材料は確保できたので、第一の関門に挑戦することにする。
それはどこかというと、純正ステムでメインパイプがハンドルクランプと
繋がる所で、少し細くなっている所が確認できると思う。

 


 今回は、この部分の加工に挑戦することにする。

 パイプを細くしたり広げたりする加工は、へら絞りという
加工が一般的だと思う。


 へら絞りといえば、ドラマ「下町ロケット」でも取り上げられたそうで、
他には金管楽器のらっぱ部や、シンバルの加工などが有名だと思う。
 ちなみに私は、へら絞り加工は未経験だったりする。
いや、そもそもチタン合金の加工自体が未経験なのだが。
  ただ、全くの素人かと言われると、本業が精密プレス金型設計製造なので
金属の薄板をコップのような形に成型する絞り型は、何度も製作したことがある。

 それでいつかは、へら絞りにも挑戦してみたいと思っていたので
ちょうど良い機会だと思い、加工に挑戦してみることにする。


  ただ、へら絞りは、真鍮やアルミ等、比較的柔らかい材料が多く
いきなりチタン合金というのは、難易度が高いとは思うのだけれど。

 へら絞りを簡単に説明すると、旋盤に取り付けられた芯金や型に
素材をヘラで少しずつ押し付けて形を整えていく加工と言えるだろうか。

 

 今回の場合は、外径35mmのパイプの先端を30mmに細くするわけで、
変形量は少ないのだけど、なにせ素材が325チタンであり、
試しにパイプ内に芯金を入れて、焼きの入った金属棒をへら替わりに
押し付けて見たが、表面は焼き付き気味に荒れて、最後にはあっさり
割れてしまいました。

 

 いろいろ試したところ、最終的に、ローラーを付けた工具を
自作し、素材をバーナーで加熱しながら、ローラーをバイト代わりにし
旋盤で、芯金を入れたチタンパイプ少しづづ押し付ける感じで
なんとか希望する形状に成型することができました。

 

自作工具です


 

こういう加工をするのは、NC機械より、押し付ける力加減を調整しやすい
汎用機の方が良いですね。 

 

加工が終わってすぐのチタンパイプです。

まあ仕上がりが荒いのは、初めての加工ということで勘弁してください。

 

加熱する感じは、パイプが変色する程度で赤化する一歩手前ぐらいでしょうか。
  ただ加熱すると材料の変質が懸念されますし、せっかくCWSR材を購入したのですから
できたら冷間で加工できればと思っていたのですが、どうにも加熱しないと
加工は難しい感じです。

 

 またへら絞り等、金属は圧縮や曲げ加工を行うほど金属は硬化していきますので
それが、加熱を伴うことで、どう変化するかを見極めなければなりません。

  最近は、自分で焼き入れすることも少なくなりましたが
以前は、炭素鋼の油焼きや水焼きを自前で処理していましたが
合金によれば、急冷せず自然空冷で硬化するものもありますから。

 

  自転車のフレームなんかで絶対避け無ければいけないのは
加工硬化し過ぎて、靭性がなくなり脆く衝撃を受けると、
いきなり破断してしまうことでしょうか?

かといって個人で本格的に加工後の特性を調べるのは難しいところがあります。


 ということで、簡易的に万力で挟んでみて硬化しすぎていないかを
調べてみました。

 

 この写真程度に万力で圧力をかけて変形させても、


万力から外せば、元の丸い形状にすんなり戻ってくれます。

 


自分は、実用的な靭性やバネ性は確保されているという判断をして次の加工に
進むことにしました。
実際、加工前の素材と比べても、バネ性はさほど変化していない感じなのですね。

 

 

磨いたら、少しはきれいに見えますね。(^^ゞ