた。
途方にくれる僕。
頭の中も真っ白。
しばらく経って、ふと冷静になると景色も一面真っ白だった。
そう、フラフラになりながら歩いてた僕は、いつの間にか駅前のそば屋に侵入し、カレーライスの上に腰をかけていた。
知らず知らずのうちに一番落ち着く所に来てしまうのは、ぼくがまだらっきょとしての精神を保ててる証拠だろうか。
見知らぬおじさんにスプーンですくわれるぼく。
口の中にコロンと入れられ、舌の上で転がされながら僕は気がついた。
結局ぼくは、どこかで誰かに頼ろうとしちゃってるのかもしれない。
誰かに転がされ続けてきたから、いつまでたっても一人で考える事が出来ないんだ。
自分で考え自分で行動する事が、セルフブランディングの第一歩であり、自分自身のプロデュースなんだ。
そう思うと、島らっきょくんがあんなに冷たかったのも、カレーさんに突き放されたのも納得がいく。
みんな僕の性格をわかってるから、あえて冷たくしてくれたんだ。
おじさんに舌の上で転がされた後、上下の奥歯が僕を圧迫する。
ミシミシ、ガリガリと音をたてながら身体が壊れていく。
そうだ。
「独立したい」っていうアバウトさじゃなくて「何をやりたいか」って事が大事なんだ。
お酢という名の血が吹き出している。
薄れゆく意識の中でぼくは決意した。
「よし・・・まず・・・は・・・ぼくの・・・肩書きを・・・しっかり・・・決めて・・・名・・・刺を・・・うぅ・・・」
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島らっきょくんだ。
ぼくとかれは幼稚園からずっと仲良くて、いつかビジネスで成功する日を夢見て、同じ日に故郷を後にした。
運良くカレーさんに気に入ってもらえたぼくが早めに人様に知られるようになったけど、そんなぼくを見てかれはずっと違和感を感じてたらしい。
数年前にたまたま再会した時のかれは、公園で生活をしなければいけない程、仕事も収入もほとんど皆無だった。
その時ぼくはかれに言われたんだ。
「所詮おめーはカレー野郎の金魚のフンだろ。今に見てろよ。ぜってーおめーを追い抜いてやっからよ」
それから数ヶ月後、彼は独自の切り口からビジネスを展開させて、見事誰の力もかりる事なく大成功を収めていた。
「沖縄ブーム」という部分に乗っかり事業開拓し、子供が苦手な味という事を逆手にとり「大人の酒のつまみ」というジャンルで仕事の幅を広げ、華麗な程のセルフブランディングで一躍トップスターに躍り出た。
今では、新進気鋭のクリエイターである海ぶどうくん、サーターアンダギーくん達と一緒に、沖縄を代表するスターにまで成り上がった。
そんな彼に僕は独立する旨を伝えようとアポを取ったんだ。
待ち合わせ時間30分程遅れでやって来る島らっきょくん。
送迎のリムジンからは島唄が大音量で流れている。
どうやらスケジュールが詰まってるらしく、ゆっくり話す時間も無いらしい。
多分、ぼくの顔を見て何を話そうとしてるかわかったんだろう。
サングラスかけてても僕の顔を見てない事ぐらいすぐにわかる顔の角度で、何も言わずにそのまま札束を渡して颯爽と帰っていった。
あの時の公園で出来てしまったお互いの溝を埋める事も、独立の相談する事も出来なかった。
こんな時に限って、故郷で「お互い成功したら、仕事で一緒に何かできたらいいよな!」っていう約束を思い出して涙が出てくる。
しょんぼりしたぼくはついつい福神漬けくんに電話してみた。
電話が繋がらない。
仕方無いから、仕事に戻ろうとカレーさんに今溜まってる案件を聞こうと電話してみた。
留守電だ。
しばらくしたらカレーさんのマネージャーから電話があった。
「ごめんねらっきょちゃん。福神漬けがらっきょちゃんの独立の話をカレーに話したみたいなんだ。そしたらカレーがキレちゃって、らっきょちゃんを破門にするって...。だからウチらカレーのスタッフは、もうらっきょちゃんに連絡取れないんだ...。ごめん...。ホントごめん...。」
「え?」という暇無く電話が切れた。
途方にくれる僕。
頭の中も真っ白。
しばらく経って、ふと冷静になると景色も一面真っ白だった。
そう、フラフラになりながら歩いてた僕は、いつの間にか駅前のそば屋に侵入し、カレーライスの上に腰をかけていた。
知らず知らずのうちに一番落ち着く所に来てしまうのは、ぼくがまだらっきょとしての精神を保ててる証拠だろうか。
見知らぬおじさんにスプーンですくわれるぼく。
口の中にコロンと入れられ、舌の上で転がされながら僕は気がついた。
結局ぼくは、どこかで誰かに頼ろうとしちゃってるのかもしれない。
誰かに転がされ続けてきたから、いつまでたっても一人で考える事が出来ないんだ。
自分で考え自分で行動する事が、セルフブランディングの第一歩であり、自分自身のプロデュースなんだ。
そう思うと、島らっきょくんがあんなに冷たかったのも、カレーさんに突き放されたのも納得がいく。
みんな僕の性格をわかってるから、あえて冷たくしてくれたんだ。
おじさんに舌の上で転がされた後、上下の奥歯が僕を圧迫する。
ミシミシ、ガリガリと音をたてながら身体が壊れていく。
そうだ。
「独立したい」っていうアバウトさじゃなくて「何をやりたいか」って事が大事なんだ。
お酢という名の血が吹き出している。
薄れゆく意識の中でぼくは決意した。
「よし・・・まず・・・は・・・ぼくの・・・肩書きを・・・しっかり・・・決めて・・・名・・・刺を・・・うぅ・・・」
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