「お疲れ様~。」
午後7時30分。今日、仕事から帰ると嫁の声が家に響く。
我が家の忠犬は息荒く玄関まできたものの、いつもなら聞こえてくる娘と母の声が聞こえてこない。
リビングに入り着替えていると、嫁が娘と母が散歩に出かけたと教えてくれる。
まちまちだと思うが、世の嫁は姑が我が子を連れて行くのを嫌がるとも聞くが。うちの嫁はそのあたりサバサバしている。
「帰ってくる途中で見なかった?」
見なかった。
普段着に着替え、少しタバコが吸いたくなったので、家の外へ。
この時間、もう暗いな~と、帰りに車に乗っている時から解っていたくせに、少し感慨深げにタバコを吸っていた。
そんな時、約100m先に見慣れたシルエット。
母だ。
そのたくましい体のお陰で、抱いているだろう娘が隠れている。
しばらくして、あちらも気づき、こっちによってくる。
「パパだよ~」
母の意識した少し甘ったるい口調が鼻につくと同時に、タバコ吸ってるから近くに来るなともサインをなんとなく送ってみる。
しかし、
「パパだね~」
やはり、この人には中途半端なサインは通用しない。率直に言葉に出してみる。
「寄るな!」
「怖いパパだね~。サラ(娘)の事嫌いなんだって!」
こんな時、少しイライラしている自分は正直者だと思う。
「ハイ!」
抱き疲れたのなら、正直に言えばいいのに無理やり娘を押し付ける。
さらにイライラする!
勝手知ったる我が家ならぬ、実の母のはずなのだが、30年以上経った今でもこの母には慣れない。


