人間の器には天性のものがあるだろう。
しかし、天性の大器といえども、
しかるべき立場に置いてみないと、
その輝きはわからない。
しかも、その器ができる前には、
必ず修行の期間があるものだ。


幕末、維新の頃の大物について考えてみる。


勝海舟は、
その胆力と見識で鳴り響いている。
胆力は、剣の修行と座禅で練り上げたものだ。
見識は、蘭学修行に徹したことや、
咸臨丸の艦長としてアメリカへ渡った経験がもとにある。
そして時代が、その人となりを選び出してきたのだ。


坂本竜馬も小さい頃は泣き虫だったという。
実家の事業経営の才覚、気風を受け継ぎ、
剣の修行で名をなしたことが、
彼を時代の申し子とした。


西郷隆盛も、
島流しで、精神力を練った時代があったのだ。
逆境に耐え、
人を恨まず、運命を呪わないことだ。


自助努力の精神と、
寛容な心が、
人間の器を創ってゆくのだ。

(2012「心の指針」より)