私にとって2023年の最も思い出深い出来事と言えばカーネギーホールでのリサイタル開催に違いない。


エージェントを通さず自分でホールと交渉することにしたものの、これが実に骨の折れる作業だった。

あらゆる事柄を自身の責任において契約を交わしていく日々に私の思考回路は完全に疲労し、NYへ発つ頃には毎日の食事さえ何を食べるか決めることも頭が働かなくなっていた。


ただ、その様な中にあって、毎朝目が覚める度に、ホールのホームページに自分のリサイタルが告知される等、一つずつ夢が叶っていく喜びもあった。


公演を開催するにあたり、劇団時代のご縁にも随分と助けられた。

それはもう神の御手の様に私の前に現れては必要な人達のもとに導いてくれた。

あの時、私は知らずにご当地の法を犯しかねない難局にさえあった。

誰一人が欠けても公演は成立しなかったと言って過言ではない。


大舞台に臨む私を利用しようとする者もいたが、一方で名も知らぬ私の為に尽力してくださる方々にも恵まれ、そして沢山の温かい励ましに支えられた。


カーネギーのホールは何年も前から予約しなくては借りられないということを終演後に知った。

あの日、ホールを抑えられたのは奇跡だった。

しかしそれが叶ったということは、そこがゴールではなく、今後その経験を活かす必要があるが故なのだろうと私は考えている。


後日、公演に駆けつけてくれた現地の友人と話す機会があった。

西洋占星術を心得ている彼女は言う。

「あの日の星回りはとても難しいものであり、それは『貴方はそれでも心折れることなくやりきれますか?』という星からの問いでしたが貴方は見事にこなしましたね」

その時緊張の糸が解けた私は涙が溢れるのを拒むことが出来なかった。


私の大きな夢が叶った2023年。

私を大きな夢へと手をとってくださった沢山の恩情に心よりの感謝を記して。