「誰にでも使って頂きたい」「たくさんのお客様に食べていただきたい」「より多くの人に....をしたい」などと言われる社長様とよくお会い致します。みんなに愛される商品やサービスをお考えになっているのでしょう。
売上高を少しでも増やしたいという気持ちもあり、無理からぬことなのだろうと思います。さまざまな人に自社製品やサービスを選んでもらいたいという気持ちはわかるのですが。
商品企画を行うと、あれも付け加えなくては...、そして、これも必要。こんなお客様の場合はこれで対応。とか考えてしまうものです。
しかし、『八方美人は誰からも好かれない』と言われます。誰からも愛されるモノとは幻想に過ぎない、という明確な意見もあるのです。
以前読んだのですが、ケビン・メイニーという米国ビジネス誌のコラムニストが書いた「トレードオフ」という書籍があります。この本の印象がすごく強く、時折弊社のお客様に内容をご紹介しています。
かいつまんで内容をご紹介すると、『世の中のヒット商品は全て、上質と手軽に大別できる』というものです。さらに、上質と手軽の両方を追求した領域を「不毛地帯」と呼び、決して成り立たないのです。
・「上質」= 経験+オーラ+個性 (価格ではなく経験にまつわるコンセプト)
・「手軽」= 入手しやすさ+安さ (簡便性と経済性がコンセプト)
簡単なたとえをあげてみると、
「上質」⇒ モスバーガー (ライバルはファミリーレストラン)
「手軽」⇒ マクドナルド (ライバルは駅そば)
もっとあげると、スターバックス・コーヒー⇒「上質」、コンビニ・コーヒー⇒「手軽」
そもそも、「上質」であるべきはずの商品が、「手軽」に手を出した途端にその会社の営業成績が急降下した例はたくさんあります。たとえば、ブランドメーカーがアウトレットに出品したり、極端な値引き販売を行った例が挙げられるのです。具体的には、帝国ホテルで昼にワンコインのランチメニューを売り出した場合を想像してみて下さい。低単価の客が増え、高単価の客が減ります。全体としての営業成績は低下するでしょう。
結論として、顧客に愛される商品やサービスは、「上質」もしくは「手軽」のうちどちらかを選択し、そして、どちらかを必ず捨て去らなければならないということです。「上質」と「手軽」はトレードオフ(両立しない)なのです。
このように価値の創造とは、いろんな要素を加えるのではなく、ある特定の要素を捨てることから始まるのではないでしょうか。
まず、『誰に愛してもらいたいか』と顧客を選択することがコンセプトとして必要だということです。さらに、「長~く愛し続けてもらうこと」も大切です。
「安くて、美味くて、ゴージャス」なお店は、幻なのですよ。