【PC遠隔操作事件】なぜ犯行場所を特定できないのか…弁護側が追及
http://bylines.news.yahoo.co.jp/egawashoko/20130501-00024668/
2013年5月1日 21時14分  江川 紹子 | ジャーナリスト


PC遠隔操作事件で3度目の逮捕・勾留中の片山祐輔氏の勾留理由開示公判が、5月1日、東京地裁(小泉健介裁判官)で行われた。容疑事実について、弁護人が裁判官や検察官を厳しく追及する場面もあり、本裁判の前哨戦のような雰囲気だった。

現在の逮捕・勾留の容疑は、子役タレントの事務所への脅迫と襲撃予告メールによる幼稚園への威力業務妨害。この事件では、警視庁が福岡県の男性を誤認逮捕している。過去2回の逮捕・勾留では、遠隔操作事件であることや犯行時刻や場所が全く明らかにされていなかったが、今回は日時は特定された。タレント脅迫は昨年8月27日午後5時22分から25分の間に3回、幼稚園への犯行予告については同日午後5時38分頃に2回にわたって、メール送信の指示をしたらば掲示板に書き込んだ、という。遠隔操作ウイルスに感染していた福岡の男性のパソコンが、この指示を実行してメールを送ることになった。

ところが、弁護側が片山氏の勤務先の出勤記録を確認したところ、この日は月曜日で片山氏は出勤。午後9時まで東京・青山の派遣先で仕事をしていた、という。

この事実を元に、佐藤博史弁護士は裁判官にこう迫った。

「犯行日時は、したらば掲示板の通信履歴で特定したのだろう。ただ、犯行場所としては、『都内またはその周辺』とある。使ったPCも特定されていない。片山さんが犯人だというなら、犯行場所は青山の派遣先であり、派遣先のPCを使ったと断定しなければおかしい。断定できないのか」

佐藤裁判官は、「弁護人の主張は分かるが、これ以上は捜査の秘密に関わる」と説明を避けた。すると佐藤弁護士は、追及の矛先を検察官に向けた。

「検察官に聞きます。犯行場所や使用PCを明確にできないのか」

倉持俊宏検事は「お答えしません」とけんもほろろの対応。佐藤弁護士が重ねて「答えないのは、答えられないからだ」と迫ると、倉持検事は「答えない、と言っている」と言い返す。緊迫した応酬に、裁判官が「弁護人の主張は分かりますが、ここは勾留の理由を開示する場ですから…」となだめにかかった。

佐藤弁護士は、「起訴状においてもおそらく書けないのだろう。これが明記できるかできないかが試金石だ」と述べて矛を収めた。

すでに起訴された3件についても、起訴状では犯行日時は書かれているのに、犯行場所や使用PCについては曖昧な記載になっているという。この3件のうち2件は、犯行日時には片山氏はやはり派遣先にいたらしい。にもかかわらず、犯行場所が特定されていないのは、派遣先から応酬したPCに、犯行を裏付けるものがなかった、と佐藤弁護士は見ている。

検察側は5月17日までに、起訴済みの3事件についての証明予定事実を提出することになっており、請求予定証拠を開示する。この中で、片山氏の派遣先のPCに、果たして犯行を裏付けるものが残っているのかどうかが注目される。

さらに、片山氏が録音・録画をすれば取り調べに応じ、黙秘権も行使しないと明言しているのに、捜査機関は取り調べを放棄している、と佐藤弁護士。「逮捕・勾留の必要性はない」と指摘したうえで、こう訴えた。

「すでに起訴済みのものも、証拠が曖昧なまま、(逮捕や起訴が)見切り発車されている。裁判所が、(捜査機関の)この無謀な暴走を止めて欲しい。勾留が解かれても、捜査には何の支障もない。司法への信頼を回復するためにも、裁判所の権限を発揮して欲しい」

さらに、裁判官出身の木谷明弁護士は、一連の逮捕・勾留を認め、片山氏と母親との面会も禁じてきた東京地裁の裁判官たちの姿勢について、「東京地裁は、ここまで検察の言いなりになる組織になってしまったのか。これは人質司法そのものだ」と厳しく批判した。

片山氏本人は、「この被疑事実についても、身に覚えはありません」と述べ、「何のために意味のない逮捕が繰り返されているのか。これは何の罰なのか、と思います。早く自由になりたい」と訴えた。

ところで、今回の勾留を決めた佐藤裁判官は、クレディスイス証券集団集団申告漏れで八田隆さんが起訴された事件で、左陪席を務めていた。東京地検特捜部の事件に、敢然と無罪判決を書いた裁判体の一員だが、本件ではこれまでの裁判官と同様、勾留の決定を取り消すことはなさそうだ。弁護人の発言の1つひとつにうなづきながら耳を傾けていた佐藤裁判官。大先輩の木谷弁護士の厳しい言葉を、どのように聞いたのだろうか…。


江川 紹子
ジャーナリスト

早稲田大学政治経済学部卒。神奈川新聞社会部記者を経てフリーランス。司法、災害、教育、カルト、音楽など関心分野は様々。著書『人を助ける仕事』(小学館文庫)、『勇気ってなんだろう』(岩波ジュニア新書)など。

http://asumaken.blog41.fc2.com/blog-entry-8673.html

2013/4/30 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ


まったく日本のメディアは信用できない。日本とアメリカが4月12日に発表した「TPP合意書」について、誤解を与える情報を流しつづけているからだ。

TPP交渉の合意に関して、いくつかの文書がある。

TPP本体に関する合意文書、日米2国間で交渉していくための、佐々江駐米大使とマランティス米通商代表部代表代行との往復書簡、さらに通商代表部の発表文書などである。

日本のメディアは、安倍首相がアメリカから譲歩を勝ち取ったかのように報じている。しかし、マランティス代表代行の書簡のなかに、アメリカにとっては自動車が、日本にとっては農産物が「敏感な問題」だと書いてあるだけで、TPP本体の合意文書も含めて、コメ、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などを例外としたり、自民党が主張する「TPPは聖域なき関税撤廃ではない」を担保する文章はどこにもないのだ。

その一方で、設置が決まった日米2国間自動車貿易並行交渉への付託事項(TOR)において、自動車の関税撤廃を遅らせ、米国製輸入自動車の簡易認証枠(車種別台数)を2・5倍に拡大することは明記されている。

さらに、TPP本体文書や通商代表部による日米2国間非関税措置問題並行交渉での対象事項説明書には、政府調達、保険、急送便、検疫、安全基準といったものが重要な交渉対象だと書いてあるのに、日本政府は国民に積極的に伝えようともしない。

日本側は何も勝ち取れず、譲歩だけを繰り返しているのに、安倍政権は往復書簡を根拠にして「日本は譲歩を勝ち取れた」と喧伝している。こんなバカな話はないだろう。

そもそも日本政府の交渉姿勢は間違っている。国益を守るよりも、いかに国内からの批判を小さくするかしか考えていない。TPP交渉で敗北したと国民に見られないように、先んじてアメリカの要求を次々に実現している始末だ。簡保のがん保険を認可せず、BSEの規制を緩めて危険な牛肉部位の輸入も先に認めてしまった。

本来、これらは、TPP交渉の時に“カード”として使えるのに、交渉の前に旗を降ろしているのだから、話にならない。日本政府は、完全に内向きになっている。

TPPを日米和親条約にたとえるなら、それは「平成の開国」でなく「平成の不平等条約」なのだ。