JRのりてむ

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JR完乗を記念して制作した乗車記。拙くても、自分にしか書けない文章を目指したい。

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 終点の岩泉でたくさんの客が降りる。客の半分以上が鉄道ファンだ。私は一人、タクシー乗り場へと足を運ぶ。岩泉線と同じくらい楽しみだった観光地、龍泉洞へ。涼を求める観光客の車が駐車場にひしめき合っている。盛岡からはバスも出ているから、岩泉線を使って訪れる観光客は珍しかろう。わざわざ日本最強のローカル線を使って…

 違う。私が望む世界とは違う。私の想像していたローカル線とは違う。

どのボックス座席にも先客がいる。話し声が賑やか。窓にビデオカメラを貼り付けている鉄道ファン。これが日本最強のローカル線の姿なのだ。岩泉線という名の観光列車にローカル線の風情を求めてはいけない。ありのままの現実を受け入れろ。


 私の望むローカル線とは何なのか。今までローカル線の本質を車窓に求めていた。海でも、山でも、川でも、平原でも構わない。ビル街や住宅街から逃れ、田園地帯を抜け、大自然へ誘う。窓を開ければ、潮風や緑の風、高原の風が肺を満たす。それがローカル線。
 しかし、もっと重要な条件が隠れていた。それは、閑散とした車内。いくら車窓が美しくても、いくら旅情をそそる車両でも、混雑した車内では台無しである。もちろん、お客さんあっての鉄道。自身の目的のために排除しては元も子もない。例えるなら蜘蛛の糸。他者を蹴落とせば、極楽への道は閉ざされる。それでも…

 「次に来るときは、ボックス席を独り占めして、窓を全開にして、緑の風をいっぱい吸い込むんだ。」
そう心に誓った。


 数年後、岩泉線と再開を果たした。確かに人は少なかった。ボックス席も独り占めできた。しかし、もう窓は開かないのだ。老朽化のため、新しい車両に置き換えられていたのだ。誓いはもう守れない。そして間もなく、岩泉線は土砂災害により不通、廃線の道を辿ることとなる。日本最強のローカル線、岩泉線は終焉を迎えるのだ。否、私が初めて出会ったときから、既に終わっていたのかもしれない。



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