「お金を回す」「商品を回す」...。などなど、企業経営を語る場合、様々なものを『回す』ことが重要だと言われます。
経営指標でも、「たな卸回転率」「売上債権回転期間」など、『回る』状態を指数化して、経営の状況判断のために使用したりします。
今回は、早く回したり、ゆっくりと回したりすることで企業業績が変化する「魔法の算式」のお話です。
最初のお話は、“薄利多売”です。『回す』ものは商品。
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粗利=15%で、月1回売れる商品(商品A)
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粗利=5%で、月3回売れる商品(商品B)
上記の場合、商品Aも商品Bも企業利益に貢献する度合いは同じです。この場合商品Aを稼ぎ筋商品、商品Bを売れ筋商品と呼びます。
「交叉(こうさ)比率」という経営指標があります。計算式は以下の通りです。
☞ 交叉比率 = 粗利 × たな卸回転率
商品Aと商品Bをこの計算式に当てはめてると
商品A=15%×1(月販売数量)×12(ヶ月)=180%(年)
商品B=5%×3(月販売数量)×12(ヶ月)=180%(年)
昔ながらの小売店と激安スーパーをイメージしてみてください。粗利を低く設定しても、たな卸回転率を上げることによって必要な利益を稼ぎ出すことが可能だと言うことです。
この「交叉比率」ですが、各商品ごとに粗利と回転率を掛け合わせた比率を基に、今後注力したい商品を選択するときに用います。
上図の場合、今後注力すべき商品はBである。というわけですね。
ただし、商品Aや商品Cなどの粗利の高い商品の回転率を上げる努力も忘れてはいけません。
この交叉比率を別の算式で表すと、
交叉比率 = 粗利 ÷ 平均在庫金額 で求めることもできます。
子の算式の意味するものは、『粗利を変えずに、在庫額を減らす』ことによっても、交叉比率を上げることができると言うことです。
在庫額を抑制することが、利益確保の効率性に繋がることを忘れてはいけません。
この「交叉比率」のことを別名『利益ポテンシャル』という場合もあります。
次の「回る」は、資金繰りを楽にするための「回る」です。
CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)という指標です。
簡単に言えば、お金を商品仕入で投下して、そのお金を回収するまでの期間のことです。
算式はこうです。
CCC=たな卸回転期間+売上債権回転期間-仕入債務回転期間
あれれ、どこかで見たような算式ですね。そうです。運転資金の算式の変形型です。
運転資金=たな卸金額+売上債権金額-仕入債務金額
CCCは在庫と売掛金、買掛金を比べ、製品の製造から現金回収にかかる時間を探る指標です。期間(日数)をプラス、マイナスしますから、結果は大小のみならずマイナスにもなります。当然小さい方が、資金がよく回っていることを意味します。
例えば、現金商売のスーパー・マーケットなどは、CCC=マイナスとなります。在庫期間が短く、売上は即日入金、仕入れの支払いは翌月払いですからマイナスとなります。このほか、飲食店や宿泊施設なども基本的にはCCC=マイナスの業種です。
しかし、支払がカード決済など、今後のキャッシュレス時代の到来で、このCCC指標が大きくなる(資金が窮屈になる)ことが想像されます。
また反対に仕入債務回転期間を延ばすことで、CCC指標をマイナスにしている企業があります。アマゾンです。
商売は「カネを回すことに尽きる」と言われます。様々な要素を「回す」ことによって、経営の質が変わり、粗利が変わり、資金繰りも変わる。
皆さんも、いろんなもの「回し」て見てください。

