地銀融資、「無保証」が過半 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

【2024年2月8日付け日経新聞朝刊】

 地方銀行で経営者に個人保証を求めない「無保証融資」が急増している。経営者保証は会社が返済不能になった場合に、経営者個人が保証債務を履行するものである。経営者にとっては、心理的なハードルとなっており、事業承継や起業の妨げになっているとの指摘があり、金融庁の監督指針改正(2023年4月)を契機に、経営者保証を求めない融資が伸びている。経営者保証を求める場合は、企業に対し、保証契約の必要性などを具体的に説明することを義務付ける他、説明件数については金融庁への報告が必要となるなど、安易な経営者保証を求める慣行の見直しが進んでいる。

 金融機関が経営者保証を求める理由は債権回収など様々であるが、中でも重要なのが「経営への規律付け」、すなわち「ガバナンスの担保」である。中小企業においては、経営者の影響力が極めて大きい。経営者が株式の大半を保有するオーナー企業の場合、経営者の迅速な意思決定が企業業績を左右するといっても過言ではない。つまり、中小企業において、経営者と企業は不可分一体の関係である。こうした関係の中で、経営者保証は、経営者が真摯に企業経営に向き合う「規律付け」という機能も果たしてきた。経営者の心理的なハードルを解消し、思い切った事業展開を支援するという観点から、保証を求めないことは有効な面もある。一方で、保証を求めないということは、企業経営への規律が失われかねず、ガバナンスが働かなくなる懸念もある。ガバナンスが失われれば、最悪の場合、モラルハザードが発生しかねない(極端には、安易な経営放棄や不正行為の横行等も起きかねない)。重要なのは、企業側にガバナンスを意識した経営の仕組みを持たせることである。もっとも、貸し手である金融機関側の立場に立てば、ガバナンス経営を実行できる企業か否かを見極める力が必要である。企業側の取組みはもちろんであるが、昨今、金融機関の目利き力(企業の実態を的確に把握し、事業性を評価する力)の低下が叫ばれている中、経営者保証を求めない融資を推進していくためには、金融機関側の能力向上が喫緊の課題である。