日本を代表する実業家の一人、松下幸之助氏のエピソードから.....
我が国経済が順風満帆、世界で快進撃を続けていた昭和50年代、その事実とは裏腹に日本の「国家百年の計」を憂いた松下幸之助氏は、『これからの日本には良い政治家が必要だ』と考え、有名な“松下政経塾”を開塾しました。
松下幸之助氏が塾生に最初に語ったとされる言葉が、「まず、自分の身のまわりをしっかり掃除しなさい、整理整頓しなさい。自分の身のまわりを美しくすることができない人間に政治という大きなことは絶対にできない。」「簡単なことの出来ない人間に決して難しいことはできない」ということだそうです。松下幸之助氏のこのような語りに、中にはがっかりした塾生もいたそうです。
また、松下幸之助氏はいつもこのようなことを言っていたそうです。
「伸びる会社は、訪問すればすぐ分かる」
「いらっしゃいませ、おはようございますという爽やかな挨拶が返ってくる会社」
「事務所や工場がキッチリと整理整頓されている会社」
「トイレの掃除がゆきとどいている会社」
「この三つの事が出来ている会社は間違いなく伸びる」
「逆に、これらが出来ていない会社は、今、ある程度の業績であっても、必ず駄目になる」
話は変わりますが、このような言葉があるのをご存じでしょうか?
凡事徹底(ぼんじてってい)――――「何でもない平凡なことをしっかりとやる」という意味です。
イエローハットの創業者、鍵山秀三郎(かぎやま ひでさぶろう)氏の言葉です。鍵山氏は同名の著書の中でこのように言っておられます。
『もともと仕事というのは、単純で単調です。退屈で、見栄えのしない、やりがいのないものだと思います。ところが、それに耐えられなくて、もっと派手な、やればすぐに成果につながる、すぐに儲かる、あるいは、人にすぐ認められ、すぐに評価されることをやりたくてしょうがなくて、結果的には一つもいい評価につながらないという人が多いのです。』
『私は単純なこと、単調なことをおろそかにしない。それを極めていくという考え方でやってきました。 やれば誰にでも簡単にできることを徹底して、その中で差をつけるという考え方です。』
誰にもできないことをやれる人を「専門家」と呼びます。しかし凡人にはそのような芸当はできません。凡人が他人と差をつけることができるとすれば、それは誰もができることを徹底してやることだと鍵山氏は著書の中で言っています。
たとえば、AをBに替えるとします。多くは「AをBにしたところで大差はないじゃないか」として面倒くさがります。しかし、少しでもそこに差があれば、それを徹底して行うこと、僅差(微差)を集めて絶対的大差を作るのです。
ですから、私たちのような凡人がビジネスの世界で他社との差別化を考える場合には、誰にでもできるようなことだけれど、自分の強みに手間をかけ磨き上げることだと言えます。
「そんなことやっても仕方ないよ」と思われることでも徹底することなのではないでしょうか。
例を上げると、様々な仕事でも、なんとなく、だらだらと、まんべんなくやるのではなく、意図をもって、時間を区切って、(区域や商品、仕事の種類など)範囲を絞ってやると、自ずと結果が違ってくるのではないのでしょうか。その徹底こそが差別化に繋がるのだと思います。
イチロー選手もこう言っています。
『小さいことを重ねることが、とんでもない所に行くただひとつの道.』