拝読。
環世界という用語と定義は表面的に知っていたので、その内容が書かれている本ということで、
書店で見つけ衝動買い。
全ての動物にはそれぞれの環世界というものがある。
それは知覚器官、知覚標章、作用器官、作用標章、知覚が作用に接続する制御部にて構成されている。
当時、生物学で生物の本質論として挙がっていた、
生体機械説(デカルトが主張)との対比で、すべての動物には固有の主観世界があり、すべての動物に共通の客観世界を機械的に生きているわけでないという主張が様々な例をとってなされる。以下対比
基本思想|生物は物理・化学的法則に従う機械のような存在|生物はそれぞれ固有の主観的世界(環世界)を生きる主体
主体性の扱い|生物は受動的で、外部刺激に反応する装置|生物は能動的に意味を見出し、世界を構築する存在
知覚の捉え方|感覚器官は情報を処理する部品|感覚器官は世界を構築する枠組みであり、種ごとに異なる
世界の構造|世界は客観的・普遍的で、すべての生物に共通|世界は生物ごとに異なる主観的構造を持つ
(例:ダニは匂いと温度だけで世界を認識)
哲学的背景|デカルト的還元主義|カント的認識論を生物学に応用
生物の行動理解|行動は刺激と反応の因果関係で説明可能|行動は知覚と作用の連鎖(機能環)によって意味づけられる
※生成AIの助けを借り生成
【所感】
めくろからすは動いているキリギリスしか見えないとか、ダニは酪酸の香りで、行動を決定しているとか、
ミミズは味覚でものの運び方を変えているだとか、ミツバチは視覚ではなく、空間的直観で帰巣場所を決定しているだとか
様々な生物豆知識(興味深い)が見れる本。
今では常識だが、環世界という考え方の先駆けとなって本として一見の価値あり。
この世界には客観があり、神が設計した美しい理論に基づいて調和されている自然という価値観から、
適応と生存、進化の結果、それぞれの主観によって構成される環世界が絶妙なバランスで相互に影響しあい成り立っており、今の複雑だが美しい自然の設計を成立させていると思うと、神秘的な気分になる。
短い本なので、暇つぶしにもどうぞ