看取り
「(父は)桜は見れないでしょう」と医者から余命宣告を受けて自宅で父を看取りたいと希望する母のために、私は環境を整備しつつ母の心が落ち着くまで時間が必要だったのでサポートをしたりして周りのことで忙しくしてたそうやって過ごしているうちに、内観がすっかり後回しになって自分がどんな風に感じているかを把握してなかった家族みんなが大体覚悟が決まり、肝がすわって「楽」になってきた時私は安心してほっとしたのか、父とふたりきりになった瞬間ずっと押し続けていた緊張のスイッチがふと切れて父の前で突然泣き崩れてしまった心配そうな父と目が合う私はなんだか申し訳ない気持ちになって顔を伏せて声を押し殺した麻痺で寝たきりになり、言葉が出ない父普段は手にも力が入りにくいのに、泣きじゃくる私の手を父が強く握ったり緩めたりする父にあやされているみたいで、落ち着こうとしていても涙が止まらないこの穏やかな日々の、生の延長に死があるように父が安心した気分で旅立てるようにとここに至るまで準備してきたのにな誰よりも自分が先に崩壊して、寝たきりで動けない父に心配をかけてしまってあぁ、情けないちゃんとしなきゃ、とかしっかり見送らなきゃ、とかいい歳なのに肝の座りが甘い、とか頭の中で自分を責めるフレーズがバーっと流れるけれど使い古しのカセットテープ(ここにきて昭和w)のようで上手く聞き取れなくなってた泣いているうちに、そのフレーズも溶けて流れて去っていき静寂が訪れるあぁ、また私背伸びしちゃったのか・・・かっこいい自分をあきらめて笑ったまだまだあるある、理想とリアルの統合でも以前より強く感じるのは情けない自分も本当はずっと許されていたし私自身もそんな自分をとっくに許してたんだよなぁダメだと思っていた自分も幻想だったんだ帰ってきた母に「ごめん、お父さんの前で泣きじゃくってしまったよ」と白状したら「やっぱりねー、出かける前にあなたの様子を見てたらそんな気がしてたのよ」と母にはお見通しだったようで、私を見て微笑む「あなたの娘、ご心配おかけしてまーすw」と母が父に悪戯っぽく話しかけると父はウインクして笑って応えた