学生の頃、寮の部屋からビオラを盗まれた。その前週に同じところからCDをごっそり50枚くらい盗まれていたので、友達と「昼間部屋に潜んでたら泥棒を捕まえられるかも」と話していた矢先だった。悔しかったが、出くわさなくてよかったかもしれない。入り口は木のドアと枠につけた金具を南京錠で留めただけの簡単なものだったので2週連続で軽々と壊された。
警察を呼んで被害届を出した。調書を作るので、楽器の特徴は、と聞かれた。カールヘフナーというメーカー名と、色、大きさくらいしか答えられない。見ればそれが自分のだとわかるが、他人に説明できる個々の特徴といったものはうまく説明できない。しょうがないから4本の弦の色を答えておいた。
犯人が見つかれば連絡しますと言って警官は帰って行った。しかしその後連絡はなかった。CDのほうは、盗まれたのと同じものが数枚固まって近所の本屋の中古品売り場に並べられているのを見た。ケースの汚れ具合などをみても自分のだと思ったが、証拠がないので取り返せなかった。
盗まれた楽器は楽団から借りていたものだったので、弁償することになった。痛い出費だ。楽器屋に同じものがなく、同ランクならこのあたりでしょうと紹介されたものは、覚悟していたよりかなり安かった。泥棒はその後ビオラをどう処分したか知らないが、売っても大した値段にならなかっただろうと思う。
最近、ビオラを電車の網棚に置き忘れた。注意していたつもりだったが、練習帰りにした買い物の袋を持っていたので意識から抜けてしまっていたのだろう。駅のエスカレーターを下りたところで気づいてホームに戻ったが、当然、出た後だった。駅員に告げて探してもらったら、途中の1つ目の駅では見つからず、2つ目の駅では、それらしいものを見つけたが車内が混んでいて回収できず、結局終点で無事回収された。楽器のケースを明るい目立つ色にしておいてよかった。ところで、網棚は、今は網でできいるものはほとんどないが、やはり網棚といっていいのだろうか。