その日は友人と会うと言って娘のお迎えを夫に頼み、仕事帰りに月野先生の事務所へ向かった。

会議室に通され、緊張しながら待っていると月野先生が入ってきた。

前回同様ハキハキズバズバな早口。
「ご主人は相変わらずですか?」


契約前にもう一度どう戦っていけばいいか相談したいと伝えていたので、心配事を順番に確認していく。


私「離婚するかしないかで慰謝料の額が変わると聞きました。相手の方が納得しない場合、私達夫婦の結論が出ないと金額も決まらないのでしょうか。」


月「相場はあくまで裁判での判例です。慰謝料は双方が納得すればいいので判例を気にする必要はありませんよ。
 ただ、私が請求された側の弁護士であれば、判例を踏まえて減額交渉をします。相手が弁護士をつけるかはわかりませんが、つけてくれば当然、離婚していない前提の金額を基準に反論してくるでしょうね。どうしても納得がいかなければ裁判に持ち込むことも可能ですがそうなると、より厳密に現状を判断したうえで、判例に近い結果になると思います」



私「相手には何を伝えることになるのでしょう?慰謝料金額はもちろんですが、すぐに分かれて二度と近づかないでほしいし、このこと(慰謝料請求)で夫を頼って欲しくもないです」


月「きちんと全て盛り込んで文章にしましょう。即刻別れることはもちろん、以後連絡を私的な連絡を取らないように要求します。原則として不倫は二人(夫と相手の女性)の責任ですので女性に請求してもご主人に半分を負担しろと言う権利はあります。それを放棄するように伝えることは可能です。」


私「慰謝料請求したら、夫から何か言われますよね。どう心構えをしておけばいいですか」


月「こういうケースでは、100%裏で繋がっています。タチが悪いと女と夫vs妻みたいな構図になることもあります。
ご主人のタイプだと何も言ってこないと思いますが、言われたとしても悪いのはご主人なので淡々としていればいいんですよ」


一通りの説明で納得をし、月野先生に全てお願いすることにした。


「契約内容をご説明しますね。
着手金は20万円、成功報酬は20%、
期間は基本的には4ヶ月だけど状況に応じて延長します。契約書には追加着手金と書いてあるけど判断は自分に任されているので今まで頂いたことはありません。
期間の縛りに焦らずやって行きましょうね」と。


探偵調査と弁護士の着手金でかなりの額の出費。
早期に決着を目指したいところです。

月野先生

お世話になります。
先日は相談に乗っていただきありがとうございました。

週末に時間をとり意思確認を試みましたが案の定明確な答えはなく、というか沈黙してしまい、1時間かかって引き出した答えは「やっていけないと思っている」の一言でした。


私も少し投げやりに、「それなら正式にそちらから(離婚を)申し入れて欲しい」と伝えました。
ですが私はまだ再構築を諦めることができません。
夫への愛情も娘に対する責任もあります。


その後の夫の様子を見ていると娘に対する愛情や未練はあるようですが、
相変わらず外泊朝帰りを繰り返しており、相手の女性との関係が良好なうちは積極的に家に戻る気にならないだろうと思いました。


つきましては相手の女性に別れるように警告し、
併せて慰謝料請求をしたいと思います。
月野先生にお願いできますでしょうか。


契約等手続き方法をご教示ください。
どうぞよろしくお願いいたします。
前日、離婚しても構わないと啖呵を切ってしまったものの、本当に話が進んでいったら私はどう感じるのだろう。

そんなことを考えていたら夜中に何度も目が覚めた。


夢の中で
夫に「浮気しているでしょ!どうする気?女を取るのか家族を取るのかはっきりして」と迫る私。

夢の中の夫はうろたえ、「女と別れます、家族といたい」と必死に懇願している。


目が覚めて、ああ夢か。現実は家族を捨てると言われたんだった。。と落胆するのです。


そんなことを2~3回は繰り返したでしょうか。

私は本当は、戻ってきてほしいと思っているんだな。本音は離婚したくないんだと分かってしまいました。


明け方4時半、玄関を確認したけどまだ帰宅していない夫。


昨夜21時頃送ったLINEも既読になっていないけど、そろそろ不倫相手の家で起きて帰る準備をしているころかな。


こう送りました


「離婚したい理由がその不倫なら私は絶対に応じません。娘のためにも家庭に帰ってください」


私のために、とかまだ愛情があるとは書けませんでした。


今の夫は私を嫌いなはず。
嫌いな女にすがられてもきっと逆効果だろうと思ってしまったから。

こういうところが可愛げがないのかもしれないと思いつつ、本音を書けないのでした。

土曜日。
朝6時半に帰宅してから一日中昼寝していた夫を夕方起こした。

ちょうど娘が昼寝を始めたタイミング。


平和に終わりそうな休日に聞くべきか迷ったけど、
懲りずに朝帰りを続けたり、翌日寝てばかりの態度が目に余ったのでぶつけることにした。


「2か月前に話し合った件だけど、今も気持ちに変化はないの?」


「ん~」とうなっただけで沈黙。


「相手が女であろうとどうでもいい。今聞きたいのは
なぜ帰ってこないのかと、今後どうしたいのか」

沈黙


その間、目はあけているものの、うつろに宙を見続ける夫
向かって左上(夫からすると右上)を見ているのはどんな心理だっけ。とスマホで調べてみる


「人が嘘をつく時、見ても聞いてもいない話を
言語を組み立てて意識的に作り上げようとする。
言語を司るのは左脳であり、
左脳は右半身を支配しているので、
この時、視線は右上に働くことになる。」


ははあ。一生懸命嘘をつこうと頭の中でこねくり回しているのか。
そしてどうにも返答できず沈黙している。。と。


5分に1回くらい
「何かないの?」 

「相手と結婚の約束でもしてるの?」 

「何も言わないと話し合いにならなくて困る」

「そちらがその気なら私はいいよ」 

など質問&沈黙を繰り返し、40分ほどたったころに

「変わってない。」


「いつと変わってないの?1年前は私たちと離れたくないと泣いて謝ってたけど?」


「前回2か月前に話した時だよ!」


ハイおしまい。


なぜか涙が出てきた。
私たちはなぜすやすやと昼寝をしている娘の真横でこんな不毛な会話をしているのだろう。(会話になってないけど)

娘の寝顔に目をやる夫。


私は静かに言いました。

「離婚をするということは、娘の成長を見守れないということ。理由が理由だから離婚したら合わせたくもない。」と

そして最後に要望を伝えました。

本当に離婚したいと思うのであれば、正式に夫から申し入れてほしい。


今日は無理やり聞き出す形になって私は不本意だから。


むなしい涙が止まりませんでした。
探偵社から紹介してもらって弁護士の予約をした日。

探偵社の新井さんも同席してくれるはずだったけど20分遅刻したため会えなかった。


結果的にはそれでよかったかもしれない。弁護士の先生も少し驚くほどレアなケースらしいから。


部屋に通され少し待つと、男の人が一人で入ってきた。

「はじめまして。担当する弁護士の月野です」
とても声が大きく、ハキハキというかズバズバ話すタイプの先生。


こういう事件を100件以上扱ってきましたとさりげなくベテラン感をアピール。


会話の合間に、過去の案件や今扱っている案件のエピソードを交えてくれてまんまと安心してしまう。


事実確認もそこそこにいきなり
どうしたいですか?」と来た。


おいおい。そりゃないぜと思って一応応答。


私「こんなことは人生で初めてなのでどうしたものかわかりません。(笑)」


月「そうですよね。失礼しました(笑)」

と当事者3人の名前を白紙に書き、私から二人に対して請求する権利があることを矢印で示してくれた。


いろいろ会話して出した要求は

・私は離婚はできればしたくない。家族が元通りに平和に暮らせるのであれば再構築したい。

・不貞の有無を問わず夫が私と夫婦を続けるのが無理だというなら離婚に応じる。
 ただし、条件は二人目の子供

・どう転んでも相手の女には慰謝料を請求する。目的は金銭ではなく後悔してほしいから。


2年前の事件の話、その時に弁護士費用と慰謝料で100万円近く払ったこと。

私は夫の過ちを許し、その後触れないようにして過ごしてきた。

だから、今回調査をする事態に陥ったことが許せないと。話した。


「我慢強いですよね。私。」と聞くと


「いや、まったく強いですよ。あまりないケースです。
まず、2年前の事件の時点で許せる奥さんの方が少ない。やっぱり子供の幸せを考えるゆえの強さなのでしょうねと。」


そして、離婚するにしても2人目の子作りに同意してくれないと応じたくない。と言ったら驚いていた。


初めて聞きました。不貞をしたご主人の子どもをもう一人って育てるのも大変では?と。


「経済的には私一人でも2人育てられる自信があります。幸い実家も近いし。
それに最近は医学が発達しているので夫婦の合意があれば人工授精という方法もある。
私にとっては娘が大事。血のつながった兄弟を持たせてやりたい。」

強いですね。と再び驚く月野先生。


経済的に自立できないために金額に執着したり、強気に出られずに疲弊する人も多いなか
それだけの割り切りと強さを持っているのはすごいと思うと。


先生は既婚。奥様も弁護士。


闘う武器の少ない専業主婦に対して思うところもあったようで共感してもらえる部分が多かった模様。


いずれにしても夫の意思確認をした方がいいのではという勧めに納得し、いきなり慰謝料はやめた。


夫が家に帰りたくない、不貞に走った理由が何なのかを根気強く聞いて今後どうしていきたいのか。
娘のことをどうするのかを確認したほうがいいと。


再構築するなら二人目はどうするのか。と話を勧めればいいし、離婚したいということであれば離婚条件の合意段階で子供の話を出すことになる。


離婚するなら口約束ではなく契約書面(離婚合意書、離婚協議書のようなもの)を交わした方がいいと。


まずは夫と話し合いだ。

おまけ:お金の話。
・着手金は25万円弱。成功報酬は経済的利益の20%

・不貞の慰謝料の場合150万円が相場。(プラス弁護士費用相当分10%で165万円)
不倫は夫と相手の女が共謀して行った行為のため二人に対して150万円ということになると。
つまり女は半分を夫に払えと言える(求償権)ということ。

・不貞の結果離婚に至れば慰謝料は200万円程度。(プラス弁護士費用相当分10%で220万円)


金額を高いと感じるか、安いと感じるかは人によって違うと思いますが、探偵つけて調査して弁護士を立てて慰謝料請求すると手元に残る金額はわずかです。

例えば私の場合、着手金で25万円、探偵調査に40万円費やしているので、

80万円で決まれば
80×(1-0.2)-25-40=-1  マイナス!

100万円で決まっても
100×(1-0.2)-25-40= 15万円

過去に夫の過ちで支払った慰謝料にも届きません。