上の図は一般的なキャッシュフロー計算書です。

この計算書は、企業が資金をどういう手段で調達して、何に資金を投下し、そして回収しているかといった1年間の資金の動きを明らかにする帳票です。

 

 この帳票をグラフにしたものが以下で、優良型タイプのものです。

 

①   営業CF(キャッシュフロー)がプラス

②   投資CFはマイナス(=設備投資を怠らない)

③   財務CFはマイナイ(=借入金の返済に資金を回せる)

④   結果的に期末の現金残高が期首より増加している

 優良型の典型です。借入金の返済は、フリーキャッシュフロー(=営業CF+投資CF)の範囲内で行えることが絶対的な条件となります。

 

 次に、コロナ禍でのキャッシュフローを見て見ましょう。新型コロナ感染症拡大の影響を最も受けている飲食店などをイメージして見てみてください。

①   営業CFは時短営業などが原因で、大きくマイナス

②   投資CFは感染症対策などの投資が嵩み、マイナス

③   財務CFは金融機関からのコロナ融資により、大きくプラス

④   金融機関からの融資を得て期末の手持ち資金だけが大きくなっている

 

 このような企業が今は多いのではないでしょうか。手持ち資金が増えたといっても、資金の調達先が営業CFではなく、財務CFからとなっていますから、企業経営としては要注意というわけです。

 

 では、アフター・コロナでコロナ融資の返済が始まった後のキャッシュフローをイメージして見ましょう。

①   営業CFは、本来あるべきプラスへと変化するが、まだ完全ではない

②   投資CFは、設備の更新のためマイナス

③   財務CFは、コロナ融資の約定返済が始まり大きくマイナス

 

ここで、重要なのは、フリーキャッシュフロー(営業CF+投資CF)と、財務CFとの関係です。

 となっているかが重要なのです。フリーキャッシュフローが財務CFを上回っている限り、資金ショートは無いからです。

 上の例では、営業CFは25、投資CFは▲10であり、フリーキャッシュフローはプラスの15です。そして財務CFが▲35ですから、資金圧迫を招いている状態です。

 

 この場合の戦略としては、約定弁済額を変えないという前提では、二つ考えられます。

 戦略1:営業CFを拡大させる戦略を考え実践する

 戦略2:遊休資産を売却処分する

 至極当然な戦略なのですが、図表にすると以下のようなイメージとなります。

 【戦略①】営業CF拡大戦略

 これは言うまでもないことです。企業活動としては当然狙わなければならない戦略と言えます。

 ・たな卸資産の圧縮

 ・売上債権回転率の上昇などが考えられます。

 何度も繰り返しますが、重要なポイントはフリーキャッシュフロー(営業CF+投資CF)が、財務CFより大きいかどうかということです。
 

 【戦略②】遊休資産版客戦略

 遊休資産の中には、不要な保険積立金や有価証券なども含まれます。換金できるものは、この際思い切って換金してしまうことも戦略の一つです。

 

 いかがでしょうか、単なる数字の羅列であるキャッシュフロー計算書を図表化してみると、お金の流れがまるで生き物のように見えてきます。

 わが社のお金の流れの何処に問題があるのか。どこをターゲットとして対策を講ずればよいのかが見えてきます。

 

 最後に、企業のキャッシュフローの典型的な例を二つ図表にしたものをご紹介いたします。

【衰退型キャッシュフロー】

①   営業CFは、業績が伸びずマイナス

②   投資CFは、手持ちの遊休資産等を売却して資金を捻出

③   財務CFは、旧からの借入金を返済し整理するため大きくマイナス

 

【積極投資型キャッシュフロー】

①   営業CFは大きくプラス

②   投資CFは、急激な設備投資が原因で大きくマイナス

③   財務CFは、設備資金を金融機関からの融資で賄うため大きくプラス

 

企業として前向きなキャッシュフロー図表はどちらかということは、説明しなくてもお分かりになると思います。

ただ、通常の企業が維持しなくてはならないキャッシュフローの形は一番最初にご紹介した『優良型タイプ』です。この形を維持することが企業を長く継続していくために必要です。経営者はこの図形のイメージを忘れてはいけないのです。

 

以上です。