阿波 第10日目 ② 小松大師~別格四番・鯖大師~ゴロゴロ海岸 | 四国八十八カ所 お遍路日記

四国八十八カ所 お遍路日記

お遍路日記・感謝と合掌の遍路道

10:30 

 海陽町に入るとヘンロ小屋・第一号香峰がある。

   平成13年12月、遍路が休憩出来る「ヘンロ小屋の第1号」が、海南町に完成しました。

   JR牟岐線阿波海南駅のすぐ傍で、地元の野村カオリさんの所有地です。

  野村さんは亡くなったご主人の供養の為に、40才の時から四国88ヶ所を巡っています。

   徒歩巡拝をする時には、トイレと腰を降ろすところが必要だと20年前から思っていました。

 そんなときに訪れたのが、県立近代美術館で開催された「四国88ヶ所ヘンロ小屋構想展」でした。

  展示を見て「こんなヘンロ小屋があったら良いと思っていた」と開催者に申し出て、野村さんの夢が実現することになります。

          ヘンロ小屋・香峰

         四国八十八カ所 お遍路日記

  小屋には人が支え合う姿をイメージした2本の柱が使われています。

 洗面台、水洗トイレ、ベンチ、囲炉裏や冷蔵庫も有り、寛ぎのひと時を過ごしてもらおうと、色々な工夫がされている。

   完成してから野村さんを始め、地元の人達が優しい笑顔で接待をしています。 

  使われている木の素朴な温かさだけでなく、小屋にいると人と人との触れ合いの大切さを改めて再認識させてくれる、

  そんな場所として、これからも多くの人々に愛されていくことでしょう。      

             野村カオリさん

         四国八十八カ所 お遍路日記

  平成22年5月、 ヘンロ小屋で休憩させて頂いていると、元祖・野村カオリさんがお見えになったのでお話を少しお聞きし、記念に写真を撮らして頂く。

             竹馬の遍路さん

         四国八十八カ所 お遍路日記

   そこへ千葉県在住の竹馬の遍路さんが来られる。旅では色々の形で、遍路に挑戦している人に出会うことも自分の糧になる。

 この方、1日約10kmの行程であるという。色々な人との出会い、ヘンロ小屋・第一号らしく素晴らしい休憩所であった。 

             竹馬の後ろ姿

         四国八十八カ所 お遍路日記

 「香峰」を過ぎて海部川を渡り、国道の小さな峠を登ると「遊遊NASAふれあいの宿」の入口駐車場に「ヘンロ小屋第三十九号・NASA」がある。

            ヘンロ小屋

          四国八十八カ所 お遍路日記

   小屋の形は、近くの母川に生息する「大うなぎ」のイメージです。費用は匿名の方々の寄付等により建設され、完成した小屋は土地の管理者である海陽町に寄贈されたそうです。

           バス停兼休憩所

         四国八十八カ所 お遍路日記 

        轟の滝と松とサツキ

         
  峠を下り那佐湾の入り江を左に見ながら、6km程進むと徳島県の最南端、高知県との県境にある宍喰町の集落に入る。

            旧土佐街道

         

   国道沿いの海岸に面して、平成9年にオープンした道の駅・宍喰がある。

 ホテルも併設され、レストラン、日帰り温泉も揃って、多くの観光客や目の前の砂浜で遊ぶサーファー達で賑わっている。 

            道の駅 宍喰

         四国八十八カ所 お遍路日記

   23番札所と24番札所の間にあることから、日帰り温泉で疲れを癒したいる遍路も居ると云う。

            宍喰海岸

         

  「道の駅・宍喰」から南へ150m程離れた国道沿いに「ヘンロ小屋6号・宍喰」がある。

 小屋は道路面から下がった土地にある為、海の眺望を確保できる高床式の構造で建っている。

            ヘンロ小屋

         四国八十八カ所 お遍路日記

   建設は建築職人のボランティア団体に、学生のボランティアが協力した。

 「道の駅」が近いこともあり、何度か野宿する遍路の姿を見かけました。

   国道を離れ旧道を行き、宍喰川を渡ってカーブすると古目大師がある。

  鯖大師より14.9Km。

        番外霊場 古目大師 

           本尊 弘法大師

  古目のお大師さん、または清水のお大師さんと呼ばれる。名前の由来は古目という地名からである。

           古目大師堂

         四国八十八カ所 お遍路日記

   この大師堂前の旧土佐街道 を200 m程山沿いに進むと番所跡がある。

 阿波5大関所の一つで、阿波から土佐へ越す山道の登り口付近にあり、土佐との国境警備上、阿波では重要な関所であった。

 古目という地名も「古い目付」からきたと云われ、別名の清水大師というのは堂裏近くに清水が湧き出ていたことに由来する。

  四国霊場を参拝をしていると、弘法大師と水と深い縁があることに気付く。

  以前、湧いていた清水も弘法大師の霊感により、湧き出るようになったと伝えられている。

  この大師堂に安置されている弘法大師像は、高さ1尺2寸の座像で古い石仏で、ほかに境内には剣山大権現遥拝碑がある。

   堂の壁面に板碑が在り、

「発心道場徳島最南所、自浄の信心を発して、無常の菩薩を求む、願わくは自他もろともに、仏の道を悟りて 生死の海を渡りすみやかに、解脱の彼岸に到らん」とある。

         剣山大権現遥拝碑

         四国八十八カ所 お遍路日記

   参拝を終えて、再び国道に合流すると県境の水床トンネルである。

  全長638mの水床トンネルは歩道にガードレールが有り安心して歩けた。

  これで発心の道場・阿波の23ヶ寺と別格4ヶ寺を、大師と同行二人で無事打ち終えることが出来た。道中の色々の出会いと天候に恵まれたことに感謝しつつ、これからの行程を思い気を引き締めて県境の水床トンネルに抜ける。

            水床トンネル

         

   ここからはいよいよ土佐の国に入り、修行の道場・土佐の始まりである。

  「修行の道場」と云われる由縁は土佐の札所は阿波の国より7か所少ないが、歩く距離は倍近くなる為だろうか。

  最初に訪れる第24番札所・最御崎寺まで約40km、室戸岬突端に建つ寺へは太平洋沿いの長い道程を行くことになる。

   両側に海と山しかない遍路道は、阿波の国で見た風景とは違う美しい自然が広がっているだろう。

   しかし、決して楽な道ではない修行の道である。

    甲浦大橋

   

 そのまま国道を直進して、甲浦大橋で甲浦漁港を一跨ぎする。右折して下りて行くと区切り打ちで利用した「阿佐海岸鉄道」の甲浦駅がある。

            甲浦駅

         

   大橋からは切り込んだ岸壁に沿って、ちょっと寂しげな甲浦漁港が見える。

   しかし、今日は少し様子が違うので通りかかった地元の人に尋ねると、年に1度の「トントコ祭り」が行われていると言われた。

           甲浦港と御座船

         

   中世以来、京阪神と結ぶ海路の要衝として栄えてきた東洋町の甲浦港。

   その繁栄の記憶を残す「トントコ祭り」が10月18日に行われる。幸いにも今日である。

  物見遊山の旅であれば、ゆっくり見学したいが橋の上から暫く見学した。

  港に面して鎮座する熊野神社の秋祭り。和歌山・熊野那智大社の神が沖合の二子島に飛来したとの伝承から年に1度、御座船(神輿船)を仕立てこの島へ行き、シロスと呼ばれる濁り酒を供える神事である。

            海の駅・東洋町

         

 海の駅・東洋町で休憩していると、珍しい路線バスがやって来た。

   海陽町と東洋町(土日祝日は一部室戸市まで運行)を結ぶ阿佐東線は、世界でも数少ないDMV(デュアル・モード・ビークル)が走る路線。

   線路と道路の両方を走るモードチェンジを体験できます。

             DMV車

       

             白浜海岸

        

   甲浦集落の外れの、「海の駅 東洋町」と白浜海岸を左に見て低い峠を越え、短い甲浦トンネルを抜けると生見の集落がある。

       生見海岸・サーファー

         

   生見海岸もサーフィンのメッカとして有名で、関西地方からもサーファーが訪れるという。サーフィン客を目当てとした、民宿やコンビニが並んでいる。   

   私も コンビニで食量と晩酌を調達する。

        トンネル前の東屋

         

   生見海岸から相間トンネルを抜けて、2kmで野根の集落に入り国道から右に折れて、旧道を行くと番外霊場・東洋大師がある。

  古目大師より7.1Km。

    番外霊場 金剛山明徳寺

            真言宗豊山派

          ご本尊 弘法大師

            開基 弘法大師

             山門

         

   嵯峨天皇の弘仁6年(815)、四国を巡錫中の弘法大師が野根に立ち寄った際、地元の村人からこの地は涸れ谷で、水に不便しているとの申し出があった。

            本堂

         

   大師は谷を登った処に、錫杖を突き立てて加持祈祷されたところ、やがて清らかな水が湧き出て滝となったという。

            弘法の瀧

         

   大師は滝壷で身を清め、21日間護摩供養をされ、「この谷は二度と涸れることがない」と村人に言い残して立ち去った。

            通夜堂

         

   以降、今日に至るまで全長2 mに満たない滝は涸れたことがない。この滝は滝修行場「弘法の瀧」と呼ばれ、朝夕、滝に打たれて修行する人も見かけられたと云う。

   参拝して、「ごろごろ海岸」に向かう。

   明徳寺を出ると暫く集落が続き、野根川を渡って国道と合流する。

  伏越ノ鼻の漁港への分岐を過ぎると、この先は入木の集落まで10km近くの間、歩いて2時間余り人家も自動販売機もない。

  この伏越ノ鼻から淀ヶ磯にかけての海岸が「ゴロゴロ海岸」と呼ばれている処である。

             休憩所

         

16:30 「ゴロゴロ海岸

    休憩所」に着く。

  東洋大師から3.1km。

 昔から四国遍路の難所と言われ、ピンポン玉から漬物石位の大きさの丸い石がゴロゴロしている為、「ゴロゴロ石」と呼ばれるようになり、現在の地名に至ったものと思われる。

            ゴロゴロ海岸

         

   この辺は黒潮が岸辺まで迫って来るので波も荒く、波の荒い季節にはゴロゴロー、ゴロゴローと石の転がる音が聞こえてきます。

 今日はここにテントを設営して、ゴロゴロ石の音を聞きながら野営する。

     第10日目の歩行距離  

              33.4キロ  

        計 263.7キロ